植物はすごい - 生き残りをかけたしくみと工夫 (中公新書 2174)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121021748

作品紹介・あらすじ

身近な植物にも不思議がいっぱい。アジサイやキョウチクトウ、アサガオなど毒をもつ意外な植物たち、長い年月をかけて巨木を枯らすシメコロシノキ、かさぶたをつくって身を守るバナナ、根も葉もないネナシカズラなど、植物のもつさまざまなパワーを紹介。動物たちには真似できない植物のすごさを、「渋みと辛みでからだを守る」「食べられる植物も毒をもつ」「なぜ、花々は美しく装うのか」などのテーマで、やさしく解説。

感想・レビュー・書評

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  • 植物たちは、根から吸った水と空気中の二酸化炭素を材料にして、太陽の光を利用して、葉っぱでデンプンをつくる
    学校で習ったし、もう当たり前の常識的なことになっているが、実際「どんなに費用が掛かってもいいから、水と二酸化炭素を原料に、太陽の光を使ってデンプンを作ってください」と依頼して引き受けられる人はいない
    何気なく当たり前に感じていたがやはり植物はすごいことを静かにしている!

    そもそも何も食べなくて生きていることがすごい!
    「だって自分たちで作れるんですもの!」
    ⁉︎⁉︎⁉︎
    し、失礼しました!
    そう、先に書いた通り、植物たちは自分たちで、光合成によりデンプンやブドウ糖を作りだし、これらをエネルギー源としている
    さらに言うとタンパク質となるアミノ酸までも作り出している
    アミノ酸に特に必要なのは窒素なのだが、植物たちはこれを土から根を通して養分として取り込んでいる
    そして植物たちのさらなる尊敬に値するすごいところはすべての動物の食糧を賄っているところだ
    「ええ?でも肉食獣とかは肉しか食べないでしょ?」
    まぁそうなんだけど、実際ライオンたちの餌となるのは草食動物
    つまり植物を食べている肉を食べているのだから、全ての動物は植物たちを食べて生きていることになる
    「そんなの植物がかわいそう 理不尽だ!」
    まぁそうなんだけど、そこはうまくできている
    植物たちにも動物が必要なため、少しくらいなら食べられてもいいと思っている
    「うん でもちょっとだけよ…」
    花粉やタネとして運んでもらったり、動物の糞により遠くへ運んでもらったり…と動き回ることのできない植物にとって、動物の存在は必要である
    そうそして、少しくらいなら食べられても良いというものの、もちろん「だからぁ…ぜんぶはダ〜メ!」ということで、その被害が深刻にならないよう身体をつくり上げる高い能力をもっているのだ
    そう、それらの摩訶不思議ですごい能力がたくさん紹介されている
    トゲ、渋み、辛み、ネバネバ、匂い、毒…
    など防衛方法はいろいろある

    また本書で驚いたテーマは下記の2つだ

    お日様が好きだと思っていた植物にとっても紫外線は有害てあるということだ
    しかも、人類より先にご存知であった
    「今頃紫外線紫外線て大騒ぎして…ちょっと前まで日光浴を楽しんでたくせにね」
    そう自分世代が子供の頃は、子供が日焼け止めクリームなんて塗らなかった!
    親切な植物なら「この人たちわかってないわ…大丈夫かしら」心配してくれていたかもしれない
    植物たちのからだにはビタミンCやビタミンEを多く含み、抗酸化物質を作り出している
    さらに言うとアントシアニンとカロテンの二代色素も作り出せる
    美容に敏感な女性ならわかるだろう
    例えばアントシアニンはハイビスカス、バラ、アサガオ、ツツジなどの赤い花や青い花に含まれる
    そう花びらが美しく色づいているのは昆虫に蜜を吸って受粉してもらうだけではなく、紫外線による有害な活性酸素を除去するためでもあるのだ
    またカロテンにおいて、野菜がわかりやすいだろう
    太陽をガッツリ浴びた野菜は色が濃い
    トマトやナスなどがわかりやすい
    「もっと有り難くいただいてよね 天然のサプリなんだから」
    仰るとおりです…

