資本主義という謎 「成長なき時代」をどう生きるか (NHK出版新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140884003

感想・レビュー・書評

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  • 資本主義は普遍的なものなのか、過渡期的なものなのか?なぜ西洋〜キリスト教の下で発生したのか?国民国家と資本との関係は?

     ローマから始まって、スペイン、オランダ、イギリス、アメリカ、日本、EU…。歴史上、ヘゲモニー国家は生産拡大→金融拡大→バブル→崩壊というサイクルで移行して行きます。その指標として水野氏は「利子」に注目します。そもそもキリスト教でもイスラム教でも禁じられていた「利子」を採用する事によって資本主義は生まれたといいます。その利子が10年を超えて2%以下の超低金利が続くと、既存の経済・社会システムが維持できなくなるという仮説なのですが、現在の日本は16世紀のジェノヴァの記録を400年振りに更新してしまいました。続いて米英独なども堰を切ったように2%を切っています。この低金利では、もう投資機会がないという事ですから、本来は成熟した良い世の中を築いたということなのに、欲望にかられて余計な事をして、金融を肥大化させる。バブルを生む…
     今までは、新たなフロンティアを見つけた国が次のヘゲモニー国家となって来ました。新大陸という地理的空間だったり、ITや金融工学という仮想空間だったり…。しかし、今やもうフロンティアは残っていないように思われます。果たして中国は次のヘゲモニー国家になり得るのでしょうか?それは難しいでしょう。なぜなら中国はあくまでも従来の西欧国家や日本、韓国などが歩んできた道を辿っているだけで、決して新たなフロンティアを発見したわけではないからです。このままではもっと速いスピードで我々と同様に、縮小する経済を経験するでしょう。
     さて、そんな中でグローバリズム資本主義と国民国家との関係はどうなっていくのでしょうか?資本主義は、実は現在のように資本が国境を易々と越える状況を想定していないと本書では捉えます。あくまでも国民経済の総体が世界経済だという前提なのです。現実には世界経済が先にあるのだけれど、そのフレームワーク自体を説明する方法が見つかっていない。
     そうして中国、インド、東南アジア、南米、アフリカ…と、まもなくフロンティアを食い尽くした世界経済はゆっくりと、ゼロ成長に向かいます。その時にどうなるのか。日本の場合、仮にゼロ成長自体は耐えられても、その時に問題になるのは莫大な借金です。それを返済する術がない。僅かでも成長しているうちに借金を減らしていかないといけない。それは身を削るようなつらい作業になるでしょう。
     そもそも資本主義は、投資と回収を繰り返して発展していくことを前提に作られたシステムです。しかも古くは家畜や奴隷、石炭、石油、あるいは原子力といった「タダ同然の安価なエネルギー」を得る事で爆発的に発展を遂げ、そのために未来から富を先取りしてきたのです。持続可能なものではなかったことに我々は気づき始めたのでしょう。解答はまだありません。この事実を自覚して、考え続ける責務が我々にはあるのです。

  • 利子率革命
    大局観
    資本主義の今後は気になる
    世界経済の飽和

  • 法的には資本主義、システム的には……もはや資本主義の終わりの始まりになっているのが今なのでしょう。

    社会学者と経済学者の対談で、この社会の中で経済がどのように機能しているかを立体的に考えることができました。

    個人的には、世界史に全く疎いので、16世紀の話について行くのがやっとでしたが、確かに、今の経済状態も歴史の積み重ねの上に成り立っているはずですから、歴史と重ね合わせた方が理解しやすいのでしょう。

    今までと違う角度で資本主義を見ることができました。

    世界史の勉強、もっとしておくんだったなぁ、とつぶやき……。

  • 資本主義の本質を蒐集(博物館)の論理と捉える点が面白いが、その蒐集の論理がなぜ生じたかは、更なる検討が必要。

  • 資本主義の「暴力」とか、「必然」なんてタイトルだったら買わなかったと思う。惹かれたのは「謎」というタイトル。帯に挙げられている「謎」は次のようなもの。曰く「なぜ西洋で誕生したのか」、「法人の起源はどこにあるのか」、「利子率革命とは何か」、「成長なき資本主義は可能なのか」。

    ぼくの浅薄な知識によれば、最後の「謎」には「否」と即答することになる。但し、門外漢のぼくが即答するようなレベルのことが、わざわざ「謎」として例示されているはずもない。「もしかしたら可能性があるのか?」という興味から購入。

    読み終えてみると、高校時代に読んでいたら経済学を志したかもしれないと思うほどに面白かった。あるいは、面白い学術系書籍によくあるように、読者のもつさまざまな学習体験とうまくリンクすることで一層面白く感じられる本に仕上がっているということなのかもしれない。

    個人的には前半の歴史的システム的考察がとくに面白かった。影響されて理論史系の本をたくさん買ってしまった。またひとつ、ぼくに新たな楽しみを与えてくれるきっかけになった本。

  • 資本主義のこれまでとこれから。現代の資本主義はいかに成り立ち、今どういう局面を迎えているのか。
    国家単位を基準に成り立った資本主義はグローバル化を迎えて(通貨交換を行う時代を迎えて)機能不全を起こしつつある部分もある。また、成長なき時代、フロンティア・外部がなくなりつつある時代でもあり、早晩、別のシステムを見つけなくてはならない・・・
    問題の整理はいいんですが、その先を提示するのはやっぱり難しい。だからって最後は古市くんと桐島かよってツッコミを入れたくなるのも確かですが。

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著者プロフィール

1953年愛媛県生まれ。埼玉大学大学院経済科学研究科博士課程修了。博士(経済学)。三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフエコノミストを経て、内閣府大臣官房審議官(経済財政分析担当)、内閣官房内閣審議官(国家戦略室)を歴任。現在、法政大学法学部教授。専門は、現代日本経済論。著書に『正義の政治経済学』古川元久との共著(朝日新書 2021)、『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済』(集英社新書 2017)、『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社新書 2014)他

「2021年 『談 no.121』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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