歌おう、感電するほどの喜びを (ハヤカワ文庫 NV フ 2-8)

  • 早川書房
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150405403

作品紹介・あらすじ

母さんを失くした、ぼくたちの家に、魔法のようにやってきた電子おばあさん。料理の腕は最高で、凧をあげれば天まで届く。暗く沈んだ我が家の空気も、元のように明るくなった。でも姉のアガサだけは、どうしてもおばあさんに心を開こうとせず…。子守りロボットと子供たちとの心暖まる交流を描く表題作ほか、願いが何でもかなう火星の都市を訪れた地球人たちの不思議な体験「火星の失われた都」、ディケンズと名乗る奇妙な男と少年のひと夏の物語「ニコラス・ニックルピーの友はわが友」など、ブラッドベリが優しく歌いあげる珠玉の短篇集。

感想・レビュー・書評

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  • ブラッドベリ好きの知人から借りた本。
    表題の『歌おう、~』だけでいいから!とのことで読んでみた。

    脳から理系が欠落している私にはとても読みやすく
    切なく幸せな物語だった。
    生身の人間から得られるとは限らない絶対的な愛を、機械のおばあちゃんがくれるとしたら…
    機械ゆえにその愛は絶対って、すごい矛盾だよねぇ…

    その後『ニコラス・ニックルビーの友はわが友』まで読み終えて、正直コレジャナイ感を覚えたのでここまでとした。
    他のかたのレビューを見て、萩尾望都さんの後書きを読んで納得。
    知人の『歌おう、~』だけでいいから、にも納得。
    『歌おう』は評価★★★★★

  • <優しい唸りよどうか途切れないでおくれ>


     この作家の、殊に短編を愛読する者としては、レイ・ブラッドベリと会えたことに対して「感電するほどの喜び」を歌い上げたい気分ですね。ただ、よりによってこの題名の本で、ちょっと事情が違っているのだけど……★

     レイ・ブラッドベリが描く少年時代は、まったく骨までしみてカルシウムレベルでひたれるほど美しいのですが、彼が大人の話を書こうとすると、突然借り物みたいになじまなくなってしまうのです。
     本書には、レイモンドが「永遠の少年」をやめ、大人の声で歌おうとする作品がいくつか混じっています。巻末で萩尾望都さんが「歯ざわりの違うもの」という評し方をしています。

     たとえば、それまで偉大な精神科医で通っていた男が、自身の衰えに気づき、引退する小編があります。霞んだ視界と聞き違いの真っ只中で仕事をしてきたことを恥じ、むき出しになった現実に耐えられなかったドクター。しかし別の診療法に目覚め、「ロールシャッハのシャツを着た男」としてカムバックします。「いぜん光輝にあふれてただよい行くその姿」を見せて……。
     しかし正直、ドクターは老いたと私は思ったな。
     ほかの何篇かも、端っこから夢の色が褪せ始めています。

     ブラッドベリの小説からは、不思議に美しい唸り声が聞こえます。ブーン、と優しく空気を震わせる特別な声で、本を閉じて物語が夜の闇や霧の向こうへと静かに消えていっても、まだ耳に残っている★ ブラッドベリのブーンは、何十年も耳の奥で鳴り続ける、特別な唸りなんです。
     小説は、一遍一遍が永遠に優しい唸りをあげ続ける。ただ、そういう作品は量産できるような種類のものではないので、ブラッドベリの美しい唸りも、この短編集では時々苦しくなっています。致しかたのない変化が起きている、と思います。

