- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140885239
作品紹介・あらすじ
マルトリートメント(不適切な養育)が子どもの脳を"物理的"に傷つけ、学習欲の低下や非行、うつや統合失調症などの病を引き起こすことが明らかになった。脳研究に取り組む小児精神科医が、科学的見地から子どもの脳を解明し、傷つきから守る方途と、健全なこころの発達に不可欠である愛着形成の重要性を説く。
感想・レビュー・書評
-
「批評は現場から」
目下介護の仕事をしながら3人の子育てに勤しんでいる。
どちらにも共通するのは、「不適切なかかわり」が「虐待」につながるということだ。虐待というと大仰で自分は関係ないと思ってしまうのが人情だろう。そこで本書では「不適切なかかわり」を「マルトリートメント」と呼び、子供の脳に与える影響を検証していく。
著者である友田先生は自身も育児の経験があり、かつてしてしまったマルトリートメントの告白をしている。そりゃ完璧な親なんて居ないだろう。
そんな人からの言葉だからこそ親の心に届くのではなかろうか。安全圏から放たれた理想論は響かないのでね。
マルトリートメントを受けた子供の脳は器質的に変化してしまう。受けた刺激を減じるため脳の一部が萎縮したり、あるいは過敏に危機を回避するため肥大化したりするらしい。
自分も親からマルトリートメントを受けてきた。「虐待は連鎖する」と言うが、本書を読んで経験を俯瞰できれば、その連鎖を断ち切ることができるのではないかと思った。不出来な親だから叱ってしまうことも多々あるが、子供の自己肯定感を育むためにも、せめて自分のマルトリートメントに自覚的になって改めて行きたいと思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
虐待を受けたら脳にどのような影響が出るのか?
筆者はVBM法という脳皮質の容積を解析し、過去に虐待を受けたことのあるグループと、何もなかったグループとで比較する。そのデータを挙げながらいかに虐待が子供の脳にダメージを与えているかを示している。
また、より広義に捉えるためにここでは虐待とは呼ばず、マルトリートメント(不適切な養育)をいう言葉を用いている。物理的なマルトリートメントよりも言葉によるマルトリートメントの方が脳によりダメージを与えるなど、直感とは違う結果になっているところにも注目。また、傷ついた脳にも回復力があるということにも触れており、適切に対応していくことが求められる。
みんながみんな幸せな人生を送れればいいのだけど...個人、親子レベルの問題から、国、世界レベルの問題まで終わりのない戦いが続く。人間はそんな中でも少しでも良くしようと考え、行動し続けることが大事なんだろうな...と思いました。 -
新聞の土曜版でも取り上げられていた医師による著作。
掲載された記事は、取って置いているけれど、読むたびに胸がひどく痛んで、先を読み進むのが困難だった。
どんな親であっても、子供を傷つけてしまうことはあるだろう。
親自身の余裕のなさから生まれるマルトリートメントは、決して人ごとではない。
私は悪い親だ。
叩いたこともあるし、暴言を吐いたこともある。
いや。
どうか、責めないで、もっと、もっと、もっと私は。
それは、私に過剰な負担がかかっていたせいだ。
周囲の「頑張って」や、見知らぬ高齢者から吐かれる「かわいそう」や「ちゃんと見ていなさい」が、いつも私を追い詰める。
難しい子どもを二人も抱えて、仕事をして、家事もする。
もっと頑張りたいのに、時短勤務を取らざるを得ない。
それが周回遅れにも思えるし、迷惑をかけているという気持ちにもなる。
職場の人はとても理解があるのに、だ。
そんなの言い訳でしょ、お前がやっているのは虐待だ。
そうだ、そうだ、そうだ、だから、だから、私はそうなりたくなかった。
自分が心から望んだ子どもを、愛しているこの子達を、どうやったら傷つけないか、私は救いを求めた。
きつかった。
針のむしろだった。
でも、これだけは、なんとか受け取った。
182頁、「積極的に使いたい三つのコミュニケーション」
①繰り返す
②行動を言葉にする
