民主党政権 失敗の検証 - 日本政治は何を活かすか (中公新書 2233)

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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121022332

作品紹介・あらすじ

二〇〇九年九月に国民の期待を集めて誕生した民主党政権は、一二年一二月の総選挙での惨敗により幕を閉じた。実現しなかったマニフェスト、政治主導の迷走、再建できなかった財政、米軍基地をめぐる混乱、中国との関係悪化、子ども手当の挫折、党内対立、参院選敗北-。多岐にわたる挑戦と挫折は、日本政治にどんな教訓を残したのか。ジャーナリスト・船橋洋一を中心としたシンクタンクによる、民主党政権論の決定版。

感想・レビュー・書評

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  • 民主党政権だったら新型コロナウイルスに感染しても直ちに健康に影響はありませんと政府が言っていたかもしれません。

  • マニュフェスト、子ども手当、政権運営の章は初めての話が多く勉強になった。

    以下、簡単な要約など。

    第1章マニュフェスト
    2005年岡田代表作成のマニュフェストから、2009年小沢代表マニュフェストで大幅に増額
    岡田氏の削減努力により16.8兆にとどまった(修正案は10兆円)
    しかし、そもそも10兆円の財源すら確保できていない
    税収の見通しや社会保障費の自然増を盛り込めていない
    マニュフェストの作成過程が一部の議員に偏り党全体での共有不足
    検証可能なものか方向性を示すものか


    第2章政治主導
    政務三役の人事を官邸がグリップできず(藤井財務大臣問題)
    政務三役の役割分担も各省任せ
    調整力不足、議事録も無い閣僚委員会
    事務次官会議の廃止により失われた官僚の調整機能
    歳出・歳入の構造改革を目指した国家戦略局
    しかし人材不足や法案の未成立により最終的には経済財政諮問会議化
    幹部官僚人事については政権の手が回らず結果各省任せに
    事業仕分けは注目を集めたが、財源捻出効果は限定的
    後手に回った制度改正と党内での認識の共有不足


    第3章経済と財政
    リーマンショックによる税収減に対応できず歳出増
    予算改革も未達


    第4章外交・安保
    理念先行の東アジア共同体構想
    普天間問題における鳩山首相の暴走
    社民党への配慮による年内決着を2010年5月まで先延ばし
    その結果迷走に拍車がかかり支持率低下に
    漁船衝突事件の船長長期勾留の是非→早期の送還もあり?
    尖閣国有化での中国首脳の感触の見誤り
    中国との外交ルートの脆弱性
    東アジアとの連携強化


    第5章子ども手当
    子育ての私的責任から公共責任への転換
    控除から手当への転換
    所得控除や配偶者控除は高所得者に有利
    子ども世帯と共働き世帯で再分配後の相対貧困率が上昇
    児童手当から転換するための制度設計の甘さ
    理念の党内での共有不足
    担当大臣の激しい入れ代わり
    保育所拡充への期待とズレた幼保一元化
    高校無償化や子ども手当は一定の効果
    子育ての公共責任と負担と給付の見直しは今後の課題


    第6章政権運営
    政府と党の関係の迷走
    リーダーとフォロワーの対立の激化で割れる党内
    総理案件の暴走と党内の政策決定システムの不在
    当選回数序列型の政務三役人事
    政務三役になれない当選回数1~2回議員の登用問題
    政務三役になれなかった議員の離党率の高さ
    当選1~4回議員の再選率の低さ→離党が再選可能性に影響しない
    藤井裕久の財源問題での豹変→増税派への転換


    第7章選挙戦略
    参院選の1人区への偏在
    農村寄りの政策を取った2007年参院選
    得票率で上回りながら議席数で負けた2010参院選
    衆参を勝つためには曖昧になりやすい党の方向性

  • 2009年8月の衆院選の勝利から、3年と3ヶ月の間政権与党を務めた民主党の功罪を問うた本。大変興味深い内容だった。

    党内対立、浮動層に依存した支持基盤、マニュフェストの挫折などに見られるように、民主党には政権与党となった場合の具体的な構想が備わっていなかった。結局のところ、時代に恵まれて運良く選挙で勝てたという感じだろうか。

