資本主義という謎 「成長なき時代」をどう生きるか (NHK出版新書)
- NHK出版 (2013年2月7日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140884003
感想・レビュー・書評
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前のボスが勧めてたので、読んでみた。経済学者の水野和夫と社会学者の大澤真幸の対談。正直よくわからないところも多いのだけど、対談形式なのでわりとすんなり読めた。
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水野和夫と大澤真幸の顔合わせは意外だったが、以前より知り合いだったらしい。2人の対談を通じて、経済学的な観点と社会学的な観点から、いまにも崩れそうな資本主義について、歴史的なスパンでとらえ直している。
近代とともに発展した資本主義は、現代に至ってかつてないレベルでグローバル化した。この帰結として、搾取できるフロンティアは消滅し、「成長」する余地がなくなっている。このことが、さまざまな問題として露呈している。きわめて低い金利の状態が続くというのは、歴史的に見ても経済システムが成長しきった状態で、大きな社会的な変化がなければ解決しない。
資本主義に代わる最適な経済システムの想定があるわけでもない。
成長戦略や単なるイノベーションといった、小手先の解決策で通用するというわけでもない。
例えば、ドラッカーが知識社会と呼んだような、まったく現代と異なった社会が、今後何十年か後に出現しているのかもしれない。
それらについて、イメージし形成できるのは、最終章でふれられているように、我々とは違った価値観を持つ、今の、これからの若者たちなのかもしれない。 -
資本主義という社会・経済システムが機能不全に陥るのはもはや時間の問題であり、それに代わる新しいシステムが必要になるという水野氏の考え方を社会学者の大澤氏との対談で整理・説明していく内容の本。
このまま行けば大きな不幸が待っている。確かにそのように思える。では、どうすればいい? -
水野和夫氏の対談本という点では、集英社新書『超マクロ展望 世界経済の真実』(萱野稔人氏との対談)とほぼ同じ内容だが、「不可能性の時代」等の大澤氏の独自概念との絡みや、「桐島、部活やめるってよ」での「桐島=覇権国(アメリカ)」というメタファーには(しっくりこない部分もあったが)新鮮味があった。個人的には、現在の資本主義的な世界経済自体はどこかでソフトランディングさせていく必要性があるんじゃないかと漠然と感じているが、果たしてそれは現実的に可能なのかと言われると・・・(´・ω・`)
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資本主義の来歴と現状を広範に論じた対談。「知的遊戯」としては抜群に面白いし、新自由主義経済の犯罪的本質への批判も真っ当だが、「資本主義はこのままでは破綻する」という現状認識の域を出ないため、副題の「『成長なき時代』をどう生きるか」という問いに対する具体的・実践的な指針は示されない。歴史学サイドとしては、「長い21世紀」説への世界システム論の恣意的な利用が気になる。
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了。
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成長戦略とは聞くが人の数に限りがあり、市場も限られている以上「成長し続ける事が可能なのか?」という疑問を持っていた。
そんな疑問に答えてくれる入門書です。
最後の章で「成長」の無い時代に、どう未来を切り開いていくかを論じています。 -
社会学者と経済学者の対談本。とはいっても、水野さんは経済学者と言っても、歴史の造詣に深く、利子率革命からの歴史から見た経済学の著書が多い方なので、歴史の観点から見たら、人、経済システム、国家システムなどを絡めた対談となっている。
水野氏の主張は一貫しているので、出版された本を読めばよいと思うが、対談なので比較的わかりやすいと思った。しかし、本書を理解するために必要な前提条件となる知識が多いなあと改めて思った。 -
二人の対談集だが、水野氏については、「終わりなき危機」で非常に詳しく自分の主張を書いているので、主張そのものを知るにはそっちを読んだ方が良い。
というか、前著を読んでしまうとこの本を読む意義があんまり無い様な気もする。敢えていえば、分かり易くなった入門的な位置づけか。
資本主義がフロンティアを求める性質のものなので、フロンティアがもはや残っていない現代で行き詰るのは自明の理、という主張の流れには大いに納得。これから考えるべきは、経済成長ありきではない世界のありかたになっていくのだろう。