    もう1つのテーマは寒さをしのぐ方法だ
    例えば常緑樹は冬でも葉が落ちない
    低温の寒い中でも緑色のまま、何事もないようにしている
    なぜ凍らないか
    それは冬の寒さに耐える準備をきちんとしている
    冬に向かって葉の中に凍らないための物質を増やすのだ
    それは糖分である
    砂糖の濃度が濃いほど、真水に比べて凍りにくいのは想像できる
    まさにその原理だ
    「だからって葉っぱ食べたって甘くないわよ 毒もあるからやめた方がいいわ」
    はい
    「でもね、あなたたち野菜でわかるでしょ」
    あ!
    なるほど
    冬の寒さを越えた野菜たちは甘い
    雪下にんじんとか美味しい

    凄いなぁ
    植物は私たちより自然の摂理を理解している
    話せない、動けない分知恵もある
    「黙っているからってなにも知らないと思ってるの?うぬぼれないで」
    すみません
    植物は私たちのことが嫌いだろうなぁ
    「これほど恩恵を与えているのに、まぁいつもとは言わないけど、恩を仇で返してくるんですもの」
    すみません
    これからはもっと仲良く共存できるように、知識を増やしていきます!

  • 20180317
    農学博士の田中修さんの著作。
    植物のすごさというテーマで、独自に進化したすごい仕組みを紹介する。
    子孫を残し続けるという目的のもと、進化して手に入れた植物たちの手段はすごい。1つはタネを作る仕組み。成熟するまでは渋みや毒を出したり、殻にこもっているが、タネができた時点で昆虫や鳥獣にビークルとなってもらう魅力を発揮する。共生進化の1つであり、それぞれの植物に特徴があり面白い。また2つ目に、タネを作ることが無くなった新種で人間と共生しているフルーツは、接木や自生という特徴を持っている。
    やはり、自分の遺伝子を受け継ぐような行動を植物たちも行なっている点は非常に面白く、自然の不思議さを感じる。


    自然淘汰の仕組みの元、植物たちの遺伝子がどう適当進化していくのか気になる。
    未だに科学的再現ができない光合成の凄さ。
    クロロフィル

    太陽(紫外線)への対抗策
    →アントシアニンとカロテン

    酸素への抗酸化作用
    →ビタミンBとビタミンE

  • 植物の生態について、生きていくこと(遺伝子を残すこと)に対する仕組みの凄さについて書かれています。何気に見かける(よく聞く)、あの植物にこんな凄さがあったんだと面白く読ませていただきました。
    植物は食べなくても、太陽と水があれば生きていけます。そこが動物と違うところなのですが、それでも地上には動物がいて、それと関わることなしというわけにはいきません。食べられることを通じて、お互いに利用しあって生態系が回っているのだなと、その仕組みを楽しく学ぶことができました。

  • 子ども向けなんだろうか? 植物学の基本部分についても省略せずに、ゆっくり、平易な文章で説明してくれる。その分、ここもう少し読みたいんだけど、というツッコミの浅さも目立つけれど、それは別の本の役割なんだろう。
    基本的に動かない植物は、ほっといても育つもの、みたいに見られがちだが、実際にはすべての生命は植物なしには立ち行かない。光合成に始まって、棘、味、毒、色素、暑さに乾燥など、植物の生き残りをかけた「すごさ」を豊富な実例をいちいち上げながら説明してくれる。さらっと読めて、面白かった。

  • なぜ赤い果物は甘いのか
    なぜ熱帯の植物はカラフルなのか
    ユーカリの葉には青酸が含まれてるのになぜコアラだけは食べられるのか
    冬を過ごすと野菜はなぜ甘くなるのか
    種なし果物の秘密

    等々、淡々とした文章で書かれた植物のフシギ。
    面白かった!

  • 2015年12月24日に開催された第1回ビブリオバトル市内中学生大会A会場で発表された本です。

  • 光合成。トゲや毒による保身の術。少々食べられても平気。
    種は自力で飛ばすか、動物を利用するかして、勢力拡大。
    紫外線をものともしない抗酸化力。殺菌力。樹木は超長生き。
    などなど、人間にはできないワザの数々。
    太古の昔に海から上陸を果たして以降、植物たちは黙々と努力を重ね、
    それらの能力を身につけてきた。・・というくだりで、胸があつくなりました。
    ドリトル先生物語に描かれた、意思をもって月世界の一員たる月の植物の姿は
    絵空事でなく、ごく身近にあったのです。
    一読して以来、食卓での合掌の意識が深まりました。

