血と霧 2 無名の英雄 (ハヤカワ文庫JA) (ハヤカワ文庫 JA タ 14-2)

著者 :
制作 : 多崎礼 
  • 早川書房
3.97
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本棚登録 : 321
感想 : 29
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150312374

感想・レビュー・書評

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  • 一生大切にしたいと思える、間違いなく私にとって宝物の作品になりました。表紙の綺麗な絵に惹かれたのがきっかけですが、この本を手に取った本当に良かった...!同著者の他の作品も読みたいと思います。

  • 切ない。
    読み終わって、胸に抱きしめたくなるような物語だった。
    確固たるオリジナルの世界観があるのにその説明が全くくどくどしくないのがすごい。
    余分なものは極限まで削ぎ落とされたような書き上がり。だからこそ人物の心の揺れや台詞が際立つのかもしれない。
    しかもその中でさりげなく張られた伏線がきっちりと回収される。
    なんだろうこのバランス感覚は。

    もっと長くこの世界に浸りたいという欲求と、いや、この小説はこれでベストなんだろうな……ああでも寂しい……という葛藤。それほど心に響くものがある幸せな読書体験だった。

    この2巻はこれで素晴らしく完結したとして、とにかくこの世界線で別の視点の話が読みたい。

  • こんなに心揺さぶられる物語は久しぶりに読んだ。読み終わったテンションで感想を描いているので読みにくい文章、文章になっていないところがあるかもしれない。出来ることならば続きが読みたい。
    ギィの霧笛で、ロイス、ルーク、ヴィンセント、ティルダそして、ミリアムが一緒に暮らし、ルークの夢が実現することを私は想像していた(望んでいた)が、そんなことはなかった。
    ルークの血実を握りしめ霧笛に向かうシーンが印象的でした。
    ユイア・ノイアの行いは許すことができないが、私がもし彼女であったならば、同じ行動をとってしまうかもしれない。それだけ彼女はアドリア姫を慕っていた。

  • 絶対的な血液の価値を誇る女王が支配する階層社会・ライコスの最下層で出会った、血液専門の探索者ロイスと女王の20番目の王子ルーク。そして傭兵のヴィンス、ティルダ、美貌の調血師ギィ…
    登場人物(動物も、植物も)血を持つ者は皆が、生まれ持った血の運命に翻弄され、崇拝しつつ恐れ、裏切りながら信じ合い、幾重にも複雑な感情がもつれあう。

    いつもながら、多崎礼さんの紡ぐ物語は甘くない。
    愛し合う2人は幾重にも引き裂かれ、愛娘を失った過去に苛まれ、心を通わせた少年は死へと向かう。
    悲劇の瞬間の描写がなくても、同じ瞬間を味わったように、辛く哀しい。
    だからこそ、ルークの誇り高い心や、ロイスとグローリアのどうしようもなく純粋な愛が、一層強く揺るぎなく輝くのかもしれない。

    そしてこれもいつもながら…終章には、それでも人は生きていく、生きていけると、確かな希望を残して終わる。
    きっといつか、ルークを慈しんだ面々が、また笑顔で再会出来る日が来るのではないかと。

    数々の切なく美しいシーンの中でも、ギィがロイスに別れを告げるとき、同じ言葉を繰り返すシーンが、個人的には最高。
    スピンオフ描いてくれないかなぁ。


    この世界も、緻密に作られた多崎ワールド。
    他人の血を取り込む事によって、力を得たり、意思を支配したり出来るという設定が、言葉に出来なかった思いを時を超えて伝える仕掛にもなって、物語の時間軸を軽々と飛び越えてしまう。

    魔法使いが出てくればファンタジー、不思議な生き物が出てくれば異世界、なんてものじゃない!
    この世界の物語が2冊で終わるなんて勿体無い‼️

  • 文字通り血の持つ能力が、その人の貴賎を左右する世界の物語。
    血は、情報にも武器にも、もちろん金にもなる。

    高い能力を持つ王族が君臨し、力を持たない者は、蹂躙される。

    主人公は、人生のすべてを失い、最下層で生きながら死んでいるも同然の生活を送っていたが、ある少年の捜索を機に、人生の意味を取り戻し、王家をめぐる陰謀に巻き込まれる。

    久々に大当たりのファンタジー。
    2巻で終わりなのが惜しいくらい。

  • ★ネタバレありです!★

    久しぶりに大満足な本に出会うことができました。
    1巻はワクワクしながら読みましたが、2巻は切なくて思わず泣いてしまいました。
    先が気になって、一気に読み切りましたが、もう一度、じっくりと読み返してみたい作品です。

    途中まで読んでみて、副題の「無名の英雄」は第四話のローグを指していると思いながらも何となくしっくりこない気がしていたら、最後まで読んで、著者の意図がよくわかりました。無名の英雄はルークのことだったのですね。とても切ない…。

    ルークの第一印象は「なんて尊大な王子様!」でしたが、最後まで読んだみて、印象ががらりと変わりました。ロイス達と出会って、市井の生活や殻の世界を知ったりすることで、最終的には大切な人達を命をかけて守り抜いたルークの生き様に泣かされました。

    ところで、ヴィンセントは助かったのでしょうか?ヴィンスも公的には亡くなったことになってますが、アドリア姫の言葉からはヴィンスは生きているようにも受け取れます。とっても気になります。(ヴィンセントには今後も陰ながら活躍してほしいと思っているので。)

    著者の多崎礼さんのブログを読むと、1、2巻はシーズン1とのことですし、シーズン2の刊行を心待ちにしています。

    あと、読後に2巻の帯をじっくりと見て「吸血鬼×…」と書いてあるのにびっくり。そういわれてみれば、太陽光や銀が弱点となっているなぁ、と納得。でも、私の中では「吸血鬼」→「悪役」という印象が強いので、個人的には、この物語の世界では彼らが普通の「人間」としておきたいと思っています。

  • スチームパンク探偵譚の後篇。
    表紙のルークがかっこかわいい。

    ロイスを煮え切らないというのは簡単だけども、でもやっぱり最後まで頑張ったねと労いたい。
    ギィはほんと好みのキャラしてたなー。
    しかし子どもが死ぬのはツライ……本当にツライ……。

    多崎先生によるとこれはシーズン1で、シーズン3まで構想があるということなので、続きを心待ちにしたい。

著者プロフィール

2006年、『煌夜祭』で第2回C・NOVELS大賞を受賞しデビュー。著書に「〈本の姫〉は謳う」、「血と霧」シリーズなど。

「2023年 『レーエンデ国物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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