③具体的に褒める
逆にダメなのが
①命令や指示
②不必要な質問
③禁止や否定的な表現
である。
とても難しい。
でも、もう少しだけ頑張れば、きっと、打開策があるはずだ。
助けは決して十分あるとは言えない。
孤独だし、成果もすぐには出ないし、褒められもしない。
でも、でも、でも、もしかしたら、明日は少しかわれているかもしれない。
せめて、今日はあの子達を抱きしめて眠ろう。
いつも、「ママはダメじゃないよ」と言ってくれるあの子たちのために。 -
親になる前に読んでおきたい1冊。
子供は先天的な障害(自閉症やADHD)をもつこともあるが、後天的な障害をもつことも多く、それはたいてい親によるマルトリートメント(強者の大人による弱者の子供への虐待、威嚇、罵倒、無視、放っておく等)によって引き起こされる。本書はその部分にスポットを当てて論じる。
特に子供の前での夫婦喧嘩は子供の脳をかなり萎縮させる行為だそうで、気をつけなければならないと感じた。 -
新聞で目にして気になった本。
親の不適切な養育(マルトリートメント)により子どもの脳が変形してしまうという話。
脳科学的にも、データが出てしまっているのね。
虐待とまではいかずとも、子どもに対して、よくないこと言っちゃったなとかしちゃったなっていうことは誰しもあると思う。そして、それが子どもに及ぼす影響が大きいということをみんなもっとちゃんと知った方がいい。
本書を読んで大きく感じたことが二つ。
一つは、やっぱり日本って研究データが少ないなあということ。教育に関しても思うけど、生身のデータよりも大人たちの経験で語られることの方が多い。いやいや経験より、データくれよ。その点で、この本はいろいろなデータを示してくれているし、そういう視点から子どもたちを救おうとしているところにとても意義深さを感じました。
もう一つは、自分も子ども(6か月)がいるのですが、知らず知らずのうちにマルトリートメントしてるのではとヒヤリとしました。ちょっとの間だけと思って、子どもが泣いてても待ってとか言っちゃったり、子どもの前で旦那に文句言ったり……虐待とまではいかなくても、子どもの脳に悪影響を与えかねない行為をすることのないように気を付けようと思いました。とりあえず旦那と子どもの前ではケンカしないようにしようと約束しました。
傷つきやすい子どもの脳ではありますが、適切なケアを行えば修復もしやすいということで、その点には希望が見いだせる一冊でした。 -
子どもの対する不適切な養育(育て方や接し方)が子どもの脳を傷つけ、学習意欲の低下や非行、うつなどの精神疾患を引き起こすことが、最近の(というか長年のかも?)研究からわかってきたとのこと。
以前からも同様のことは言われていましたがそれは、身体的な虐待やネグレクトのみをさしているようなイメージがありましたが、親が自覚しない精神的・心理的な虐待でも同様もしくはそれ以上の傷つけ方をしているかも・・・ということが書かれてあり、真っ青になりました。
親が自覚しづらい虐待・・・というか不適切な養育にはこんなものも含まれるとのこと。思い当たる方もいるのではないでしょうか。私はあります。だから青くなりました。
・子どもの失敗を頭ごなしにしかりつける。
・「ぐっずり眠っているから」と下の子を寝かせたまま、下の子を一人にして上の子の幼稚園のお迎えに行く。
・子どもの前で夫婦げんか
・上の子と下の子の勉強やスポーツの出来などを比較する。
・できなかったテストの点を本人の前で他人に話す(本人の尊厳を傷つける行為となるそう)。
こういう話が出てくると気になるのが、
・どんな行為が不適切な養育(著書ではこれを「マルトリートメント」と言っています)にあたるのか
・子どもに対するそのような行為が子どもの脳に与える影響がいかほどのものか
・子どもが受けた脳の傷は治るのか。治し方は。年齢を重ねるごとに難しくなるのか。まだ間に合うのか。
といったところでしょうか。
本書にはそれらの答えとさまざまなヒントが書かれています。
そして最後にちらっと触れてありましたが、ケアの必要があるのは子どもだけではなく、親に対するケアの必要性についても書かれています。こういう本は、親側から見るとつい「自分が責められている」という感覚になりがちですが、そんな心配はしないで一度手に取っていただけるといいと思います。