     だけど、声が小さくなってきた分、耳をすませれば、息継ぎをしてもう一度、唸り始める気配が感じられるのです。

  • 原題は「I Sing the Body Electric!」。書名にもなっている邦題が良い。
    たくさんの優しさと、「何者かに成りきれなかった者」のやりきれなさの短篇集。以下、気に入ったもの。
    ・「歌おう!感電するほどの喜びを!」愛について、祈りたくなる
    ・「ニコラス・ニックルビーの友はわが友」ディケンズを名乗る、小説家になれなかった男と少年の出会いと別れ。”ぼくはあの人たち、きちがいじみてなんかいないと思うけど” ”わしだってさ、ピップ”
    ・「大力」話は何処へも進まない。そして彼もまた。
    ・「ロールシャッハのシャツを着た男」なぜか泣いてしまう。

  • 先日、恩田陸「MAZE」を読んでいて、この乾いていて時間の流れから置いていかれている感じ、知って・・・・・・とやっと思い出しました。

    これです、これ!
    特に「ロールシャッハのシャツを着た男」「ヘンリー9世」辺り。

    でも今回読んで、一番気になったのは「お墓の引越し」。夭折した恋人の亡骸の前で老女は・・・・

  • 「I Sing the Body Electric」
    この原題を、
    「歌おう、感電するほどの喜びを!」
    こう訳した素晴らしさに、喝采を。

    表題作が、泣けて仕方なかった。
    盛大にネタバレ

    「ぼくたち」3人の子供が誕生させたおばあさんのあたたかさにも、子供のわだかまりや愛情にも感じ入るけれど。
    「ピノキオ」と名づけられた、彼女たちロボットの眠りが。
    抱き続けた思いで、いつか、人間になれる――ロボットであるがゆえの惜しみない愛情と、別け隔てのなさ。それでも、彼女たちは、自分の育てた子供たちの思い出を語り合い、共有しあい、まったき愛情を伝え合って、いつか、と夢見る。

    「いつかわかるときがくるでしょう」

    生物的な意味では、持ち得ない命を。魂だけは既に子供らと分け合っている彼女が、夢見る。
    そして、年を取らないと泣き叫んだ子供たちは、心だけはそのままに、老いて、また、おばあさんを呼ぶ。昔も今も変わらぬおばあさんを。

  • 追悼レイ・ブラッドベリ。

  • 表現は詩的で音楽的で非常に美しいと思ったのだけど、その感情的な高ぶりが展開を広げていくのに少々ついていけなかなった。素直に陶然としたかったが…私の読み方に何か足りないのかな。

  • 12月15日読了。ブラッドベリのSF短編集。ロボットのおばあさんと家族との交流を描いた表題作(邦題がいいね)など、SFだが全体にはノスタルジックなムードが漂う。ブラッドベリの他の作品同様に悪くないが、ピンとこないお話やダウナーに沈み込む話も多く、絶賛するというほどではなかったか。

  • 予期もせず、偶然読んだ物語が非常におもしろいと
    まるで宝物をみつけた小さい子供のように眼をきらきらと
    光らせて喜んでしまう。

    しかも、今まで敬遠していたSFというジャンルの中で
    そんな作品に出会えたのだから尚更だ。

    レイ・ブラッドベリというと『華氏451度』が有名だ。
    たぶん、’ブラッドベリを読もう’という心構えで本を選んでいたら
    一作目にこの作品を読むことはなかっただろう。
    いろいろな偶然が巡り巡ってこれを手にすることになった、
    その幸運が本当にうれしい。

    どの短編も傑作で無駄がない。
    翻訳家の訳も見事で、抒情的でいて美しい。

    またここから世界が拡がっていく予感を感じながら
    わたしは幸福のうちに本を閉じる。

    'I Sing the Body Electric'
    -from a piece of poetry of Walter Whitman 'Children of Adam'

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著者プロフィール

1942年、静岡県浜松市生まれ。英米文学翻訳家。主な訳書にクラーク『2001年宇宙の旅』、オールディス『地球の長い午後』、ブラッドベリ『華氏451度』、カート・ヴォネガット・ジュニア『猫のゆりかご』、ディレイニー『ノヴァ』ほか多数。

「2022年 『吸血鬼は夜恋をする』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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