死者の代弁者[新訳版](下) (ハヤカワ文庫SF)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150120047

作品紹介・あらすじ

ルシタニア星の異類学者殺害から20年後、死者の代弁を依頼されたエンダーが星の海を越えてついに到着した。だが、彼を待ち望んでいた人間は誰一人いなかった。入植者たちはもちろん、最初の依頼者もエンダーの出発直後に依頼を取り消しており、最近の依頼者は彼の到着が20年後だと思っていたからだ。だがピギー族だけは、彼と窩巣女王の来訪を熱烈に歓迎する!『エンダーのゲーム』のその後の世界を壮大に描いた傑作巨篇。

感想・レビュー・書評

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  • ルシタニア星の秘密を解く鍵は、ジスコラダ病にあった。この破壊力抜群の病原体に対抗するため、いくつかの種は、異質な遺伝物質を結合させて植物と動物の共同生殖という形態を編み出した(それ以外の種は絶滅した)。ピギー族の場合は、母の木の中で母親の体を食べて成長する第一の生、木から這い出て森の中で動き回って生活する第二の生、そして地に根を張り太陽に向けて幹を伸ばす第三の生、の三段階の生を生きる道を選んだ。そして、ピギーによるピポやリボの惨殺は、ピギー族にしてみれば、第三の生に変態するための儀式だったのだ。

    本作のクライマックスは2つ。1つは、エンダーが代弁者としてマルカンの死について代弁する場面。姦通罪という辛い真実を暴露されながらも、慈愛に溢れる言葉が関係者全てに救済を与えていく。もう1つは、エンダーが人類代表としてピギー族と条約交渉に臨む場面。人類、ピギー、バガーの三者共存に向け揺るて交渉に臨むエンダーの姿には、聖者の風格が。何れのシーンも圧巻だった。

    本作は、「エンダーのゲーム」にて意図せずバガーを殲滅させてしまったエンダーの贖罪意識をベースとして描かれている。エンダーの、人類の罪を一身に背負ってしまった贖罪意識と全ての生命に対する慈愛の念が、固陋で狭量なルシタニアの人々の心を解かしていくところが本作の一番の魅力。確かに傑作だ。

  • しだいに謎が解けていき驚きの連続。異生物ピギー族との交流も目新しさの連続で面白い。さすがSFの大傑作!
    代弁のシーンはすごく惹きつけられたし感動した。

  • 「エンダーのゲーム」続編にして、前作同様ヒューゴー賞・ネビュラ賞受賞作品。今作はミステリー色が強く、上巻が出題編とすれば、下巻は解答編。エンダーが行う『代弁』はまさに犯人を暴く名探偵さながら。真実を知って愛と赦しを抱けるか。魂の救済をめぐる人間模様に引き込まれる。
    後半のピギー族との交渉は、言語やメンタリティの壁で四苦八苦する、ファーストコンタクトものの緊迫感がある。また生態学SF、時間遡行SFとしても面白い。
    全体的に宗教や倫理にからむ要素が強く、かなり考えさせられた。作者がモルモン教信者ということで、ちょっと興味もわいたし。斉藤由貴……。

  • やっぱり、面白かった。
    『エンダーのゲーム』読み返したくなった。
    買おうかな、このシリーズ。
    エンダーが大人になって、なんだか凄い人になってる。
    読み応えあったな。
    異星人と人間がどのように共存していくのかドキドキしながら読んだ。

  • 読みそびれていたのを補完計画で買ったのをやっと読了。『エンダー』の隣に並べたらサイズが違ってて(/ω\)イヤン

  • ヒューゴー・ネビュラ ダブルクラウンのれっきとしたSFだが、推理小説っぽい雰囲気もある。ルシタニア星の謎、ピギーの謎を鮮やかに解いていく代弁者の活躍は、ある意味推理小説における探偵の謎解きを思わせる。

  • SFである意味を見いだせない。これたぶんミステリか何かだし、1970年アメリカ片田舎での物語、とかで十分なのでは……

    メインテーマはたぶん贖罪と救済とかその類いのやつで、ほとんど宗教的な強迫観念にかられた人間の、心の動きを描いている。
    未だに宗教がひとの心の拠り所になっているという舞台設定がそもそも意味わからん。
    なんでこいつらこんな禁欲的に生きてるんだ、その説明が「宗教」「宗教」「宗教」でしかないの、本当に読者を納得させられると思ってるのか。

    「興奮するとスペイン語が出てしまう」とかいうよくわからん設定がありそういうシチュエーションが本当に頻繁に登場するが、
    作者はスペイン語がめっちゃ好きかなんかなのだろうか。前作から3000年後という舞台設定で
    スペイン語なんてものがそのまま残ってるの不自然でしかないし、SFっていうジャンルを名乗るのやめた方がずっとまともに読めたと思う。

    たぶん、作者が本当に書きたかったのはこっちの話でもともとSFでも何でもなかったのだが、
    「エンダー」が売れたから無理やり続編ってことにしたのだろうと邪推した。

    あと、代弁を聞いた者がエンダーの頭の良さを理解できてしまうのが気持ち悪い。
    作者は本当に頭のわるい人間というものと交わったことがないと見える。
    バカはバカだからバカなので、他人の頭の良さに気づくことなんか一生無い。
    あいかわらずなろう小説みたいなエンダーTUEEEE物語から抜け出せてない。

    ミステリ的な部分にだけ的を絞ればそれなりに面白いのに、
    SFとして紹介されているのでSFとして読まねばならず、それが悲しい作品。

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    ↑ここまでが中盤までの感想

    で、問題の後半である。
    畳み掛けが圧倒的だった。

    相変わらずSFである必要性をそれほど感じはしないのだが、宗教がどうとかいうダルい部分がなくなり、かわりにヒューマンというたぶんエンダーより頭のいいキャラが大活躍する。
    こいつがいいキャラすぎて、前半のつまらなさを一気に吹き飛ばしてしまった感がある。特に契約のくだりは圧巻であった。素晴らしい。
    ものすごく好みの作品とはいえないが、間違いなく名作ではあると言わざるをえない。くやしいけど。くやしいけど。

  • 前作で意図せずして異星人の皆殺しをしてしまったエンダーは、贖罪の旅をしながら死者の代弁者となる。事件後3000年を経過しすでに伝説の人となっているが、星間移動の影響で実年齢は35歳。死者の代弁者として呼ばれた先の惑星で、彼は先住者である知的生命体とどのように対峙するのか。
    前作『エンダーのゲーム』よりこちらの方がおもしろいです。
    愛する人を守るために倫理的な是非を超えあらゆる手を尽くすが、それは結局かなわずに死んでしまう。エンダーが死者の代弁をすることにより、隠されていた多くのことが明らかになり、それが最終的には生者にカタルシスをもたらす。エンダーは単なる死者の代弁者以上の役割を果たすことになるのだが、それは本人も望むところであった。
    人間ではない知的生命体とのやりとりというのはSF小説にはよくある話ですが、自分とは違う価値観や在り方を相互に尊重しつつ受容するということの難しさを踏み込んで描いているという点では、単なるSF小説にとどまるものではないでしょう。ヒューゴー賞・ネビュラ賞を両方受賞しているのも納得です。

  • これは心の救済の話。子供らしい幼少期を過ごせなかった人たちにとっては特別迫るものがあると思います。誰にもいいたくない!というのは誰もわかってくれるはずがないと思うからなんだよね。この人はわかってくれる!そんな人が突然現れたら…。本当に読んでよかった。

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