- Amazon.co.jp ・本 (527ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122057203
感想・レビュー・書評
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会津落城から西南戦争終結までを会津の山川大蔵の視点から描いた歴史小説、と言いたいところだけど若干ラノベ調というか本格歴史小説と呼ぶにはちょっと遠慮がある小説。
斉藤一を狂言回しに使ったのは入りのよさとしてはいいのかもしれないけど、あまりに有名人なので斉藤一が出てくると「あぁ、これは架空戦記ものなのだな」と冷めてしまう。
徹底的に山川大蔵モノにして分量を半分にして本格歴史小説を目指して欲しかったものです。売上半分以下になるだろうけどさ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
会津落城以降の、滅藩、斗南移封から西南戦争までの山川大蔵を中心とした会津人の物語。
著者の新選組の話は読んでいるが、明治へ続く話は知らないこともあり新鮮だった。
すごく苦しくもなり、それでもひたむきな姿に胸が熱くなった。
明治がこれまでで一番の変革の時であり、今もそれを引きずっていることを実感する。 -
秋山香乃は、最近の新選組もの小説だと必ず名前のあがる作家さんみたいですけど、個人的には今まで読むタイミングがなかったので初挑戦です(幕末は史料あさりばかりで小説読まなくなっちゃったから)。だって山川浩が主人公で斉藤一も登場するとなれば無視できないでしょう!(※会津藩マニア)
歴史小説を読むときって、無意識に頭の中で「これは史実(ノンフィクション)」「ここは創作(フィクション)」と脳内で仕分けしてしまったりするんですが、そういう意味ではこれは、斉藤一に関する部分に創作の占める割合が多く、山川浩に関する部分はノンフィクションが多かったような印象です。とくに後半、西南戦争に突入したあたりから、史実の羅列みたいになる傾向があったような(戦争になると仕方ないんでしょうねえ、私生活=恋愛とかは創作できるけど)。そう思うと、やっぱり司馬遼太郎という人は、史実と創作のブレンド具合が絶妙だったなあとかしみじみ思ったりしました。
ちょっと苦手かなと思ったのは、女性作家だからか、いかにも腐女子の好みそうな思わせぶりな会話が盛り込んであったり(あれ司馬さんのは無意識で狙ってないから萌えるんだよ)、反面、男女間のそういう描写は、男性むけかと思うくらいちょっと露骨だったりして(あくまで主観です)、個人的にはちょっと引きました。エンタメとはいえ、歴史小説にそこは求めてない。
斉藤一に関する部分に創作が多いと思ったのは、彼が会津藩の間者として新選組に入隊したという設定を採用してあったから。まあこれも「絶対ありえない」とまでは言えないので、ひとつのパターンとしてアリだと思うんですけど、明治になって大久保利通にも間者として使われるとかなると「おいおい、るろうに剣心かい」と、ツッコミのひとつも入れたくなります(笑)。まあ「小説」ですから、エンターテイメントとして全然OKなんですけどね。
全体の比重として、思っていた以上に西南戦争についての比重が大きく、最後もそこでまとめてあったので、ちょっと偏ってたかなという印象。もっと重要なサブキャラになるのかと思っていた梶原平馬がほとんど序盤で姿を消してしまうこともあり、もう少し山川浩周辺の会津の群像みたいなものも掘り下げて描いて欲しかったな~というのが、まああくまで個人的な希望ですけども、ちょっと物足りなかったかも。まあ自分はこと会津藩や斉藤一のことになると煩い読者なので、一般むけ会津藩入門書としては悪くなかったと思います。