マルドゥック・ヴェロシティ 1 (ハヤカワ文庫 JA ウ 1-4)
- 早川書房 (2006年11月8日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (345ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150308698
作品紹介・あらすじ
戦地において友軍への誤爆という罪を犯した男-ディムズデイル=ボイルド。肉体改造のため軍研究所に収容された彼は、約束の地への墜落のビジョンに苛まれていた。そんなボイルドを救済したのは、知能を持つ万能兵器にして、無垢の良心たるネズミ・ウフコックだった。だが、やがて戦争は終結、彼らを"廃棄"するための部隊が研究所に迫っていた…『マルドゥック・スクランブル』以前を描く、虚無と良心の訣別の物語。
感想・レビュー・書評
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バロットに出会う前のウフコックとボイルド、Dr.イースターのお話。
戦争により四肢欠損や眼球を失うなど再起不能なまでの肉体損傷を負った兵士たち。肉体改造により失った以上の特性(力)を得た彼らは、終戦後危うく廃棄処分されそうになる。
なんとか廃棄を免れた彼らに与えられた選択は、この先の一生を研究所(楽園)で過ごすか、マルドゥック市で有用性を示すべく任務につくか。
スクランブルよりも生身の肉体✖兵器という人体改造を経たレンジャーが続出してよりバトル漫画のような展開に。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
マルドゥックシリーズの世界感が超大好き(笑)
スクランブルでは、ひゃ〜危険!恐い!やだ!って思ってたボイルドの背景を知ると切なくなる。
ああ〜、なんだよ、楽しい時と終焉の時…。
ボイルドにも感情移入してしまうのです。 -
『マルドゥック・スクランブル』以前のボイルドの物語。
自分の中の破壊や殺戮への衝動、狂気を薄氷一枚の危さで誤魔化してウフコックとコンビを組んでいる姿は痛々しい。
スクランブル時点よりも登場人物が青くて若くて新鮮な感じで読める。
ウフコックが可愛いよ。 -
「マルドゥック・スクランブル」売れたからスピンオフかよ!
みたいな気持ちで読み始めたら、とんでもなかった。
すごい。これはすごい。
「スクランブル」のおまけなんかじゃない。
むしろ「スクランブル」との整合性は無視してでも語られる
凄惨で鮮烈でひどくセンチメンタルな黙示録。
やばい。これはやばい。
ほぼ全員が新キャラなので、
スクランブルで予習する意味はあんま無いです。
思い立ったら読むべき本。 -
ボイルドとウフコックが相棒だった頃の話。こうやって09法案ができていったのかと思いながら読んでいた。文章に圧倒されながら読む感じがとても楽しい。
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著者:冲方丁(1977-、各務原市、小説家)
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マルドゥック・ヴェロシティ〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)
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古書購入
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『マルドゥック・スクランブル』の前日譚となる、ボイルドとウフコックの決別までを描く物語。
全巻では、強大な敵として登場し、バロットとウフコックを追い詰めたボイルド。元々、ボイルドとウフコックはパートナーだったみたいですが、二人の過去はあまり深く描かれませんでした。
人体実験によって特殊な能力と身体を手に入れたボイルド。兵器としてこの世に生み出された知能を持ったネズミのウフコック。二人は研究所に所属していましたが、その研究所は戦争の終結によって閉鎖。兵器や戦争のための技術が白い目で見られ始める中、二人はほかの収容者たちとともに処分の危機にさらされます。
こうして読んでいると、ウフコックが『マルドゥック・スクランブル』で自身の有用性について何度も言及していたのにも納得できます。
兵器として生まれたものの、その後、人間の一方的な都合で、処分の危機にさらされたウフコック。だからこそ、彼は生き残るためには、自分の有用性を証明し続けるしかないと考えていたのだと思います。
ただ、このウフコック。全巻より若いためか、まだ人間関係に疎いところもあって、ボイルドを信頼しきっていたり、他の収容者たちのジョークに戸惑ったり、ウフコックのことを知らない人の前に現れて、相手に奇異な目を向けられると落ち込んだり、となかなか可愛らしいところも。
前回では、バロットのことを優しく見守るお父さんでもあり、そして戦いの場では頼れる司令塔でもあり、そして最高の相棒だっただけに、そのギャップはなんだか新鮮でもありました。
そして、ボイルド。戦地において自軍に誤爆をしてしまい、罪の意識や虚無の思いを抱えています。しかし一方で、爆弾を落とした時に感じた、絶頂感を懐かしく感じてしまっているところも見受けられます。
=や――を使い、感情を挟まず、見たまま、感じたままをメモのように書き連ねる文体も、虚無に侵されたボイルドの心情と非常によくあっているように思います。
一巻の中盤以降は、アクションシーンも多数あって読み応えあり! 他の登場人物たちも一癖も、二癖もあり、彼らの活躍も抜群の読み応えです!
新天地に移り活躍を続ける二人に、徐々に迫ってくる巨大な事件と、その裏に潜む闇。二人の結末はわかっていますが、それでも先が気になるのは、さすが沖方さんだと感じます。