城下の人 (中公文庫 M 75)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (330ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122005501

感想・レビュー・書評

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  • 明治元年に熊本に生まれ、軍人としてロシアにわたり、大正、昭和と激動の時代を生き抜いた著者の手記をまとめた本です。

    第一巻となる本書では、武士の家に生まれた著者が、少年時代に神風連の乱や西南戦争を目にしたことや、陸軍幼年学校での体験、さらに日清戦争を経て、日本を脅かすことになるであろうロシアを研究することに精力を傾ける若き日の著者の姿がえがかれています。

    著者ののこした手記を、子息の石光真人が編んだ本シリーズは、開国と維新という出来事を経て、日本が大きく変化を遂げつつある時代を、当時の人びとはいったいどのように見ていたのかということを知ることのできる貴重なドキュメントといってよいでしょう。

  • 著者の石光真清は慶応4年(明治元年)熊本生まれ、昭和17年没。日清日露の戦争をくぐりぬけ、ロシアや満州で諜報活動に従事した。現代風に言うとやっぱり職業「スパイ」なのかしら。

    四部作の自伝のうち、私が読んだのは1冊目のこれだけ。熊本生まれの著者は、神風連の乱や西南戦争を少年期に実見しており、私の興味はもっぱらそこのみ。

    随分昔に読んだので再読したい。

  • 人生で一番好きな本

  • 大分長い事本棚で積読状態だったが、少し前にようやく読み終わった。
    教科書ではおそらく「西南戦争」と書かれている「西南の役
    」を描写した部分が有名な本だとは知っていたが、熊本の往時を知る貴重な本となっている。しかも、子ども時代の出来事なので、その目線から見た一つの市井の人々の暮らしを知る手掛かりにもなっている。
    西南の役で焼け野原になった明治時代の熊本城下の写真は見たことがあった。疎開した話も聞いたことがある。それが、この中の描写でいくらか肉付けされていく感覚があった。

    後半は、上京し、兵役につくシーンが出てくる。正直、戦場のシーンは複雑な思いを持って読み進めた。

    何冊が続くようだけれど、この先を読むかどうかは、機会があればということで・・。

  • 1978年(底本1958年)刊。◆明治元年に生を受けた熊本藩士子息、陸軍軍人(なお、後日、満州・シベリアで諜報活動に従事)の手記。4巻中の第1巻で誕生から明治32年頃まで。少年期における神風連の乱、西南戦争での熊本周辺の模様が生々しい。もちろんそればかりではなく、開明的傾向の強い父の、著者を含む子息らへの訓育、没落士族の授産の実態・嫁取りを含む生活模様、旧士族子弟の教育の在り様、陸軍幼年学校での生活ぶり等、記録書としても重宝する内容が満載。特に、大津事件発覚後の上層部・近衛師団の周章狼狽の描写は秀逸。

  •  いよいよ ♯西郷ドン 始まりますので、再稿します。⇒現在、2018年大河ドラマの「西郷どん」の放送前に集中的に西郷隆盛周辺を読書中です。司馬遼太郎の「翔ぶが如く」の再読はもちろん、図書館では「西郷隆盛全集全六巻」を借りました。本書は熊本で明治元年生まれの石光真清の手記をご子息が大変読みやすくまとめた伝記で、同時代の人間の考え方がよく分かります。中でも西南戦争の熊本城攻防の当たりは出色です。例えば10才の著者が大砲の陣地で村田新八と出会う場面は映画の名場面のようです。物語は第二巻から第四巻、日清、日露戦争へと進行します。続きも当然期待しています。

  • 生誕からロシア留学まで。

    最初パラパラめくった時、意外と分量が多く難しいと思ったが非常に読みやすくいつのまにか読了。

  • 西南戦争、日清戦争。そしてロシアの足音。帝国主義時代のど真ん中に青春を投じた真清に日本や世界の将来はどのように映ったのか?そしてどんな思いでこの手記を書いたのか?当時の真清と直接会話してみたい。

  •  満洲馬賊は昔もてはやされたことがあった。しかし、それがどのようにして生れ、どんな活動をしていたかについては想像の域を出ず、夢のような絵空事を並べていた年寄りも多かったように覚えている。この書を読んではじめてその実情の一端を知り得たように思う。