私も読了後、大いに反省。 -
どうしたら、親になる方に知って貰えるのかなぁ
先ずは、ゆとりある生活が出来る社会が必要。色々なところから手が差し出されるような、、、
NHK出版のPR
脳が損傷するという衝撃の事実
不適切なかかわりが、子どもの脳を変形させる脳科学が明らかにした驚くべき事実
「子どもの前での夫婦喧嘩」、「心ない言葉」、「スマホ・ネグレクト」に「きょうだい間の差別」──。
マルトリートメント(不適切な養育)が子どもの脳を「物理的」に傷つけ、学習欲の低下や非行、うつや統合失調症などの病を引き起こすことが明らかになった。脳研究に取り組む小児精神科医が、科学的見地から子どもの脳を解明し、傷つきから守る方途と、健全なこころの発達に不可欠である愛着形成の重要性を説く。 -
子どもに対する不適切な関わり方が、子どもの脳そのものを変えてしまうという事実に衝撃を受けた。子どもへの不適切な関わりといえば「虐待」というキーワードがまず浮かぶが、本書では、より広い概念として「マルトリートメント」という言葉が使われている。このマルトリートメントには、言葉による脅し、威嚇、罵倒、あるいは無視する、放っておくなどの行為のほか、子どもの前で繰り広げられる激しい夫婦げんかも含まれている。本書では、それらの行為が行われたときに、子どもの脳にどのような影響があるのかを明らかにするとともに、そういったマルトリートメントを受けた子ども、そして加害者側である大人に対してどのような対処や療法が必要なのかが具体例とともに紹介されている。子どもたちを助けるとともに、親(をはじめとする養育者)を助けることが重要であるという著者の意見に強く賛成したい。
-
時折、親になることを「資格制」にするべきだと思うことがあります。
子供の虐待に関するニュースを聞くたび思います。
野球やサッカーが「能力制」であるのに、
なぜ「親の能力」も、「親になること」を
できる、できないで分けることはできないかと。
多くの善良な人は知っています。
世の中には、どうしようもないクズがいること。
一定数は反社会性のパーソナリティを持っていること。
また暴力をするのが快楽と感じる輩もいること。
こういう者が果たして親になる資格があるのか。
子供を真夏の車中に置いて、パチンコ、スロットにふける「親」
夜中の10過ぎても居酒屋で、子供の前でプカプカとタバコを吸う「親」
果たして、「親の資格」があるのかと思います。
また私達は、そういう善良ではない人の少なくない人が、
プログラムや教育では、改善できないことも知っています。
※性犯罪の再犯率を見れば、すぐにわかります。
また、監獄内での、囚人達が話す内容が到底更生しているとは思えない主旨の、
資料は、腐るほどあります。
虐待された子どもの、成人以後の精神疾患に罹る比率は、
そうでない子に比べて明らかに高い。
一生苦しむことになります。
日本は、今、親になることができる人と、そうではない人が
はっきり分かれていっているような気がします。
相当、不謹慎であることは重々承知の上で言いますが、
年々増える、虐待件数を防止する上で、「親の資格性」導入は、
最も合理的なように思います。 -
お盆休暇、2冊目。やっぱり子育てをやり直したくなりました。マルトリートメント(不適切な養育)、私の子育ての中にも何度もあったと思います。自分でもエッというほどきつい言い方をしていたことがあります。特に小学校高学年から中学生の間。勉強を見ている中でです。仕事なら抑えることができますが、我が子となると我慢がきかない。アンガーマネジメントがなってない。自分はそんな風に育てられなかったのに。我慢のできる子になってほしいなんて理由をつけて、泣いているのをかなりの時間放っておいたこともあります。子育てにはふつう以上にかかわったのに、それがかえって良くなかったのか。自己肯定感のかなり低い人間に育ってしまいました。脳のどこかに傷があるやも知れません。いまからでも修復できるのではと、いろいろほめられるところを探すのですが、見つからない。子どもたちももうすぐ成人。いい人間関係を築いていきたいものです。