- Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150309046
感想・レビュー・書評
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邪馬台国の卑弥呼の時代に現れた謎の地球外生命体。それらと2300年後の未来から来た使者が共に戦う時間遡行SF。
しかしながら、”邪馬台国の卑弥呼”というのは、どうも腑に落ちないですね。おそらく、『渡部昇一の少年日本史』に書かれている事が、真実かなと思うのですが…
以下、『渡部昇一の少年日本史』P19抜粋-
(前略)
邪馬台の「台」は「と」と読めますから、「やまと」に「邪馬台」という漢字を当てて書いたのでしょう。しかも相手には野蛮国という先入観がありますから、「邪」という悪い漢字を使っているわけです。
そこの支配者は卑弥呼という女王であるというのも、どこかで耳にしたことなのでしょう。日本人から見れば卑弥呼は「日の御子(みこ)」です。日本人は昔から天皇のことを日の御子と呼んでいたのです。だから卑弥呼とは天皇のことなのではないでしょうか。
(中略)
しかし「魏志倭人伝」の作者は野蛮人の国の日の御子だから「卑」という字を使って卑弥呼としたのでしょう。
(後略)
以上、抜粋終わり-
結局、白髪三千丈の国の言う事なので、嘘偽りが混ざっているのは仕方ないところ(李白は好きなので、誤解なきよう)。ちなみに本作の著者は、作中で畿内説をベースに本作を書いています。前置きが長くなりましたが『時砂の王』のあらすじと感想。
巨大で不気味な物の怪に襲われた邪馬台国の女王・卑弥呼は、”使いの王”を名乗る者によって救われました。彼は、地球壊滅から62年後の2598年、海王星の衛星トリトンで目覚めた、強健な身体を与えられた人型人工知性体。敵対する謎の増殖型戦闘機械群を追って絶望的な時間遡行戦を行う中、西暦248年の邪馬台国に降り立たったのでした。彼は卑弥呼と協力し、その時代の人々を巻き込んで人類存亡をかけた最終決戦が始まります。
多分岐する時間枝を遡って戦い、時に第二次世界大戦、時に猿人の時代まで遡ったりと、タイムパラドックスもなんのその。ただ「地球人類の生存に奉仕する」という第一任務の遂行のために敵との戦闘に明け暮れます。そんな自分たちの行動が、後の時間枝にどのような影響がでるかを、当人たちでもわからなくなっているのがなんともメチャクチャで可笑しかった。あとは、時間遡行した先の大戦時の人類が、利権や愛憎などで協力し合えないという構図が、人類の特徴をよく現しており、卑弥呼の時代の人々が、ロクな武器もないのに団結して戦う姿がとても印象的で良かったです。そのあたりが、”使いの者”のセリフ(P255)に表れていて、感慨深いエンディングにも繋がっていたのだなと思いました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
久々につくりもので泣きそうになっちゃったよ 深夜テンションのしわざです 小川一水はコロロギ岳に続き2冊目、時間遡行ものの人という認識だけどやはり上手いな〜と思いました
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初小川一水。ずっと積んでいたがこの度読了。
250頁ちょっとの中にいろいろな要素が盛り込まれているが、キレイにまとめられている。
今年に入ってから三体三部作を読んでバチバチにSFにハマった身としては(前々からSFに興味はあったのでネット上で「おすすめのSF」と調べれば名が挙がるこの本を買ったのはそれよりずっと前だったが)、もう少し詳細な描写で長~く読んでいたかったが、これはこれでサクッと読めて非常に面白かった。
小川一水の大長編「天冥の標」も読みたくなった。 -
タイムトラベル×卑弥呼という舞台設定だけでも好奇心をくすぐられるSF。更にこの舞台設定に時空を超える愛が練り込まれてる。時間軍の設定も構成も工夫されているし、邪馬台国の民衆と「物の怪」の戦闘もなかなか面白かった。もっと細かく書こうと思えばいくらでもできそうなところをスッと終わる潔さ。
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アレクサンドルは凍結から目覚めたのか。釈然としない?知性対サンドロコットスのサブユニット
因果効果、時間枝、ハイブリッド、カッティサーク 奪われた人類の
釈然としない部分はあるけど数万年単位の大きな人類の戦い、壮大だった。時間遡及し歴史改変した時間枝がパラドックスで消えるのでなく「滅亡する」という選択肢が絶望的。 -
邪馬台国の王室を抜け出した彌与こと卑弥呼と幹。山中で出会ったのは、片腕が鋭い鎌になった、熊ほどの巨大な生物だった。隣国から逃げ惑う民衆とともに、怪物に立ち向かう王ことO。Oは実は26世紀から怪物ETを倒し、その時間軸の中で人類を守るために派遣されたメッセンジャーと呼ばれる人間兵器だった…。
卑弥呼の時代に人類を滅ぼす宇宙からの知的生命体が飛来するが、無限にある時間軸の中で人類が滅亡しないように守る時間跳躍者たちという設定はよく考えられていると思う。卑弥呼の時代、第二次大戦、また10万年前という人類(日本?)の転機を題材にするというアイデアは良い。
また、過去の時代への過剰なまでの干渉と、史実とはまた異なる様々な事件など、SFとして読める部分が多い作品であり、第二次大戦時に共通の敵がいるにも関わらず国同士でいがみ合うというシミュレーションは面白かった。そこだけ引っ張れば良いと思ったのだが。
一方で、卑弥呼の部分を頑張りたかったのはわからぬではないが、中途半端に古典語を使おうとしすぎて、少々どころか多少読みにくい。「兵」は「へい」で良いと思うのだが、必死に「つわもの」と読ませようとしたり、漢文的に当て字をしたりするため、何が何をしたのか、筆者の独りよがりで読者に理解させようとしていないと感じる部分が多かった。
なぜか奈良から秩父へ移動してピンチに陥る邪馬台国軍なのだが、描写がうわついていて「うさぎ」はボーパルバニーと言いたいんだろうな的なことは、読者が先回りして理解してあげないと行けないのは、かなり困る。
かと言って難しいわけではなく、描かれていることは非常に浅いし、言葉がわからなくても知ったかぶりで読めるという話でもある。
中二的な言葉選びというところなのだろう。大人にはちょっと…というところ。
また、宇宙を渡って地球まで来た上、太陽光をエネルギーに種族を増やして時間の跳躍もできる敵が、鉄も持ってなければゴムも知らないというのも不思議だなあ。 -
未来の人型人口知生体と卑弥呼、敵は古代神話に出てくるような物の怪。
この取り合わせが、作者の発明。
きわめて“ひと”に近い人口知生体が、二度と自分の過ごした時代には戻れない宿命を帯びて、人類の滅亡を救うべく、歴史をさかのぼる。
時間SFとしては定石のストーリーであるが、滅亡させようとする勢力の理由と、滅亡してしまう理由が、現代の我々への警鐘であることにポイントがある。
敵である「増殖型戦闘機械」群との戦闘がその時代ごとに違ってきて、ついに決戦となった邪馬台国の地の戦いの描写はとても迫力があった。
短いページ数のなかで、壮大なスケールを感じることができた。 -
重厚なSF読みすぎてちょっと浅く感じた。おもろかったけどね。