水晶萬年筆 (中公文庫 よ 39-2)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (180ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122053397

感想・レビュー・書評

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  • 飄々としてつかみどころのない物語たち。
    読んでいると、幻を見ているような錯覚に陥ってしまう。
    Sの文字に翻弄される物書きの話や、影の魅力にとり付かれた画家の話など。
    吉田さん特有の言葉遊びも楽しい。
    淡い恋心を感じる場面もあって、ほのぼのとした気持ちになれた。

  • 十字路のある町の静かで不思議なおはなしたち。

    「水晶万年筆」、「黒砂糖」、「ティファニーまで」がお気に入りです。
    「黒砂糖」の夜中にトランペットでファンファーレを拭きながら種をまく、という場面が素敵だなぁと思いました。
    「アシャとピストル」が一番よくわからなったけど、あの妙なおかしさと緊張感と怖さはなんなのだろう。

    掴みどころのないふわふわとしたお話と静かでどこかノスタルジックな情景、時にぞくっとする場面…不思議な
    魅力のつまった短編集でした。

  • 現実の東京の路地をモデルにしているそうで、これらの路地を実際に知っているわけでもないのに、なぜか懐かしい気分になる。
    「ティファニーまで」がいちばん好きだ。こんな風に、目的地への移動も思考もせかせかしないで道草を食っていられるのって、すごく楽しい。

  • 東京の片隅の、どこかの十字路で、
    知る人ぞ知る変わった人達が
    ひっそりのびのび生きてる話。

    “ファンファーレ専門の作曲家”が
    いい例だと思ったんだけど、
    明らかに変わった生き方をしてる人が、
    過度に主張せず自分の領分を守って、
    片隅で静かに、
    スポットライトから逃れて安心して、
    穏やかにのびやかに暮らしている。

    自分はそれがすごい好きで、
    羨ましいんだと思った。
    よく知らないけど、
    「不便益」って言葉を思い浮かべた。

    足のつむじとか、
    おでんは濁点が付くほどうまいとか、
    どうやって生きればそんな発想に行き着くんだって表現も好きだ。

    もしかしたらティファニーの先生は
    吉田さんの思考回路に近いのかな。
    頭の中、覗き見した気分でうれしい。

    黒砂糖は夜に属すとかも素敵だ。
    今までなんとも思わず通り過ぎていたものに
    足を止めて、止めてしまえばもう、
    それを知る前のやり方で黒砂糖を見られない。
    謎の付加価値。たまらない。

    上手く伝わらないかもしれないけど、
    伝えるために書かれたものと
    書くために書かれたものが多分ある気がして、
    わかったような口を聞くのはおこがましいけど、
    こういう作品は多分後者なんじゃないかな。

    この作品から得たものでは、
    ちっとも腹は膨れないけど、
    披露したところで
    みんなに感心してもらえそうもないけど、
    腹が膨れたり、感心されたりする作品しか
    ない世界は、自分は嫌だなと漠然と思う。

    書くために書かれた(と僕は思っている)ものを、
    読むために読む時間は
    とびきり幸福で贅沢だった。

  • 何話か難しい話があって読み返さなきゃとワクワクしてます。不思議で非現実的な話ばかりだけど、それが今すごく私の欲している話で読んでいてとても楽しくなった。とりあえず、2周目します。

  • 分からないようで分かる、感覚に語りかけるような文体と表現が自分には合っていて、夜に読んでいて心地良い作品でした。

  • 再読も面白かったです。
    ありそうで無さそうで、やっぱりありそうな、十字路のある街。
    この世界にも行ってみたくなりました。
    穏やかでちょっとへんてこなお話たちでしたが、「ティファニーまで」が今回は残りました。
    「低鳴る」「ドキつく」「上げやられる」「じゃれじゃれ」も面白いですが、『「何もしない」を「する」』ことを「しる」というのはなかなか深いものがあったり…と思いました。

  • あとがきにある土地に、この本を持って散歩に行きたい。

  • ・「魚の絵が好きで」
    「魚ですか」
    「水の中は自由だからーと言ってました。とにかく自由じゃないと駄目なんです。自由気儘に描いていれば、その自由が絵を見る人にも伝染するはずだと」
    つみれさんは、自由、というたび、少し困ったような顔になった。
    「自由を求めるあまり、ずっと不自由だった人です」

    ・「あのですね、何もせずに何かをしたような気になれることはないでしょうか」
    とてもいい質問である。そして、いい質問には答えが何通りもある。

    ひとつーそもそも「何もせずに何かをしたような気になろう」という怠け心こそ、文明の推進力である。
    ふたつー何もしたくないのなら何もしなければいい。
    みっつーと言いたいが、我々が本当に何もしないでいられたら、もう少し住みやすい世界が出来ていたのかもしれない。
    よっつー住みやすい世界なんてくそくらえだ。

  • ほわほわしていてロマンチック。

著者プロフィール

1962年、東京生まれ。小説を執筆しつつ、「クラフト・エヴィング商會」名義による著作、装丁の仕事を続けている。2001年講談社出版文化賞・ブックデザイン賞受賞。『つむじ風食堂とぼく』『雲と鉛筆』 (いずれもちくまプリマー新書)、『つむじ風食堂の夜』(ちくま文庫)、『それからはスープのことばかり考えて暮らした』『レインコートを着た犬』『モナリザの背中』(中公文庫)など著書多数。

「2022年 『物語のあるところ 月舟町ダイアローグ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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