    終章で述べられているように、野党時代は改革だ、改革だと言ってるだけで済むが、政権についたら実務に焦点をあてる必要に迫られる。その意識が民主党には足りていなかった。

    本書の指摘は当時の民主党議員には鋭く刺さっただろう。周知の通り、民主党は内部崩壊し、立憲民主党と国民民主党となっている。今の彼らにはその意識が共有されているのだろうか。

    第2時安倍政権が発足してから、しばらく経つが、政権交代は行われていない。ただ、今の岸田政権はかつての民主党のように、消費税増税をめぐる論争で支持率は急降下している。評者にはいつ、政権交代の時期がくるかは分からない。野党には自民党を攻撃するばかりでなく、自らが政権党になった場合のビジョンももっていてほしいと願う。

  • 失敗と一言で片付けるのではなく、検証が必要。

  • この本をどう読むか。ある政党の失敗と読むのか。当時の政策と経緯を振り返るために読むのか。マネジメントの失敗と読むのか。仕事術の失敗と読むのか。結論から言うと、様々な観点で読むことが出来る良著である。ただリベラル思想の失敗と読むという内容ではない。民主党は、それ以前の問題で失敗しているのだから、そんな評価が出来ない。

    例えば、どのような失敗だったか。よく言われるのが財務政策の失敗だ。実現性の無い政策をどんどん広げていく中、財務シミュレーションの予測が難しいから諦めるなど、致命的な戦略性の欠如。実に残念極まる振る舞いだ(前提を置いてシミュレーションをし、最低でも内部で共有は必須だろう)。そういった意味でも、民主党という組織の中間管理職がいないという指摘は、どの組織にも当てはまる内容に感じた。ただ、中間管理職という言葉よりも相応しい言葉は「戦略」「戦術」を考えることをしなかったという点だ。そもそも戦略を考え、それを実現する為の戦術をどうしていくか。それを考える人がいないとしても、それは上が考えればよい。考えなくても誰かをアサインさせなければならなかった。それをせずに湯水のように予算が出てくると考え、首相ごとにマニフェストにない方針が政策方針を打ち出すのは対しての責任感が欠如しており、口だけの政党と言われても仕方がない。

    逆に言えば、もうすこし実現性のある、戦略・戦術的な運営が出来ていれば人々の評価は違ったものになっていたとも思う。2大政党の維持が、現在は夢に近いことを考えると、実に残念な内容であった。

  • 政権を担える野党が必要、と言われて久しいが、先の民主党政権の失敗から(本書含めて)多々の教材を得た筈だが、昨今の野党の動きを見るにつけ、それらへの反省と改善の取り組みが為されず、官僚機構を使いこなしたり、幼稚な自己主張を取り下げることもせずに離合集散を繰り返す様は、かつての民主党政権の惨状を繰り返しているようにしか見えないのは甚だ残念であり、本書はその考えを新たにするのに視野を与えてくれる良書である。

  • 民主党政権が失敗であった事は、本書のタイトルにもあるように議論の余地は無いが、だからといって、未来永劫自民党政権が続くことが良いわけは無い。与党と異なる選択肢を我々が持つためには、民主党政権の何がまずかったかをきちんと検証することが必要である。そのための基礎作業として本書は重要である。
    あと気がついたのは、現在の官邸主導の流れを、民主党政権が加速させたものの、当の民主党はそれをうまくコントロールできなかったが、安倍政権はそれをうまくコントロールして、今の強力な権力基盤を築いていると言うことだ。官邸主導の政治が、官邸から遠い人々の声を無視する形で進められている今、政治のあり方がどのようであるべきか考える必要があると思った。

  • 民主党政権が政権を握った後如何にして
    下野することになったのか
    色々な視点から書かれている。

    大臣の失言という点からでなく政策面や党の問題から
    書かれていて勉強になった。

  • 第1章 マニフェスト なぜ実現できなかったのか 中北浩爾 から考える。
    民主党政権交代前、意外にも、選挙民にバラ色な政策を増やし、財源を増加させて来たのは、長年政権政党についていた自民党に在籍していた小沢であるという。
    はっきり言って、この人は、選挙は上手だが、そして、どこかボンボン的選挙手法を行なっていた民主党に、ドブ板選挙を持ち込んだ功績は、大きいのだが、老練な政治家ながら、『何とかなるって。金なんていっくらでも、あるんだから。』と嘘ぶいていたところを見ると、政治家としての資質に欠けるんじゃなかろうか。
    政権政党の経験に乏しい民主党の中において、小沢に期待されるのは、政策実現性であるはずなのだが。
    あと、この本には、まだ出て来ていないが、市民運動家を師匠に持つ菅直人の首相時代のボトムアップである民主主義を無視した独善迷走振りもイタい。