  • 最高に楽しかった。植物はすごい!まさにそんな感じだった。著者の田中修さんが書かれる文章も読みやすく、面白い。同著者の本を他にも読んでみたい。

  • 生物分野では、やはり動物や昆虫や爬虫類なんかが人気で、植物はちょっと地味というかあんまり面白くないんじゃないかと思っていた。科学博物館に行っても植物系の展示は人気がないし。
    でもそれは間違いだった。植物は面白い。我々動物とは生きる基本戦略が全く違う。そこがすごい。発想が斬新。
    畏れ入りました。
    田中先生の語り口は柔らかくやさしい。こういう本は一般人向けだからあまり難しくならないよう気を配って書いたのだとは思うが、ところどころいい加減なところは気になった。が、植物そのものの本質的なすごさは充分伝わった。中学生くらいでも読める平易な文章も良かった。
    『昆虫はすごい』より面白かった。

  • 食べられないために、病気にならないために、強すぎる太陽から実を守るために、次の世代へ命をつなぐために、からだの仕組みを作り、栄養素を作りだす植物たち。それを食べて生きる私たちは感謝を忘れてはいけません。
    動かずもの言わずしたたかに生きる植物たちへの筆者のやさしいまなざしが感じられる文章もいいです。
    とても面白く読みました。

  • なぜ辛いのか。なぜ硬いのか。植物にまつわる形態や特徴のほとんどは生き残るために進化した結果である。身近な植物のギモンにも思わなかったようなことが生物学的に説明されていて、理系心がくすぐられる。専門用語が多いので、体系的な理解は難しかったが、子どもが図鑑を眺めるくらいの軽い好奇心で手に取るとちょうど良い。

  • 「すごい」力を知るとともに、何気なくみていた道端の植物に対する目の向け方が変わる。
    「もし植物たちが、逃げ回ることができ、動物に食べられることを完全に拒否できるとしたら・・・」
    動かなくてもこんなにすごい力をもつのだから、動けて意思まであったら地球最強の生物になりえるかも・・・。

  • 本当にすごい。いつも生徒たちには「植物が光合成をしてくれているおかげで我々は生きていけるのだ、植物に感謝、感謝。そして、その光合成をするには日光が必要、太陽さまさま」と言っているのですが、その太陽光のなかの紫外線が強すぎると、植物はいたんでしまう。だからポリフェノールを作る。それで果実の色も濃くなるし、花も色づく。なるほど、日に当たって色付いておいしそうに見えるのは、実は自分の身を守るためだったのだ。そして、また我々も、そのポリフェノールをいただくことで、紫外線などから身を守っている。やっぱり、植物さまさまなのだ。雑草なんて言ってむやみに抜かないでください。しかし、抜いても抜いても生えてくる。植物は本当にたくましい。食べられる野草があるということを何かで読んで、以前はよく生徒を連れて春を探しに出歩いて、ノビルを見つけると抜いてはその球根を食べていました。けれど、それに似たスイセンの球根には毒があるというのを読んで冷や汗ものでした。アジサイも危険なのだそうで気を付けよう。マンゴーはかぶりつかないように。ウルシのなかまで、ウルシオールに似たマンゴールという成分で、口の周りがひどくただれるのだそうです。ヒガンバナがあちこちで咲き乱れるこのごろ。一度球根を味わってみたいものですが、どこまで毒抜きをすればいいのやら。植物とは上手に付き合っていきたいものです。

  • 本当にすごい!前に進むことばかりが良しとされ、結果どんどん発生する矛盾や問題に直面しては毎日毎日ソリューション発明を強いられている我々は、じっくり長い時間かけて開発された彼らの仕組みや工夫に学ぶべきところが山ほどあると思う。

  • h10-図書館2017.11.14 期限11/28 読了11/26 返却11/26

  • ワルナスビは病気や連作障害に強い。ナス科の野菜の接ぎ木の台木として役に立つ。逆に言うなら(悲しいことでもあるが)ワルナスビは接ぎ木以外、役に立たない。

    トマトはフランス語で「愛のリンゴ」、イタリア語で「黄金のリンゴ」、ドイツ語では「天国のリンゴ」と言われている。パイナップルは松ぼっくりに似ているためパイン(松)+アップルでパイナップルになった。

    その他、柿が若い人に人気がない理由、ヒガンバナをお墓周辺に植えたわけ、救荒植物について、植物が身を守っていることなど、興味深いことが多く、とても面白かった。ミニノートにメモ。

