世界の歴史 8

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784124034080

感想・レビュー・書評

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  • 2017.05―読了

  • ムハンメドの開教に始まり、ムスリム帝国が出来ていく。その拡大していく様を詳細に描いているのですが、登場人物が同じような名前ばかりで少々分かりづらいでした。現代に繋がるシーア派とスンニ派の対立の淵源。ウマイヤ、アッバース、後ウマイヤ王朝、ファルーク朝、マムルーク朝の興亡、スペインのコルドバの反映など興味深い歴史です。現代にあれだけ世界的に広がりを見せているイスラムの秘密を知りたいと思ったのですが、なぜあれだけ拡大していくことが出来たのかは今一つ分かりませんでした。エルシド、サラディン、バイバルス、チムールなどの英雄も逆の立場から見ると違って見えます。

  • 激動のイスラム世界の14,5世紀までの歴史を一望。日本人にはうまく想像できないかもしれない。たとえば、「フルースィーヤ」は本当に「騎士道」なのかなど、翻訳の問題。しかし、サラディンなどイスラム社会側に思い入れをするということもなく、ニュートラルで、それでいて著者の体験談(図書館での調べもの、カフェに座っているときなど)も踏まえた堅苦しくない巻。最初の方で柔らかく概観を提示(=伏線)しながら、少しずつ内容を詳細にしていく書き方は、アカデミックな内容なのに推理小説のよう。「ムハンマド」が多すぎる…。

  • 進学校に勤めていらっしゃる世界史の先生方に話を伺うと、よく出てくる本が中央公論社の『世界の歴史』シリーズです近年の(とはいっても今ではすでに発刊されて10年以上立ちますが)歴史学界の動向を踏まえた歴史の流れを平易な文章で記述されており、受験世界史を語る上で大いに参考になる、とくに論述対策では欠かせない本であるという評価をよく耳にします。確かに世界の通史を一般向けに書いた本ではこのシリーズが今のところ最新であり(山川の『世界各国史』シリーズはその性格上他地域との横のつながりが見えにくく、講談社の『興亡の世界史』シリーズは通史という形をとっていない)、最近文庫化もされて手に入れやすい本です。ということで、私も時間を掛けて全巻を読破しようと模索しています。で、今回はちょっと興味のありますイスラームということで手にしました。イスラーム王朝の興亡は、アッバース朝の衰退あたりからややこしくなり、モンゴルが中央アジアを席巻する以前のこの地域のイスラーム王朝で高校世界史に登場するものだけでも挙げてみると、サッファール朝、サーマーン朝、ブワイフ朝(以上イラン系)、カラ=ハン朝、セルジューク朝(小アジアではルーム=セルジューク朝が分立)、ホラズム朝、ガズナ朝(以上トルコ系)、ゴール朝(トルコ系かイラン系か異論有り)があります。エジプト以西でもトゥールーン朝、ファーティマ朝、アイユーブ朝、マムルーク朝、ムラービト朝、ムワッヒド朝、イドリース朝、後ウマイヤ朝、ナスル朝、マリ王国、ソンガイ王国なんかがでてきます。これらを系統づけて関連づけて生徒たちに説明するのは骨です。本書はこうした最もややこしい時代のイスラームを効率よく、ときにはエピソードをちりばめながら書かれてあるので、とても役立ちました。とくにセルジューク朝で活躍したニザーム=アルムルクとイラン系の大詩人ウマル=ハイヤーム(と暗殺教団を組織したイブン=サッハーブ)とが同じマドラサで学んだ親友同士という伝説があることに大いに関心を持ちました。これは伝説の限りを出ないものですが、この伝説を知っておくことによりウマル=ハイヤームがセルジューク朝で活躍した詩人であることを確実に覚えます。もっというならば、イラン最高の詩人とうたわれるフィルドゥシーとの区別も付けやすくなります(彼はガズナ朝の詩人)。要はこれで彼らの出身がどっちか迷わなくなるということです。伝説やエピソードは単に興味深いだけでなく世界史学習の手助けにもなります。そのような話を少しでも多く仕入れるためにも、こうした世界史シリーズを読み込むことを続けていきたいと思います。

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著者プロフィール

東京大学東洋史学科卒業、同大学院人文科学研究科博士課程中退。東京大学、早稲田大学で教授を歴任。東洋文庫研究部長。史学会理事長を務める。文学博士。東京大学名誉教授。専攻は、アラブ・イスラーム史。著書に『中世イスラム国家とアラブ社会』『マムルーク』『イスラーム世界の興隆』『イスラームの国家と王権』ほか多数ある。1942~2011。

「2011年 『イスラームの「英雄」 サラディン――十字軍と戦った男』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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