言葉の力 -   「作家の視点」で国をつくる (中公新書ラクレ 389)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (214ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121503893

感想・レビュー・書評

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  • 読み直しだけど、やっぱり興味深い。

    言語技術を子どもにの頃から身に付ける努力をしてたら、確かにもっと世の中楽しく生きやすくできるんだろうな。

    今の自分の思考にハマリ過ぎる本。

  • ここで言う、言葉とは、概念。物事を理解するためには必須の要素であり、コミュニケーションの基本であり、思考の元となるものです。
    この概念体系は、小さい頃からの学習と経験で巨大なネットワーク構造になっていきます。すべてを自分の学習と経験でまかなおうとすると限界があります。書籍、TV(ドラマ)、映画で補うことができます。つまり、疑似体験するわけです。

    また、他者とコミュニケーションするのも役立ちます。
    考えの違う人とコミュニケーションすると、獲得した概念体系の修正や新たな関係性(ネットワーク)を追加することができます。

    以前、コミュニケーションしているときに、本当にわかり合えているのかどうかという疑問を抱いた記憶があります。これは、まだ答にはたどり着いていません。適切な言葉の応酬ができていないからかもしれません。

    最近、書籍を読まなくなってきましたが、この書籍をきっかけに、また、読み始めようと思います。失われつつある言葉も含めて、習得し、周りに広めていきたいと思います。

    東京都の知事・副知事コンビは、どちらも作家出身ですが、タイプは違うような気がします。感覚派と分析派。それはともかく、新しい時代を創っていく先陣を切っていただけるとうれしいです。

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    内容メモ
    ・ファクトベースの説明する技術は要チェック!
    ・現代でもいろいろなタイプの「黙契」があるのかもしれない。

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    言語技術とは何か
    便所飯

    自分と違う存在という「他者」の認識が無ければ、コミュニケーションとはいえない。



    自分を説明するとき、他者と自分の関係を考えるとき、まず空間と時間で自分がどこにいるのか、相手はどうか、そういう座標軸を持つことがコミュニケーションの前提として必要なはずだろう。



    世界をとらえる道具は何か?それは「言葉」に他ならない。



    世界のグローバル化に対するためには、言わずもがなの仲間内のコミュニケーションではなく、価値観の異なる相手と対話により問題を解決することが求められているのです。

    そのためには、まずは、基礎となる言葉の技術、言語力を身につけることが何より大切なのです。

    <言葉の力>再生プロジェクト活動報告書


    なぜ、たくさん本を読まなければならないか?
    本は他者だからだ。
    1冊の本を読むことは、2から3時間かけて、他者が述べていることを我慢して聞いているのと同じである。
    他者がわからない人とコミュニケーションはとれないし、本を読まないまま大人になると、他者をかかえこむことができず、自分のことしかわからない人間になる。



    ドイツの国語教育事情
    生きていくためには言語技術は必須のものと思われているからだ。
    「なぜ?」という問いに対して、「なぜならば」という答えを10個くらいは考える。
    そこで、初めて、論理的な文書ができてくる。
    当たり前のこととして訓練されている。



    絵画を見たときに、形容委的表現は極力使わない方が良い。
    ファクトを並べていく。



    最近の若い人がよく言うような「ビミョー」とか「ふつう」とか、「ええまあ」というしゃべり方をしていると、このような場面でしっかりと自分の言葉で説明することができないのだ。



    物語を読む技術
    ・物語の構造<Story Structure>
    ・視点を変える技術<Point Of View>




    書店は図書館と違う。書店はつねに「現在」を売っているのだ。


    霞ヶ関文学、永田町文学


    ファクトファインディングの重要性
    ファクトファインディングとは、相手側が隠している情報を開示させていくことだ。



    黙契
    日本に防衛負担を求めるアメリカ
    その声に応えようとする自民党
    非武装を叫び続ける社会党
    この三者の間に黙契の関係ができあがっている。反発力では無く、相互の不思議な親和力が作用し合っている。
    アメリカは、日本が「固有の自衛権を行使」することができないことを知っている。
    政府・自民党もアメリカから購入した兵器を実践で使用すること予期していない。
    非武装中立の社会党も日本の戦力が抽象的なものにすぎず、役に立たないことを承知している。
    国難は存在しない
    それに伴う葛藤も消滅した
    日本にはリアルはない。
    戦後の日常性とはフィクションであり、あたかもディズニーランドのような世界なのだ。」

    未来型読書論
    電子書籍ユーザーは、「読書家」だ。
    若者の活字離れの対策にはならない。
    電子的な手段で情報を入手する習慣は若者にも浸透している。
    書籍を電子化しなければ、ますます、活字離れが進む。

  • Twitterであまりにプッシュされるので読んだ本。言語技術という分野に関心が生まれた。

  • ・今のままで大丈夫。⇒人気セラピストほど多く使う言葉。
    ・待ってましたよ。こう云われて嫌な人はいない。
    ・きっとうまく行くよ。

  • 自分の語彙力のなさや、物事を言葉で説明する力の足りなさを実感し、意識し始めた今日この頃。
    言葉には、感情的に伝える方法と、論理的に説明する方法とがあるが、本書は後者の視点でその重要さを語っている。
    これから、言語技術を鍛えるにあたっていい刺激となる本だった。