  • 背ラベル:471.3-タ

  •  植物には、月下美人、オオオニバス、セコイアなど目立つすごさもありますが、本書では秘められたすごさが紹介されています。田中修「植物はすごい」、2012.7発行。①成長力(生産能力)がすごい(光合成)。キャベツ、5㎎のタネが4ヶ月で1200gに(24万倍)。植物は自分たちの食料だけでなく地球上の全ての動物の食料を賄っている ②栗の実の防御:鋭いイガ、硬い鬼皮、渋皮 ③病原菌の退治:ネバネバ(ムチン):山芋、オクラ、モロヘイヤ ④有毒物質で守る:アジサイの葉(青酸)、チョウセンアサガオ(アトロピン) ⑤紫外線の活性酸素と闘うために、抗酸化物質であるビタミンC、Eを体内に ⑥夏の暑さと乾燥に負けないよう、葉っぱは水を蒸発させてからだを冷やしている。また、冬に向かって、葉っぱに中に凍らないための物質(糖分)を増やして寒さをしのいでいる(凝固点降下)。

  • 田中修(1947年~)氏は、京大農学部卒、同大学大学院博士課程修了、米スミソニアン研究所博士研究員、甲南大学理学部助教授・教授等を経て、同大学特別客員教授・名誉教授。専攻は植物生理学。植物に関する一般向け書籍の執筆多数。
    本書は、題名の通り、我々が日頃目にしている植物たちの生態の「すごさ」を、具体的に紹介したもので、目次と内容は以下である。
    第1章:自分のからだは、自分で守る・・・植物は食物連鎖を通して地球上の全ての動物に食糧を賄っている。(一部の)植物はトゲで(動物に食べられないように)体を守っている。
    第2章:味は、防衛手段!・・・植物は渋味や辛味、苦味や酸味で体を守っている。
    第3章:病気になりたくない!・・・植物は香りなどで病原菌の感染を防いでいる。
    第4章:食べつくされたくない!・・・植物は毒で体を守っている。
    第5章:やさしくない太陽に抗して、生きる・・・植物は過剰な太陽光から体を守るために、様々な仕組みを持っている。
    第6章:逆境に生きるしくみ・・・植物は寒さや暑さから体を守るために、様々な仕組みを持っている。
    第7章:次の世代へ命をつなぐしくみ・・・植物は種や花粉が無くても子孫を作る仕組みを持っている。
    私は、近年の昆虫ブームの火付け役の一つである(と私は思っている)丸山宗利氏の『昆虫はすごい』(2014年)(尚、本書は2012年)も以前読んだが、擬態や共生などの昆虫の形・生態にもまして驚いたのは(改めて認識したと言った方が正確だが)、それらの形・生態は「進化」の結果だということであった。即ち、彼らの形・生態は、その個体が意図したわけではなく、偶々生じた(突然)変異において、生存に有利な形・生態が自然選択され、その膨大な積み重ねによってそうなったものなのだ。我々は、あまりにも精巧な形・巧妙な生態を、思わず「(何らかの意図に基づく)戦略」と考えてしまうが、当人たちはそんな「戦略」を立てていたわけではないのである。
    そして、そのことは植物についても同様に当てはまるのであり、本書で紹介された植物の「すごさ」も進化の結果なのだ。進化のプロセス・仕組みとは、本当に驚くべきものである。
    植物の「すごさ」、面白さがわかると同時に、「進化とは何か」を考えさせてくれる一冊と言えるだろう。
    (ただ、文章が淡白で、似たような記述の繰り返しが多いのは難。文章表現にもう少し工夫があれば、より印象の強い本となっただろう)
    (2022年12月了)

  • 植物についての関心を持つきっかけになる本。

    現代の生活では植物に関心を持っていなくても何不自由なく暮らすことができる。食事のとき野菜や果物を食べるがそれは植物というよりは食べ物である。そんな意識の外にあった植物を知ることは、よりよく生きること学ぶことにつながりそうだなと思えた。

  • 身近な植物から、しらなかった植物の生体をわかりやすい言葉や例題で解説されていて、とてもためになった。

  • ーー身近な植物にも不思議がいっぱい。アジサイやキョウチクトウ、アサガオなど毒をもつ意外な植物たち、長い年月をかけて巨木を枯らすシメコロシノキ、かさぶたをつくって身を守るバナナ、根も葉もないネナシカズラなど、植物のもつさまざまなパワーを紹介。動物たちには真似できない植物のすごさを、「渋みと辛みでからだを守る」「食べられる植物も毒をもつ」「なぜ、花々は美しく装うのか」などのテーマで、やさしく解説。ーー

