- Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150119676
作品紹介・あらすじ
『アンドロ羊』関連短篇の表題作ほか、ディックの未来社会&政治テーマSF11篇を収録
感想・レビュー・書評
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不肖鴨、毎年春先はいつもディックを読んでいるような気がするヽ( ´ー`)ノ
数多あるディックの短編の中でも、政治/社会/宗教をテーマにした作品を集めた短編集・・・と、なかなか重たそうですが、実際に読んでみるとメッセージ性が明快な作品が多く、後期のディック作品にしては比較的わかりやすい印象です。
テーマの重さを中和するためか、ユーモラスで軽妙な筆致で描かれている作品が多いことも、特徴の一つ。実は守備範囲の広い”通俗”作家だったディックの一面が垣間見れます。登場人物がどいつもこいつも頭のネジが一本抜けている感じなのも、親近感アップに一役買ってますね。
しかし、ラストの一作、「時間飛行士へのささやかな贈物」、これは心底重い・・・。
重さの理由が、外的要因ではなく、ただひたすらに主人公の内的要因によるという救いようのなさが、また極めてディック的。生身のディック自身がリアルに感じていた、当時のアメリカ社会の閉塞感が反映されているのでしょうか。この重たさがねぇ、ディック作品を読み慣れると癖になっちゃうんですよねー。
ディックの短編集はまだまだたくさんありますので、少しづつ読み進めたいと思います。春先に。 -
2023/10/3再読
読み返してみて今回印象深いのは「聖なる争い」。
大統領の役割は情報分析し判断するコンピューターシステムが代替している。どうしてそのような判断が下されたかは人間側はわからない。敵が攻めてきているとの判断がくだされ一気に戦争状態になってしまうのを止めようとするFBI とコンピューターエンジニア。まるで現代の生成AIによる問題を予言しているかのようではないですか。この短編集にはある物をとんでもない物に代替させその存在価値を突き詰めて考えさせる作品が多く集められています。でもよく考えると今所属している社会にとっての価値であって、その社会そのものが正しいものかはわからないし保証もされていません。たまたま生まれたとろこの国であったり組織体での価値があるかないかなんてそんなに執着すべきものなのか?とも思えてきます。ディックの異常な思考から生み出された作品はこのような歪みを拡大して見せてくれます。価値や考え方の多様性をうたっておきながらある少数の考えにたやすく誘導されそれが大多数の考えであり、スタンダードだと思い込んでしまいがちな自分の傾向に楔を打ち込まれます。情報統制、思想統制は恐ろしいと思っていながら自らが進んで統制されてしまいがち。これにAIが生成する偽情報も加わって何が本物かわからない現代はまさにディック的悪夢が現実化した世界。恐ろしいではないですか。情報を鵜呑みにせず自分で検証できる思考力と想像力をつけていく事がこれからはますます大事だと痛感します。
2018/7/4
「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」の原型となった表題作。宗教的な話だったのか。でも、共感ボックスというガジェットを通じてしか他人と通じ合うことができないという、ある意味強烈な皮肉でまさに現代を描写していないか?人間がディックのいうアンドロイド化しているのか?そら恐ろしくなる短編集。 -
図書館で見つけたので借りて読了。
短編集なので比較的サクサク読めるかと思います。 -
フィリップ・K・ディック短篇傑作選第五弾。主に宗教や政治を扱った作品を収めたとのことだが、もちろんどのタイトルにもSF要素は満載。本書も多様な内容なのでそれぞれ好みがわかれるところ。個人的にイチオシは<輪廻の車>。カーストのような管理階級社会、来世がわかる機械、煩悩を捨てきれぬ聖職者、このあたりの設定がうまく調和して小気味良いまとまりになっている。<ジェイムズ・P・クロウ>はロボットが優勢種となり、人間がその奴隷となる未来社会が舞台。シンギュラリティによるAIの脅威が論じられる昨今、とても興味深く読めるテーマ。“ヒトがロボットなしで生きていた時代”に郷愁を感じるシーンが印象的。<時間飛行士へのささやかな贈物>はこみいった内容で少しわかりにくいが、タイムトラベルの悲哀というか切なさのような感情をうまく切り出している。表題作<小さな黒い箱>は「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」とセットで読みたい内容。
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『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』の原型作を含む11篇の、SF小説の短編集。
個人的には6作品目の『聖なる戦い』が一番面白くて怖かった。
SFとホラーは紙一重というのを体現しているような作品だったと思う。
全作品を通して、「よくこんな設定を思いつくなあ」という舞台設定でありながら、現実をよく反映していたり、未来に起こってしまうかもしれないと思わせたりしてくれるところが好きだった。 -
SFだけど、サスペンス的要素があって読者を飽きさせない。この短編集の中では「聖なる戦い」がベスト。
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