猫舌男爵 (ハヤカワ文庫 JA ミ 6-5)

著者 :
  • 早川書房
3.65
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本棚登録 : 456
感想 : 40
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150311759

感想・レビュー・書評

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  • 皆川作品に触れるのはこれが初めてだが、おそろしく濃厚で上質な短編集を読んだという感じ。

  • 表題作があって、解説がそうなら
    各作品のなかで現れる現実と幻想の境は
    この本を読みおわった時点で、さらにあいまいで
    ふとした瞬間にグニャリと歪んでしまいかねない。

  • 「水葬楽」「猫舌男爵」「オムレツ少年の儀式」「睡蓮」「太陽馬」を収録。
    講談社からハヤカワ文庫へ。ただのいつものトールサイズなのに、横書きの目次とローマ字表記が不思議と瀟洒。それとカバーイラストも。

    講談社版の刊行年と中身からして、著者が思う存分自由に書く(書ける)ようになってからの作品群なんだと思う。どこか技巧と実験の気配もありつつ、かなりのところ現在の作風が確立している感じ、かも。
    でもやっぱり「同じ音色は、二度は味わえない」のだから、魅力ある多作はいいものだ。何かしらの異界を描く作家ならなおのこと。
    どれも複雑な味わいがあって面白かったのだけど、やはりその異色で際立つのが「猫舌男爵」。勘違いに次ぐ勘違いの頓珍漢が、気が付いたら大真面目に華麗なアクロバットを決めているのだからもう可笑しくて可笑しくて。「ハリガヴォ・ナミコはどうでもいいです」のあたりなんか無性に笑える。
    穏やかに始まる「オムレツ少年の儀式」の回想明けと、死の色濃いクライマックスが先に立つ「睡蓮」の逆廻しに狂気を増していく様子にはぞくぞくしたし、「水葬楽」の荒涼たる世界観と詩の交響、「太陽馬」のふたつの物語が絡み合っていく様子もとても面白かった。
    解説までひっくるめてグラスハープのような一冊。完成度が高い。

  • 短編集。
    表題作が面白かった。どんどん話が逸れていく。訳者も、手紙の相手も、友人も、皆話が逸れていく。
    逸れた話が可笑しいから、猫舌男爵が何たるかなんてどうでもいいのだ。

  • 多彩で美しくて後味の良い短編集。扱うジャンル、文体、世界観、人物像なんかが見事に合致していて、ああ文で味わえてなんて嬉しい、とにやにやしてしまいました。

  • 2/13 読了。
    純粋な水が注がれた密閉された箱の中で長期的安楽死を迎える技術が富裕層のあいだで常習化されている、そんな近未来SFの設定を、双子の兄妹をめぐる耽美的な悲劇に落とし込んだ「水葬楽」。ろくに日本語の読めない山田風太郎ファンのポーランド人青年が訳した、謎の日本人作家ハリガヴォ・ナミコの小説が発端となって引き起こる日波横断スラップスティック「猫舌男爵」。父を亡くして田舎から都会に出てきた母子の破滅をえがいた「オムレツ少年の儀式」。精神を病み、30年以上も精神病院に入ったまま生涯を終えた女性作家の一生を遡行していく「睡蓮」。中華風のおとぎ話と、ロシアでのコサックとボリシェヴィキの闘いがシームレスに交差する「太陽馬」。タイプの異なる短篇5篇を収めた短編集。

    これ以外の結末はないにも関わらず、最後の段落でハッと胸を突かれる思いがした「オムレツ少年の儀式」が好き。いたってよくある<純粋な魂が都会に染まっていく話>なんだけど、腰にぶら下げた角笛と尾鰭の幻想を回収する手つきが見事で圧倒される。

  • 相変わらず素晴らしい。
    『オムレツ少年の儀式』と『睡蓮』が特に好き。
    表題作は皆川さんの小説としてはなかなか珍しい感じでしたが、純粋に笑えて面白かったです。
    『太陽馬』はラストの情景を頭に浮かべるとなぜだか涙が出そうになりました…。

  • 何処の世界の、何処の時代の物語か見当もつかない摩訶不思議な物語5篇と解説を含めた短編集。 表題作を除けば、真面目な物語な筈なんだけれどレトリックに翻弄させられながら「読まされた」感の読後の物語集。 猫舌男爵の本当にありそうで絶対なさそうな話は秀逸。

  • 常識がぐらぐらになる。
    不思議で冷たい質感の話が詰まった短編集。

  • 言語が通じないが故のどたばた感が面白かったです。

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著者プロフィール

皆川博子(みながわ・ひろこ)
1930年旧朝鮮京城市生まれ。東京女子大学英文科中退。73年に「アルカディアの夏」で小説現代新人賞を受賞し、その後は、ミステリ、幻想小説、歴史小説、時代小説を主に創作を続ける。『壁 旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞を、『恋紅』で第95回直木賞を、『薔薇忌』で第3回柴田錬三郎賞を、『死の泉』で第32回吉川英治文学賞を、『開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―』で第12回本格ミステリ大賞を受賞。2013年にはその功績を認められ、第16回日本ミステリー文学大賞に輝き、2015年には文化功労者に選出されるなど、第一線で活躍し続けている。

「2023年 『天涯図書館』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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