寝た犬を起こすな (ハヤカワ・ミステリ1919)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (473ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150019198

作品紹介・あらすじ

〈リーバス警部シリーズ〉女子学生が起こした不自然な衝突事故を追うリーバス。だが彼女は頑として口を閉ざす。事故の影に何かがあるのか? いっぽう過去に隠蔽された事件を追求する内部調査班のフォックスが、リーバスの身辺に迫る。二人の一匹オオカミが激突する

感想・レビュー・書評

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  • 女子学生が運転する車が起こした衝突事故。現場の不自然な状況に気づいたリーバスは、同乗者がいたことを突き止める。だが、当の女子学生は事故の状況について、頑とした口を開かない。事故の裏に、何かが潜んでいるようだが…いっぽう、組織改編で犯罪捜査部に送られることになったフォックスは、内部調査の最後の仕事としてリーバズが若き日に所属した署で起きた、隠蔽された事件の痕跡を追及する。彼の捜査は、リーバスの身におよぶのか?独立の是非に揺れるスコットランドで展開する。

    シリーズ第19作。ゆったりとしたテンポで物語は進行する。フォックス警部のシリーズはまだ読んでいないが、そろそろ読もうと思う。

  • フォックスのキャラがなんか定まらない。

  •  スコットランドを舞台にしたこのシリーズは四半世紀前から書き継がれたものとなるが、ぼくがジョン・リーバス警部シリーズに出会ったのはここ一二年である。最近はハヤカワ・ポケミスを軸に、海外の小説を読むようにしている。何より翻訳が早いのと、受賞作や話題作や鉄板シリーズ作を中心に出版してくれる、実に安心できる版元だからだ。

     ちなみに、ぼくがパソコン通信NIFty Serveの冒険小説フォーラムに入る少し前、早川書房ではロバート・B・パーカーを招き、その社屋にてぼくの前々SYSOP小城則子さん中心にフォーラムの有志が作家と出会い、挨拶をし、愛読書にサインをもらうなんて活動をやっていた。ぼくがSYSOPを引き継いでからも早川書房ではエド・マクベイン来日の折りに同じ機会を与えてくれた。ぼくは当時、新刊だった『ララバイ』と『ダウンタウン』にサインを頂き、マクベインその人の隣に座って片言の会話をして握手を交わさせて頂いたものだ。

     海外ミステリの読者は読書界全般から見ればとても少数の範疇に属する者だとは思う。しかし、そうした少数ながらも根強いシリーズ読者へのサービスを怠らず、個性を守り続けている早川書房のような出版社の存在を常日頃有難く感じている。ましてや、本シリーズのように新しい一冊を手に取ったところからそのシリーズ主人公に惚れ込んでしまう、ぼくのように反応の遅い読者もいるわけで、地道にシリーズを続けてくれる姿勢にもまた感謝。四半世紀も続いているシリーズとなると、当然、最初から読み始めた読者ばかりではなく、途中から参加する人、作者の死後にシリーズに取りかかる人だっているわけで、それはそれで、時代と作品のずれ、それぞれの人生のどこで作品と出会ったか、などなどの要因こそが、読書に独特の風味や出会いの妙というものを加えてくれるものではないだろうか。

     さて、閑話休題。前作『他人の墓の中に立ち』では敵対関係にあった内務調査官のマルコム・フォックスについてだが、実はそれに続いて『偽りの果実』に取り組むまで、彼が別シリーズの主人公になっていることをぼくは知らなかった。遅い読者の損なところだ。本作では、何とフォックスは内務調査(刑事が刑事の違法行為を取り調べる部署で、作品内では苦情課となっている)を離れることになるが、その最後の仕事として、三十年前の今はなきサマホール警察署での殺人事件の真相を調べることになり、そこに途中から在籍していたリーバスと組んで当時の刑事メンバーたちの不正に協力して当たることになるというのは本書の軸となるストーリーである。サマホール警察のチームたちの間では、当時、少々荒っぽいことをしてでも捜査を進めるのが当たり前とされていたらしく、彼らはいくつもの秘密を抱え込んでいるように見えた。彼らは自分たちを<裏バイブルの聖人たち>と呼び今は年齢を重ねそれぞれに刑事職からは引退したり転職したり死んでいたりする。<裏バイブルの聖人たち>は、実はそのまま本書の原題となっている。

     英国からのスコットランド独立の是非を問う投票が行われるという時代背景のもと、スコットランド特有の歴史に触れつつ、作者はリーバスとフォックスと女性捜査官シボーン・クラークのトライアングル捜査陣がそれぞれに活躍してゆく姿を捜査模様を通して活写する。人間性をもかなり掘り下げながら、捜査手法の個性を明確にして、時にはぶつかり合い、時には離れ去り、その駆け引きや徐々に深まってゆく信頼やリスペクトといったデリカシーな心理描写もまた味わい深い。

     捜査は進むが、あくまで内容は刑事ジョン・リーバスの生きざまが魅力的であり、古くからのハードボイルド読者の心をくすぐる。いくつもの事件と取り組みながら、徐々にすべてがある方向に収束し、そして都会の持つ光と影の中で、またスコットランドと英国との関係が再編成される中で、それぞれの人生が変化を遂げつつ、物語が進んでゆく様は、読者にとってたまらなくドラマティックである。

     定年を迎え警察に再就職したが所属部署の上司と間でいざこざが絶えないリーバス。かつての上司リーバスより上の立場に入れ替わりながらも信頼関係は揺るぎもない優しきシボーン。慣れぬ犯罪捜査課に異動を命じられながらも切れ味のあるフォックス。それぞれの性格と立場を移ろわせながら、シリーズは次の展開を待ってゆく。これぞシリーズ・ミステリの醍醐味である。三人の男と女の次なる活躍に乞う、ご期待!

  • 海外ミステリベスト10の類で何度か見かけたことのあるイアン・ランキン。
    何となく敬遠していたが、初めて読んでみた。
    意外や意外自分好みのスタイル。

    シリーズものが進んでくると型ができてしまい、何が悪いというわけではないのだが、それまで積み上げてきたものに頼り、手抜き感を覚えさせられてしまうものだが、全然そんなことはなかった。

    この作数にして過去の自分の周辺の所業をほじくり返すというもっと早くに立ち向かっても良さそうな題材を使い、リーバスの昔気質な本物の警察官の姿を絶妙に描き上げた一作。

    シリーズ最初から読んでみたいと思った。

  • 189ページ(全470ページ)で図書館返却のため中断。結末が気になる。A HAYAKAKAWA POCKET

  • 2017年11月17日図書館から借り出し。12月2日読了。読むのに疲れた。前半三分の一程度はだるくて投げ出しそうになるし、翻訳がいまひとつなので、面白味が薄くなる。特にセリフ部分の訳し方の不統一、雰囲気のなさは、この手の小説の翻訳としては厳しい。編集者のチェックは入っていなかったのかと思える。イアン・ランキンとしては平均値に達していないかも。

  • 今回のリーバスはなかなかいい。自分の警察内での立場や年齢に不愉快な思いをしながらも、自分にとって大切なことを守りつつ流せるものは流せるようになっているというか。今回は刑事を始めた頃に起きた事件の再捜査に関わる。過去の仲間をかばいたい気持ちと真相を知りたい気持ちで揺れている。警察が悪党とみなした人間に横暴に振る舞った時代が終わった事を認識しつつ、独自の規範の元に行動するリーバスの反骨心が表れたラストは爽快だ。

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