    やさしく解説しすぎて、重複した説明によるまだるっこしさが玉に瑕。しかし、植物のすごさは十分伝わってくる。
    特に、光合成。太陽の光と、水と二酸化炭素だけで、自身の体の中にぶどう糖(デンプン)を合成する能力は、これだけ科学技術が進歩した現代でさえ人工では再生できないということからも、すごさがわかる。
    本書では、さらに動物や昆虫などに一方的に捕食され弱弱しくみえる植物のサバイバル術や子孫の増やし方なども解説。各々独自で様々な手法を駆使している様子は、まるで各植物が示し合わせたように全体最適化を実現している。
    本書を読めば、植物に対する眼差しが変わること必定です。子供と一緒に読んでおきたい1冊です。



  •  この本は植物の巧みな生き方をわかりやすく解説している。
     本書は本筋の理解に必要な化学や生物用語を解説しているので理系の知識に詳しくない人でもわかりやすく読み進めることが出来る。
     また所々に日常生活で見る植物の例やそれにまつわる日本文化の由来が語られ読者の興味を引くように工夫されてとても楽しめるようにもなっている。


     一章
     植物は光、二酸化炭素、太陽光を利用して自身で栄養を作り出せる。また外敵から身を守る手段としてトゲを利用。
     二章
     味(渋み、苦味、酸味、辛味)を利用して身や種を守ったり、反対に成長した種を運ばせるためにわざと食べられるように実を甘くしたりもする。
     三章
     病気から身を守るために体液、カサブタや香りなどを利用する。
     四章
     毒で身を守る。
     五章
     太陽光の紫外線を耐える(活性酸素の除去)のために色素、ビタミンCやビタミンEなどを豊富に作り出す。太陽光が強いほど色素の量が増加し植物はより色鮮やかになる
     六章
     暑さと乾燥を防ぐために水を蒸発させ体温を下げる。
     寒さを凌ぐため体の中に糖分を増やし凍りにくくする(凝固点降下の原理)。農業ではこの仕組みを利用し野菜や果物に寒さのストレスを与えて甘くしたりもする。
     七章
     植物のタネには実を大きくする物質を生み出す力がある。
     
     

     
     

  • 植物はすごい
    生き残りをかけたしくみと工夫

    著者 田中 修
    中公新書2174″
    2012年7月25日発行

    植物の仕組みについて、種の保存の観点から分かりやすく解説した本。物語性があってとても楽しく読めるし、読んでいると植物はすごい、えらい、と思えてくる。なかなかの人気本らしい。

    自分の身を守るため、トゲを備えたり、実や体に毒を含ませたり、まずい味にしたりと、植物は工夫する。しかし、子孫を同じ場所ではなく、他の広いエリアで繁殖させるためには、動物や虫の機動性を利用するしかない。そこで、柿のようにまだ種が出来ていないうちは渋く、種が出来たら食べてもらえるように甘くなる。食べてもらって、食べて貰うときに種を落としてもらったり、未消化のまま糞でまき散らしてもらったり。そんな工夫がある。
    食べ尽くされたくはないが、ある程度は食べてもいいよ、という植物が多いようだ。

    ところで、近年、日光は人の体に悪い面があると強調されている。一つは、紫外線が体内に活性酸素をつくりだし、体を老化させること。そこで、ビタミンなど抗酸化物質を摂って健康を保とうとする。それは植物から摂る。では、どうして植物には抗酸化物質があるのか?実は、植物も人と同じ悩みを持っている。植物は太陽光の3分の1程度以下の強さの光しか光合成に使いこなせない。強い太陽光は植物にとっても有害な活性酸素を生み出す。そこで植物はそれを消去するため、ビタミンCやEなどの抗酸化物質をつくり出したとのことである。それが、人間様にも役立っているとは。

    杉や松、ツバキなどのなどの常緑樹は、どうして冬にも葉っぱがかれないのかという仕組みも興味深かった。例えば、冬に氷点下になれば水は氷る、水分を含んだ葉っぱも氷るはず、だが氷らないのは氷らないような物質を冬になる前にためこんでいるからだという。それは、例えば糖分。糖分の濃度が高ければ高いほど、凝固点降下で氷る温度が低くなっていく。
    で、これと同じ理屈が冬を通り越した大根や白菜、キャベツなどの甘みだという。ほうれん草や小松菜は、温室で栽培し、最後の1週間は寒風を入れて冷やすのだという。それで甘みが増す。
    もしかすると、白菜や大根を雪に埋めて保存するのも、その理屈かもしれないと思った。