    第一部の
    ●歴史的な時間軸と言語力の関係
    ●日本固有の時間軸と死生観
    は興味深い考察だった。

  • なるほどね
    都立・区立の学校の先生をなんとかお願いします

  • 『言葉の力』
    サブタイトルには《「作家の視点」で国をつくる》とある。

    著者は、日本の言語技術を底上げして国力を上げる必要性があると説いているように思える。

    第二部に「霞ヶ関文学、永田町文学を解体せよ」とあるように、日本中枢の現状を特に憂いているように思える。
    小泉純一郎元首相には「言葉」があったが、その後の首相たちを見ていると「言葉の力」が次第に失われている、とある。
    まあ、これには激しく同意できる。

    一般的には第一部・第三部を読めば良いと思うが、結局、言語技術を上げるには、沢山の本を読み、歴史を学ぶことにあると感じた。
    しかし、言語技術を上げなきゃいけない人ほど本を読まないという現実がある、というジレンマがあるとも思った。

  • 読書が他者とのコミュニケーションであり、人と係わる力を作るというのは、まさにそのとおりと思う。

    鎖国的な時間の流れ、空気感がいまだ垂れ込める日本には諸外国の古典や歴史について読書する必要があるのだろう。
    特に意味不明の「霞ヶ関文学」が公用語になっている政治家のみなさんには強くお願いしたい。

    でないと、一般人にも及んでいる「自分たちだけでいい」「よそ者は無視」の態度を日本から払拭できない。

    しかし、これについては一部の出版人についてもそうではないか。
    仲間が新刊を出せばブログ、メルマガで宣伝し合い、Amazonキャンペーンでも売り上げ水増しでは、ちゃっかり自分の既刊本と抱き合わせで購入させて甘い汁と分け合う。
    しかし、書籍のプロフィールとは逆の悪魔の顔で、他者が介在するのを嫌い排除する。
    こういう人たちは自分や中間の本は読むだろうが、きちんとした古典や歴史をどれだけ読み込んでいるだろうか。
    猪瀬氏には是非、出版業界のこういった汚い輩にも忠告していただきたかった。

    著者は、若者の読書離れ、引きこもりが立ち直るために読書を薦めている。
    しかし、逆に良質の読書を重ね、精神性が高いゆえに、ろく日本も読まない精神性の低い人達と共にいるのが難しい人たちが、引きこもりになっているケースをどう考えているのだろう。

    また、日本語の乱れ、読書離れ、自分で判断しようとしないことなどの問題が蔓延しつづけたとき、文壇にいたのは猪瀬直樹氏、石原慎太郎氏ではないか。
    であるなら、文壇全体としての責任は感じないのだろうか。

    もし、国民一人ひとりが、猪瀬氏の言うところの良質な読書を重ね、家長としての意識を育てさえすれば、国家を担う責任を自覚できるのか、解決策を提示できるのか、国民が国家を監視する体制を作れるのか。
    実際のところ、企業と家庭に社会福祉を依存する体制、デフレ、などの問題は、せっかく国民が良質の読書によって磨いた家長としての意識を侮辱し、失意させるものとなっているのではないか。
    それゆえに、多くの国民が希望をなくし、読書する意欲を失い、自殺するのではないか。

    良質な読書によって、国民ひとりひとりにプランナーとなって活躍して欲しければ、読書の成果をなし崩しにする経済問題、社会保障問題を解決することにより言葉を向けて欲しい。

    私個人としては、経済状態、社会的立場などに左右されず、読書に向かい合う国民を増やすには、ベーシック・インカムが有効と思う。
    財源は、通貨供給量を増やせば良い。

    そうすれば、貧困の母子家庭にも装丁の美しい源氏物語を置くことが出来る。
    誰もがお気に入りの古典文学について気軽に語ることが出来るようになる。
    ビジネス実用しか頭になかった人たちが、俳句や短歌で言語センスを磨けるようになる。

    猪瀬氏には、どうか、国民が読書で培った能力を活かせる社会を作っていただきたいと思う。

    (1,177文字)

  • 日本人は「言語技術」を勉強しないといけないと。
    政治家はもちろん、日本の企業の人には、何を説明しているんだか、わからないこと、メモを取りにくい説明が多い。外資系企業の外国人の場合、そういうことが少ないのは、彼らが言語技術を習得しているからなのだろうか。猪瀬さんは、日本の教育がそうなっていないことを指摘して、その通りだと思う。
    絵画の見方についても触れているが、ロンドンのナショナルミュージアムなどでは、頻繁に小学生がホンモノの名作を見ながら、授業をする姿がよくみられる。なんとなく聞いているとこの本で述べられている通りのことが行われている。
    ツイッターのつぶやきなど、日本人の言語技術全体に話が及んでいておもしろかった。

  • 言語力の重要性を訴える一冊。
    入門書や実用書の類ではなく、言葉の力を磨くうえでの心得を説いている。
    言語力、言葉の力の重要性を自覚し、日本人の意識を覚醒させるための本。

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著者プロフィール

猪瀬直樹
一九四六年長野県生まれ。作家。八七年『ミカドの肖像』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。九六年『日本国の研究』で文藝春秋読者賞受賞。東京大学客員教授、東京工業大学特任教授を歴任。二〇〇二年、小泉首相より道路公団民営化委員に任命される。〇七年、東京都副知事に任命される。一二年、東京都知事に就任。一三年、辞任。一五年、大阪府・市特別顧問就任。主な著書に『天皇の影法師』『昭和16年夏の敗戦』『黒船の世紀』『ペルソナ 三島由紀夫伝』『ピカレスク 太宰治伝』のほか、『日本の近代 猪瀬直樹著作集』(全一二巻、電子版全一六巻)がある。近著に『日本国・不安の研究』『昭和23年冬の暗号』など。二〇二二年から参議院議員。

「2023年 『太陽の男 石原慎太郎伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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