- Amazon.co.jp ・本 (180ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122053397
感想・レビュー・書評
-
飄々としてつかみどころのない物語たち。
読んでいると、幻を見ているような錯覚に陥ってしまう。
Sの文字に翻弄される物書きの話や、影の魅力にとり付かれた画家の話など。
吉田さん特有の言葉遊びも楽しい。
淡い恋心を感じる場面もあって、ほのぼのとした気持ちになれた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
現実の東京の路地をモデルにしているそうで、これらの路地を実際に知っているわけでもないのに、なぜか懐かしい気分になる。
「ティファニーまで」がいちばん好きだ。こんな風に、目的地への移動も思考もせかせかしないで道草を食っていられるのって、すごく楽しい。 -
東京の片隅の、どこかの十字路で、
知る人ぞ知る変わった人達が
ひっそりのびのび生きてる話。
“ファンファーレ専門の作曲家”が
いい例だと思ったんだけど、
明らかに変わった生き方をしてる人が、
過度に主張せず自分の領分を守って、
片隅で静かに、
スポットライトから逃れて安心して、
穏やかにのびやかに暮らしている。
自分はそれがすごい好きで、
羨ましいんだと思った。
よく知らないけど、
「不便益」って言葉を思い浮かべた。
足のつむじとか、
おでんは濁点が付くほどうまいとか、
どうやって生きればそんな発想に行き着くんだって表現も好きだ。
もしかしたらティファニーの先生は
吉田さんの思考回路に近いのかな。
頭の中、覗き見した気分でうれしい。
黒砂糖は夜に属すとかも素敵だ。
今までなんとも思わず通り過ぎていたものに
足を止めて、止めてしまえばもう、
それを知る前のやり方で黒砂糖を見られない。
謎の付加価値。たまらない。
上手く伝わらないかもしれないけど、
伝えるために書かれたものと
書くために書かれたものが多分ある気がして、
わかったような口を聞くのはおこがましいけど、
こういう作品は多分後者なんじゃないかな。
この作品から得たものでは、
ちっとも腹は膨れないけど、
披露したところで
みんなに感心してもらえそうもないけど、
腹が膨れたり、感心されたりする作品しか
ない世界は、自分は嫌だなと漠然と思う。
書くために書かれた(と僕は思っている)ものを、
読むために読む時間は
とびきり幸福で贅沢だった。 -
何話か難しい話があって読み返さなきゃとワクワクしてます。不思議で非現実的な話ばかりだけど、それが今すごく私の欲している話で読んでいてとても楽しくなった。とりあえず、2周目します。
-
分からないようで分かる、感覚に語りかけるような文体と表現が自分には合っていて、夜に読んでいて心地良い作品でした。
-
再読も面白かったです。
ありそうで無さそうで、やっぱりありそうな、十字路のある街。
この世界にも行ってみたくなりました。
穏やかでちょっとへんてこなお話たちでしたが、「ティファニーまで」が今回は残りました。
「低鳴る」「ドキつく」「上げやられる」「じゃれじゃれ」も面白いですが、『「何もしない」を「する」』ことを「しる」というのはなかなか深いものがあったり…と思いました。 -
あとがきにある土地に、この本を持って散歩に行きたい。
-
ほわほわしていてロマンチック。