  • 明治・大正・昭和を生きた元士族の手記。子供時代に神風連の乱、西南戦争を体験し、20代を軍人として終え、30にしてロシア留学に旅立つまで。作者の長子の編集力がいいのか、とにかく読みやすくて面白い。

    徳川の時代が終わったばかりの日本人の行動・思考は今とかなり異なるように見える。おおらかだし、感情表現が豊か。西南戦争時の薩軍と熊本の子供の交流などは、ファンタジーを読んでいるかのよう。

    作者は自分の弱点をごまかさず、弱かったりずるかったりするところも正直に書いていく。続きの3巻を読むのが楽しみ。

  • こういう本が残っていたということを何よりも喜びたい。
    まるで小説を読むかのような手記。
    それも、ドラマを見ているかのような。
    読書の真の愉しみを味わわせてくれる。

  • 明治維新の年に熊本藩士の家庭に生まれ、陸軍・諜報活動に生涯をささげた石光真清の手記。本書『城下の人』はその第一冊目にあたり、神風連の乱、西南戦争から日清戦争後の台湾掃討に至るまでの日本近代史が、魅力の語り手を得て生き生きとよみがえる。一級の史料であり、読み物としても十分におもしろい。
     事実と年号の羅列に終始しがちな国際関係史・日本外交史の勉強に立体的な視覚を与えてくれる貴重な本としてもお勧めしたい。

  • 明治から大正にかけてシベリアや満州で諜報活動に従事した、石光真清の手記。明治元年から日清戦争が終わるまでを舞台にした、壮大なプロローグ。<br>
    <br>生活史としても大変素晴らしく、西南戦争の舞台になった熊本での生活、当時の東京での暮らしやそこかしこに登場する後世まで名を残す人物達との邂逅、日清戦争後の所謂台湾平定における戦闘の描写など見所は沢山ある。<br>
    <br>
    石光真清は秋山真之と同じ年の生まれだけど、石光は陸軍を選んで秋山は海軍を選んだ。2人の生活はどちらかというと石光の方が不真面目に見えるけれど、石光の場合は手記なので真実見がある。坂の上の雲で描かれる秋山の人物像とは一概に比べられない。けれどそこを踏まえて環境や考え方や生活を対比させてみるのもまた非常に面白い。

  • 明治元年生まれの陸軍軍人(後にロシア諜報)の幼年期から青年期の手記。
    熊本での西南戦争の様子、台湾占領などいきいきと描写。
    たんたんと「武士道」とか「志」があった時代を感じさせる。
    大きくふりかぶって、おいおい、だいじょうぶか?と思わせた「国家の品格」よりもずっと「品格」ある。

    戦後教育を受けた我々は「明治政府の富国強兵」なんて言葉は「負」を連想、「わるうござんした、帝国主義なんておっかけて〜」なんて気分になるが、これを読むと過去を現在の価値観で断罪してはいけない、とつくづく。

    熊本の地理に暗いのが残念。後の手記も取り寄せて読もうと思っている。

  • 明治維新から日清戦争当時の歴史がよく判る。

  • これが実在の人物であることに驚きを隠せない

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著者プロフィール

明治元(一八六八)年、熊本生まれ。一六年、陸軍幼年学校に入り、陸軍中尉で日清戦争に従軍し、台湾に遠征。三二年、特別任務を帯びてシベリアに渡る。日露戦争後は東京世田谷の三等郵便局の局長を務めたりしていたが、大正六(一九一七)年、ロシア革命直後のシベリアに渡り諜報活動に従事する。八年に帰国後は、夫人の死や負債等、失意の日々を送り、昭和一七(一九四二)年に死去。死後、その手記が公刊される。 明治三七(一九〇四)年、東京生まれ。早稲田大学卒業後、昭和六(一九三一)年、東京日日新聞社に入社。一三年芝浦工作機械に転じ、戦時中、日本新聞会考査課長、日本新聞連盟用紙課長を歴任。戦後、日本新聞協会用紙課長、総務部長、業務部長を経て、日本ABC協会事務局長、専務理事。三三年、父・石光真清の手記『城下の人』『曠野の花』『望郷の歌』『誰のために』の出版により、毎日出版文化賞を受賞。編著書に『ある明治人の記録 会津人柴五郎の遺書』等がある。五〇年に死去。

「2018年 『誰のために』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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