    全体に。
    マニュフェストが、一部議員により作成され、所属議員に浸透しておらず、共有されていなかった。

    子供手当は、保育施設の整備の方が順位が高く、そもそも国民が望んでいる政策の中で順位が低かった。

  •  あの「悪夢」を冷静・中立に分析した一冊。本書は、わずか三年三ヶ月の短命に終わった民主党政権の「失敗」を様々な角度から分析したものである。いずれの章もイデオロギー色はなく、データに基づいた議論が行われている。
     本書を読むと、民主党政権は様々なシステム(「政治主導」や「子ども手当」など)を掲げて無党派層の支持を得たものの、導入のプロセスに関する検討はあまりにも楽観的過ぎたことが分かる。彼らの政策が妥協・挫折を余儀なくされた要因として「財源の確保」・「党内人事」・「選挙対策」などのキーワードが挙げられているが、現代の政治においてこれらの問題はどの政権にも起こり得るものである。結局、そうした“現実”を、あくまで自民党政権による“古い政治”の問題だとして直視することなく、理念先行のシステムの導入を推し進めたことが、民主党政権崩壊の根本にあったと言える。
     惜しむらくは、これらの教訓が今日の野党勢力に活かされているとは必ずしも言えない状況にあることである。ただ、あの三年三ヶ月の日々に感じていた「不満」や「もどかしさ」を理論的に解き明かしてくれた点で、非常に勉強になった一冊である。

  • 身もふたもない。ま、実感だけどね。
    ただ、あの頃の民主党はやりたいことがあって、ちゃんと政策を考えていた。
    ただ、考えていただけだった。
    どう実行するかと言う細部は全く詰められてなかったし、財源は甘いし、マニュフェストと現実の板挟みでどっち選んでもボコられる、総理はマニュフェストにないことを第一に挙げ続けるし、大量当選した新人たちは不満がたまる、みんな前に出たがってフォローに回れない。

