- Amazon.co.jp ・本 (379ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150102524
感想・レビュー・書評
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はるか遠い未来の話。人類の末裔たちの物語。星間を行き来できる世界で、外交関係を結ぶために、人類が極寒の星に使節を送り込む。その使節ゲイリー・アイが語る数奇な物語。
重厚な物語で、読み慣れない言葉もあり、読み進めるのに時間がかかった。
17章 オルゴレインの創世伝説
この辺りから、一気に読むスピードが上がり最後までたどり着いた。
1969年に発表されたと解説にあったが、多様性を受け入れる社会が描かれており、とても現代的だなぁとの印象を持った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
入り込みすぎて、読後こころが…持て余すほど重い…
ル=グインの描く未来世界、もうひとつ(?)の宇宙での話。
極寒の常冬の星に住む、両性具有(?)の人々と、そこに降り立った大使の物語。
ル=グインの作品の魅力は、何と言ってもその世界観の広さと重厚さだと思います。
ひとつの連続した宇宙の話を書きつつ、そこに存在する星々は多様で、われわれとは全く違う世界、文化、宗教、生態系で生きている。そんな世界を次々と描き出す作者に、畏れすら抱くほどです。
今回の作品も、ゲセンの世界が目前に迫るようでした。
当初は大使ゲンリーと共に、未知の世界に戸惑い、好奇心を感じ、緊張感を持って受け止めました。そしてクライマックス、男と女である「異星人」(ゲセンの人々から見て)に再会するときには、顔をあげればそこにいる人々であるにも関わらず、再度ゲンリーと共に驚き、当惑します。
あの長い作品を読むうち、私も彼とともにゲセンに暮らしていたような感覚がありました。
前半部、何もかも異なる星での暮らし、交渉、結末…そして、壮大な後半部に描かれる、文化や背景をすべて超えたふたりだけの真っ白な向き合いと、私の思うどの形とも違う「愛」
苦しくて愛おしくて、言葉になりません。
それでも、人のこころから生まれるのは、未知への好奇心、未来への希望。
ラストシーンに、彼の子に救われました。 -
69年に発表された、傑作SF。発表から40年以上を経た今でも色あせない。
ストーリーを単純にあらすじとして抽出するのなら、ほんの数行で終わってしまうだろう。だが、ル・グィンは物語ではなく、世界を書いている。我々の知る地球とは違う惑星を書き、そこに暮らす人々を書き、その精神性、文化、宗教を書いている。
「一気読み」できるような作品ではない。咀嚼し、反芻し、ようやっと少しずつ飲み込んでいくような作品。言い換えれば、その咀嚼・反芻に耐えるだけの豊かさと緻密さを持った作品。
最初は少しじれったくも感じるが、少し飲み込めてくると、まさに腑に落ちる。 -
今改めて見れば、表紙が絶妙。たった一人の使節としてやってくる主人公と雪の星に棲む両性具有の人類たちの交流。その特殊性から築かれた文化は主人公に戸惑いをもたらしながらもゆっくりと受け入れていく。物語の本筋に関わらないながらも挿入された逸話も異質な世界を更に引き立ててくれていました。
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性別のない惑星ゲセンという舞台設定がとにかく素晴らしい。詳細なゲセン人の生態や文化の描写にただただ圧倒される。
権謀術数渦巻く国家内外の争い、極寒の地での逃走劇、アイとエストラーベンの友情などツボを抑えた物語にもグイグイ引き込まれる。
セクシャリティーやジェンダーなどについて深く考えさせられる一冊。 -
まだ人類が宇宙へ出るすべを持たない惑星・ゲゼン。主人公は、極寒の惑星であるその地に、広大な宇宙を結ぶ人類の同盟・エクーメンの使節として、ひとり滞在している。ゲゼンに存在する国々の代表者に、同盟への門戸を開かせるための説得役として、彼らを刺激しないようにと、何の武装ももたず、たったひとりで。
その地に住む人々の体は、外見は主人公たちの種族とそれほど極端な違いはなかったが、ひとつ、大きな差異があった。彼らにはきまった性別がないのだ。およそひと月に一度、彼らはケメル期と呼ばれる時期を迎え、パートナーをそのつど獲得し、その期間だけ性別を得る。
ゲセン人は閉鎖的で、なかなか主人公の説得を容れようとしない。どうにかして彼らを説得しようと苦闘する中で、やがて主人公は彼らの政治的陰謀に利用され……
アーシュラ・K・ル・グウィン。(※この本ではグィンと表記してあります)ゲド戦記の作者さんです。
もともとはSF界で有名な方で、そのことは前から聞き知ってはいたのですけども、ようやく買って読んでみたのでした。もっと早く読めばよかった! むしろゲド戦記よりもこっちのほうが、個人的にはツボだったなあ。ゲド戦記もよかったですけども。
序盤には少しとっつきにくいような箇所もありましたが、読み進めていくうちにぐいぐい引き込まれました。両性具有の人類が、それゆえの独自の文化を持ち、習慣を持ち、神話を持っている。現実離れした異空間なんだけど、そこに感じられるたしかなリアリティー、異世界の手触り! こーいうの大好きだー!
本の後半は、主人公がゲセン人の青年・エストラーベンと二人、生き残る道を探るために、氷に閉ざされた地を決死の思いで行く道行。飢えと寒さにさいなまれる過酷な道程と、その中で生まれる異種族間の友情。序盤はどちらかというと淡々と進むんですが、一転してドラマチックな展開に。
人間ドラマもよかったんですけども、氷雪に閉ざされたその星には大型動物がいなくて、高カロリーな食料がないので、頻繁に食事を取るのだとか、雪の種類や状態を表す語が六十通り以上もあるだとか、そういう設定に猛烈にときめきます……-
>kumakuma10さま
コメントありがとうございます。
いいですよねー! このレビューを書いたあとでル=グウィンを追いかけ始めたので...>kumakuma10さま
コメントありがとうございます。
いいですよねー! このレビューを書いたあとでル=グウィンを追いかけ始めたのですが、いま読んだ範囲では、SFで「言の葉の樹」、ファンタジーで「西のはての年代記」が、グウィン女史の最高峰であると感じました。(一度ハマると同じ作家さんの本を読みあさる傾向があるのです……)いつかお気が向かれましたら、そちらもぜひぜひ。2012/06/30
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完璧すぎるが故に難解
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この不思議なタイトルの意味が回収された瞬間が個人的に最も興奮した気がする(?)後半は文句なく面白く、主人公ふたりの関係のこまやかな描かれ方がとってもよかった。
序盤はこの作品独特の設定や世界観についていくのに必死でなかなかストーリーに追いつけなかったので、また読み返したいと思う。2回目の方がいろいろと理解が進んで楽しそう。