資本主義という謎 「成長なき時代」をどう生きるか (NHK出版新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140884003

感想・レビュー・書評

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  • 世界史観から資本主義を読み解く刺激的な一冊。

    『桐島、部活やめるってよ』(映画版)を現在社会の暗喩と解釈し、桐島=アメリカと説いたのには膝を打った曰く『アメリカ、覇権やめるってよ』。桐島が学校に来なくなってうろたえるバレー部が、苛立つ梨紗がいまの日本の姿だ。
    『桐島、』では高校のクラスの中で"勝ち組"も"負け組み"も空しさをもった存在として描かれる。資本主義が行き詰まり「成長なき時代」に入ったいま「強欲」に投資を続けて利益を出し回収するシステムは破綻した。別のシステムに乗り換えるためには現行システムから撤退するのが先決だ。


    本書ではいまを資本主義が成立した「長い16世紀」に準え「長い21世紀」としている。
    1492年に新大陸が発見され新しい空間を得る事によって取引は拡大し、経済も大きくなった。これはニクソン・ショックによって固定相場から変動相場に変り、ネットという「新大陸」を発見し金融・電子取引という広大な市場が現れたことと韻を踏んでいる。

    ★古代・中世・近代に通じる普遍的原理「蒐集(コレクション)」という概念がある。ジョン・エルスナーは『蒐集』に於いて「キリスト教は魂を、資本主義はモノをコレクションする」と説いている。更に「西欧人は社会秩序そのものが本質的に蒐集的(コレクティヴ)だ」という考えを持っているとしている。そして蒐集と言う行動をもっとも効率的に行えるのが資本主義だというわけだ。
    蒐集してあつめたコレクションを永続的に受け継がせるために「会社=法人」というものが生まれた。契約を基本とするユダヤ教、キリスト教社会でこの考えは伝播したが、神以外の建造物は刹那的であるという考えのイスラム教社会には馴染まなかった。

    ★21世紀に入ってからの中国の急速な台頭は資本主義の最後の足掻きである。15世紀まで圧倒的先進国であった中国がこの200年間後塵を拝してしまっているのは何故か。いま巻き返しているように見えるが、それは西洋式の方式を(仕方が無く)取り入れただけであって、嘗ての中国が持っていたような新しいモノは出ていない。

  • 【由来】
    ・「プーチン最後の聖戦」からの「グリーンスパン」からのイギリス関連本からの「グローバリズム掲載」からの水野和夫検索@amazon。

    【期待したもの】


    【要約】


    【ノート】

  • チャーチル『資本主義は最悪のシステムだが、これ以上のものはない』
    限界収益低減の法則、 数を重ねると満足度が下がる。→満足度のシェアをすれば、解決するのでは?パイをどんどん大きくすればよいのでは?

    サモア  最後通帳ゲームは3割を切ると拒否されやすい。 利子率革命 ウェストファリア条約 三十年戦争を終結させた世界最初の大規模講和条約
    →17世紀のドイツを中心として起こった宗教戦争です。
    荒廃するドイツにおいて、争いの渦中にいなかったプロイセンが台頭してきた。
    →家康?

    1618年から1648年まで、三十年間にわたって繰り広げられたため、こう呼ばれています。
     中世ヨーロッパ 利子悪いのは神の時間に利子をつけるから。高利貸し ウスラ 金利はラテン語で「ウスラ(USURA)」と言う。もともとはあらゆる金利を含む概念だったが、中世の教父たちや教会法が「与える以上に受け取ること」と定義したことで、「正当でない」金利という意味を持った

  • 【書きかけ】
    書名と著者名で拒否反応を起こす人も(特に近代経済学を一通り学んだ人には)いると思うし私自身はちょっとしたきっかけで読んでみたが、一度考えてみてもよい問題ではある。博識とイメージで押し切るトンデモな面はあるだろうから気をつけたほうがいいが、そういう面を全く含まずに考えるのは難しい話だと思う。トンデモ本としての価値しかないと思う人は逐一説得的な反論を試みるべき。”正統な”経済学者も百家争鳴のなか大衆感覚では結局のところ長期停滞のままであるのは事実なのだから。

  • 2013年刊。著者水野は埼玉大学大学院経済科学研究科客員教授、大澤はフリーの社会学者。「100年デフレ」刊行時より注目する水野氏の論は個人的に新奇でないが、一貫した論に安心感。一方、主著未読の大澤氏は、水野と専攻は違うが、資本主義黎明期に相当する中世⇒近代への移行期、1970年頃の資本主義の変容期に造詣が深い。2人の論を切り結ばせる本書は、現代と将来の資本主義につき多面的把握を可能にするものと言えるだろう。◇ただ、大澤の、現代を不可能性の時代とする意味内容は本書では舌足らずか。◇日本の再分配機能は不全。
    その意味は、課税の累進性につき所得1億円が負担比率の頂点。以上は比率が下落するらしい。「タックス・ヘイブン」でも同様の指摘あるので多分間違いない。この点は、もっと怒るべきだと思う。◇1000兆円の国家債務を民間の1000兆円弱の資産が担保しているのが日本の信用の源泉。だが、これをもし互いに打ち消し合うような事態になれば、国家による民間資産の収奪ではないか。という意味で脆弱な状況。◇単年度の財政均衡が継続して実現できていないのは、既存システムが経済・社会構造に適合していない証左というのは目から鱗。
    ◇その他諸々の視座・情報を貰えた良書である。◇EUあるいはその域内国の利子率の変遷は見てみたいところ。水野氏が重要視する指標であり、日米はともかく、EUに関してみれば、本書はそのさわりを述べるにとどまるからだ。

  • インデックス投資家として、世界の成長ってのがどこまで続くのかが気になって手に取った一冊。正直なところ半分も理解出来なかったが、資本主義における経済成長ってのは、永遠に続くものではないのかな、という風には理解しました。
    まあ当面は大丈夫かなとも思いますが、「桐島、部活やめるってよ」の引用話のところで、破綻は突如訪れるものというような話もあって、油断はならないのかも知れません。素人にタイミングが判断出来るわけありませんが、、、

  • 水野和夫氏の言説が読みたくて手に取った。後半は完全に大澤真幸氏のペース(「食っちゃった」という感すら)。でも知的刺激に富んだまれに見る好対談と言える。

  • レビュー省略

  • 15/02/20。

  • 資本主義の「終わり」を大きな観点から論じた対談。目先のこまごました事象は気になるが,こうした大局的な見方を自分のものにしておくのは大事。

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著者プロフィール

1953年愛媛県生まれ。埼玉大学大学院経済科学研究科博士課程修了。博士(経済学)。三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフエコノミストを経て、内閣府大臣官房審議官(経済財政分析担当)、内閣官房内閣審議官(国家戦略室)を歴任。現在、法政大学法学部教授。専門は、現代日本経済論。著書に『正義の政治経済学』古川元久との共著(朝日新書 2021)、『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済』(集英社新書 2017)、『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社新書 2014)他

「2021年 『談 no.121』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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