    種なしの果物はどうして実が成るのか、そして、どうして増やすのか?
    みかん(温州みかん)は種がないが、時々入っていることがあるのは何故か?
    その仕組み解説も楽しかった。
    江戸時代前期、当時の薩摩で栽培されていたときに、ミカンに突然変異がおこり、「温州ミカン」が生まれた。花粉がメシベについてタネをつくる能力をなくす」性質と、「タネができなくても、子房が肥大する」性質を併せもつミカンが生まれたのである。
    果物は、花粉がなくてもオーキシンという物質を与えると実が大きくなるそうだ。
    しかし、温州ミカンも違う種類のミカンの花粉がつくと、メシベには生殖能力があるため種ができるそうだ。虫によってそれが起きるらしい。
    やはりメスは強い。

  • 2021/1/19読了。最近時間が出来たので、野菜、ポットの花々の植え付け、植木の手入れ(剪定)を自分でする様になった。その度植物の個性や脅威的な
    強さと環境へ必死に対応している姿が窺い知れて来た。特に最近手こずりながらも驚かされた難敵は
    ドクダミや竹で、ほおって置くと手に負えなくる。
    しかし、彼らなりの生き方があり生存本能がそうさせるのだ。小手先の対策では、なかなか太刀打ち出来ない。
    一方で人類もそれらを理解して来て活用して来た賢者もいる。本書を読みながら、『彼ら』を理解しな
    がら観察してみると漠然と通り過ぎ出来た生き物として、また楽しみも見えて来るのではと思ったりしてみました。

  • みじかな植物のトリビア的なエピソードが並ぶ。興味深いが話が色んなところに飛んでまとまりはない感じ。

  • 最近、植物に俄然興味を抱き始めたので、読んでみた本。とても易しく読みやすい。ただ、固有名詞がめちゃくちゃ多く、聞き慣れないものも多いのでちょっと退屈な箇所も有り。。
    でも図鑑を読んでるような感じでたのしかった。途中からかなり面白くなってきて、知っているようで知らなかったこともいろいろとあり、これから植物を見る目もかわるなあと思ったり。
    生き残るためのいろんな工夫があるんだなあ。そのそれぞれの工夫が尊い。
    厳しい環境に置かれた植物はより色鮮やかになったり、甘くなったり。
    そういう工夫の恩恵を私たちはすごくもらってるんだなーとしみじみした。野菜を食べたくなる(笑)
    あとがきがすごく良かった。植物はすごい。

  • 身近な植物にも不思議がいっぱい。
    そんな植物の「すごい」特集。
    何というか、休日の昼下がりに日向ぼっこしながら、おじいちゃんの話を聞いてる感覚になってくる一冊でした。
    種々の花々や果実の生態系云々よりも、それにまつわる蘊蓄の方が興味を惹かれてしまった。言葉の語源や、神話、その他、著者のほっこり感想など。
    そんな中、初めて聞いた熟語。
    「歳寒の松柏」
    歳寒は寒い冬を意味し、松柏はマツと、ヒノキ科のヒノキやサワラ、コノテガシワなどの樹木を指す。これらはいずれも常緑樹で、寒い冬にも緑の色を変えないことから、どんなに苦しい時でも、信念を貫き通すことのたとえに使われるそう。
    良い言葉ですね。
    古来、神社仏閣に植栽されてきたのが、杉、松、椿、榊、櫁などの常緑樹。

  • なんだか縁起が悪いと感じる彼岸花。
    お地蔵さんの側に植えられているのはなんで?

    著者田中先生の愛情深さと博識さがどのページにもふんだんに散りばめられていて。
    読みながらとても優しい気持ちになりました。

    かかりつけの小児科のDrにオススメいただき、感謝。

  • よんでる〜〜!小学生になってる気分!
    自由研究だ!たのし〜〜!

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著者プロフィール

1946年 群馬県生まれ
1976年 九州大学大学院博士課程修了(農業経済)、農学博士
1976年 群馬県勤務、県農業試験場研究員、県農業試験場農業経営課長、
県農林大学校農林学部長、県環境保全課長、県第一課長(企画課)、
県農政課長、県民局長、県理事兼農業局長を経て、2007年3月退職

「2018年 『老農船津伝次平の農法変革論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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