    自民党の自滅で担わされた政権も、とても受け止める力はなく、自滅。

    今、自民党に代わる党がないことが本気の問題だ。

    なんつっても、奴らが分解後の今の状況は、政策も政権担当能力もなく、週刊誌記者か○産運動家みたいな、反対するだけの簡単なお仕事の方々だし。

  • 民進党か分裂したいま、そもそも民主党はなぜ政権から転落したのか?という観点を改めて知りたく、読んでみました。

    実現できないマニフェスト、作ったものの機能しない国家戦略局、辺野古、尖閣問題。こども手当ての額、そして小沢一郎をめぐる同調と反発。

    10年近く経とうとしていますが、そうだったと思い出すことは多々ありました。

    翻ってみると、昨今の政治情勢はこの経験からどれだけのことを学べたのか、少し不安になります。

    旗は掲げつつも、広範な民意を汲み取り、国民のためになる政治をして欲しいものだと願って止みません。

  • 期待が大きかった分、落胆も大きかった。そういう政策だと最初から分かっていたら支持したのにと思うところもあった。2013年10月27日付け読売新聞書評欄。

  • いろいろ考えさせられる本ではあった。

  • 選挙のたびに目玉となる政策がマニュフェストに加えられ、累積した結果できたのがあの実現不可能なマニュフェストであった。

    新たな重点政策が付け加えられるとその政策の支持者が表れ、政策の撤回が厳しくなる。つまり、マニュフェストに盛り込まれる重点政策は、下方硬直性をもつ。

  • 当初は期待を集めた民主党政権だが、日に日に国民の失望は高まり、3年3か月で政権から転落することとなった。本書は、民主党政権はどこで失敗したのか、それは、誰の、どういう責任によるものなのか、どこから何を教訓として導き出すべきか、ということについて、マニフェスト、政治主導、経済と財政、外交・安保、子ども手当、政権・党運営、選挙戦略と多角的に分析している。各章で執筆者は異なるが、いずれも民主党関係者のヒアリング結果も活用しながら、感情的にならずに、民主党政権の功罪が冷静かつ客観的に検証されており、今後の日本政治を考えるうえでも有益な内容だと思われる。
    本書では様々な「失敗」の要因が指摘されているが、そのなかでも以下の5点が重要だと感じた。1点目は、国家戦略局の設置など、政治主導を実現するための主要な制度改正が後回しになって実現できず、政治主導が政治家の個人的資質に依存する属人的なものになってしまったことである。2点目は、民主党政権には日米同盟の資産を削ることへの同意はあっても、他の積極的な外交政策を展開させる能力が欠けていたことである。3点目は、子ども手当をはじめとして、党内での理念の共有が十分にされていなかったということである。4点目は、民主党議員が、「みんながリーダーになろうとし、誰もフォロワーになろうとしない学級委員体質」であったことが、組織マネジメントにとって致命的な欠陥になったことである。5点目が、政権運営に不可欠である「実務と細部」の欠如である。また、本書で指摘されているマニフェストの内在的な矛盾も、民主党政権の蹉跌の構造的な要因であったであろう。
    一方で、民主党政権には、予算編成プロセス改革としての「事業仕分け」や社会構想としての「子ども手当」など日本政治をよりよくする可能性を持つ芽が生まれたことも確かだと思う。現在は民主党政権時代のことはばっさり否定されるような風潮を感じるが、本書で示されているような民主党政権の功罪を教訓として、今後の日本政治に前向きに活かしていくべきだろう。

  • 戦後日本政治史における初めての本格的政権交代は、自民党の復権というよりも、民主党の自滅という形で3年3カ月で幕を閉じた。果たして、何が問題だったのか、民主党員へのアンケートや書籍などを通じて、その原因と内部で行われたことを丹念に新書にまとめている本。

    内容は、それぞれ頓挫した、マニフェスト、政治主導、経済と財政、外交・安保、子ども手当、政権・党運営、選挙対策、政権担当能力を磨け の7章と序・終章の10章を分担執筆している。どれも肩入れすることなく冷静に分析していると感じた。

     アベノミクス解散として、衆議院は2年で安倍首相は解散させたが、民主党の自滅を本書で学ぶとともに今の自民党にもより厳しい目をもって、有権者としての責任をこれから果たしたいと思った。

  • ガバナンスの格好の教科書

  • 3年3ヶ月に渡って民主党は政権を運営したが、それは誰もが認めるように失敗に終わった。現在の自民党第2次安倍政権でも未だ民主党員として活動している議員を中心にインタビューし、民主党の失敗を検証する。鳩山、管、小沢ら元重鎮や落選議員にインタビューをしていないのは残念だが、恨み辛みや自己防衛の言葉ばかり並べられるから、その選択はしょうがないか。

    党首のリーダーシップのなさや小沢派と半小沢派の対立、官僚を使いこなせなかったこと、東日本大震災など、失敗の原因は様々にあげられるが、結局はマニフェストに書いていることを実行せず、書いていないことにやたら力を注いだことが問題だったように思う。

    普天間基地移設、消費増税、TPPなどマニフェストに書いていないことに力を注ぎすぎて、書いていることを疎かにしてしまった。マニフェストの達成をアピールし、達成できなかったことを謝る。それだけで、民主党政権ももうちょっと違った目で見られたのではないだろうか。やはり有限実行って大事なことだ。

  • 民主党政権の何が問題であったのかを、マニュフェスト、政治主導、経済と財政、外交・安保、子ども手当、政権・党運営の各分野で検証する。分かりやすいし、読めば読むほど「なるほど」だけど、民主党が政権についた2009年の衆院選前に、これを示唆する情報は提示できなかったのだろうか。
    それ以上に、だったら自民党はちゃんとしているのだろうか? とてもそうは思えないけど、今現在それは大きく報道されることもない。危ない気がするなぁ。
    政党政治の限界を憂う議論がなされないのが不思議だ。

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