- Amazon.co.jp ・本 (936ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122009912
感想・レビュー・書評
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請求記号 918.68-TAN(上野文庫)
https://opac.iuhw.ac.jp/Otawara/opac/Holding_list/detail?rgtn=1M025431
(大田原キャンパスでは谷崎潤一郎全集を所蔵)
最近のノーベル文学賞候補と言えば村上春樹ですが、過去には三島由紀夫、安部公房とともに、同時代の多くの作家に認められた天才的な才能を有する谷崎潤一郎も有力候補だったそうです。(なんでトンネルを超えて雪国に行った人が受賞したのか、個人的には腑に落ちません。)それぞれ個性的な四人姉妹を華麗繊細に描き上げた本編は、文句なしに日本文学の金字塔だと思います。まずは市川崑監督の映画で雰囲気を掴むのも一法かもしれません。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
読めないー。進まないー。重いー。みんなの感想を見てると、面白いとか情景がすごいとかいろいろあるが、そこまで全然到達しない。・・がんばって読んで、感想を書き直します。
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3分の1まではなかなか先に進まなかったけれど、それ以降は面白くなって来て次々読めた。
この厚さを読み切ったことに凄く満足感。
そして、まだまだこの先がありそうな終わり方が余韻を残して味わえて良い。
今日、夢に出てきそう。 -
上中下が一冊になった辞書の様な本。読み始めた時の全部読めるかな…コレ…感たら笑
でもそこは谷崎潤一郎!読みやすくて面白くてページが進む進む!殆ど映画のことは覚えてないが1度だけ観たような?なので登場人物は自ずとその役者達を思い浮かべていた。旧家の四姉妹を軸に起こる出来事がとても美しく淡々と描いてある。ドラマチックな展開が全く無いわけではないが、全体的にほわ〜んとしていて桜色の雰囲気。その家柄の雰囲気を出せているのが上手いなー。四姉妹各々の性格も実にバランスが良く、中でも幸子と雪子が他よりはちょっと仲が良いところなんかもリアルな感じ。ある一家の数年を壮大な話でもないのにこうも面白く出来るなんて本当に素晴らしい!
戦前の平和な日々に少しずつ戦争の影が見えて来て物語は終わる。この後蒔岡家はどうなるのかな…。隣人含め登場する外国人はみなヨーロッパ人なので、その人達の今後も気になるところ。
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面白かった。人の本質は変わらない。
上中下が一冊になったこの本は、持ち運びには不向。 -
解説:田辺聖子
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蒔岡の家には四人の娘があり
上のふたりはすでに片付いているのだが
自由奔放な末の妙子と、物静かな三番目の雪子は行き遅れていた
妙子はともかく、雪子の結婚が決まらないのは
相手に恵まれないばかりでなく
本家の口出しや、妹のスキャンダルに足を引っ張られてのことだ
この時代、名家令嬢の恋愛問題がゴシップになったのである
姉たち…とくに二番目の幸子は
これを非常に不憫と捉えていたのだが
しかし雪子自身、どこか結婚そのものを厭わしく思うふしがあった
末の妙子は早くに父親と死に別れたため
僻んでいるというのでもないが、「家」に対する情の薄いところがあり
幼馴染と駆け落ちしたと思ったら
身分違いの写真家といい仲になってみたりして
二番目の幸子には悩みの種だった
折りしも時局が三国同盟から対米開戦を臭わせつつある中
仲のよかった隣のドイツ人一家は帰国してゆき
それに自身の流産も重なると
幸子の心はなにか足場を失ったようで
そうなると、雪子のためにろくな縁談を用意できずにいることも
ますます申し訳ないような気がしてくるのだった
三番目の雪子は内弁慶で
ひとりでよその人を相手にすると、すぐにどぎまぎしてしまう
小娘ならともかく、三十すぎてのそんな具合は
ちょっと尋常とは言えないかもしれないが
それはひょっとすると
落ちぶれかかってなお気位の高い蒔岡家の人々と
それを眺める世間の人々のあいだで
心が引き裂かれた経験を持っているからかもしれなかった
大人としては何に対しても気を許せず
子供のように立ちすくむしかないのだ
そしてそう考えると、末の妙子は世間に対して闇雲だった
「家」からの自立を焦って、さまざまな事業に手を出すも空回り
前後不覚に陥って、理想と現実のギャップをごまかそうと
いくつもの顔で男たちや姉たちを欺くようになっていた
とまあ、そんなごたごたはありながらも
みんなけっこう仲良くやっている話
他愛もない日常の出来事を連ねて、ひとつの大河小説に仕上げている
それは芥川龍之介が「歯車」のなかにしたためた構想であり
また「筋のない小説」論争を呑んで出した谷崎なりの解答でもあろう
近代日本文学の結論と呼んで差し支えないのではないか -
2017年11月8日に紹介されました!