- Amazon.co.jp ・本 (305ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150303228
作品紹介・あらすじ
生まれてから一度も、怒ったり喜んだり悲しんだりしたことのない少年、本海宥現。家族との感情の絆を持たない宥現は発砲事件にをきっかけとして、砂漠の旅に出た。砂漠には、街に住むことを拒絶する人々、旅賊がいる。夜の砂漠で、火を囲み、ギターをかき鳴らし、踊る旅賊の中に、運命の女・魔姫がいた。だが、突如、砂の中から現われた、戦車のような巨大なマシーンが、宥現と魔姫の間を非情にも切り裂く。それは、すべてのものを破壊しつくす過去からの殺戮者だった…。未来と過去の争闘に巻き込まれていった少年・宥現を描く本格SF。
感想・レビュー・書評
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感情が生じさせた涙は
時間を封じ込んだ水球
個人的には表題作「完璧な涙」で完結している詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
巽孝之が解説で絶賛している。実際、おもしろかった。生まれてから一度も怒ったり喜んだり悲しんだりしたことがない人間が主人公なので、そういう「精神異常児」を主人公にした神林作品でしばしば経験したように、なんとも言えないもどかしい思いをすることになるのではないかと心配したが、全然そんなことはなかった。
収録作品:「完璧な涙」、「墓から墓へ」、「奇眼」、「感情軸線」 -
時間の軸が感情で空間の軸が五感。この方の想像力は本当に途方も無いな。おもしろかった。多分理解してはいないけど、気分としてはわかるような気がするしやっぱりおもしろかった。で、感情のない主人公とそれを殺すために追い続ける戦車の姿はやはり命懸けの恋に見えるところが神林作品の素晴らしさですなぁ…などと。(戦闘妖精・雪風の零と雪風の関係に近いソレ。<完璧な涙>は戦闘機械側どころか人間側にも感情がないにも関わらず!)
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~た。~た。~た。で終わる文面は
この物語が純然たる事実であるような
厳然たるリアリティを抱かせる。
感情を持たない男と
無自覚に死を超越した女、
殺戮を徹底的に追求した戦車。
砂上の楼閣のような世界で
男は生を求め、
魔姫を求め、
感情を求め、
時間軸と感情軸を絡め込んだ
スケールの大きな追いかけっこ。 -
思考機械を書かせたらこの人の右に出る人はいないだろう。その描写の中でも、この作品の”それ”は飛びぬけている。
その他の部分は、はっきりいって自分には理解不能である。作品世界の構造をつかむことができなかった。そういうところが、この人の作品の難しいところだと思う。 -
久々に神林長平を読んだ。
『墓から墓へ』が非常に印象的だった。 -
人工知能を持った兵器と人間を軸にしたSF。これは面白い。量子的展開。
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戦車が思考するとこの描写はよかった