元祖・密室殺人。芝居っ気たっぷり!
自宅の実験室で研究に没頭していたスタンガソン博士(翻訳によりスタンジェルソン)は、銃声を聞きつけてマチルド嬢(マティルド)の部屋へと急ぎます。完全な密室の内に倒れていた娘。煙のように消えうせた犯人。なぜ、どうやって……?
頭がキレる若き記者ルウルタビイユが、パリ警視庁の腕利きを向こうに回してすべてを解き明かします★ 難事件の真相と、その奥に隠されていた秘密とは……!?
完全に閉ざされた”黄色い部屋”を舞台に、「令嬢の苦悶の声が~!」「壁に血の手形が~!!」「消えた人影が~!!!」……等々、事件の情景が影絵劇のようなイメージで浮かぶ作品です。幾度となく読み返してるけど、浮かんでくる影絵のイメージが毎回違っていて飽きません。
何度読んでも印象が変わる理由は、被害者像にありそうです。初めはあまり意識していなかったけど、ヒロインがつけ狙われる動機や経緯があまりに意外で……★ 初読よりも再読、再々読のほうが驚きが増します!
そして、この怖いけど絵になる惨劇の謎を解きほぐしにやってくるルウルタビイユ君が、利発さゆえに小生意気で可愛い★ 若いというより子どもですが。少年探偵が持ちこむ明るさと、影絵の情景で浮かんでくる暗い事件との切り替え効果も、劇的な鮮やかで盛り上がりますね☆
ルルー的感性というものにすっかり魅了されています。この作者には、素晴らしい絵を描く血が流れているのです☆ 作中、絵になるシーンがいくつも出てくる。そのことが、生まれつき持っているタイプ、血液型のように自然なものに感じられます。小説を通してルルーさん自身の中に流れている何か、血液のような、通常見えない部分が可視化するような……←支離滅裂!
ガストン・ルルーの血を愛してDNAをもらい受けた子孫的作品は、あちこちで見かけます。密室トリックという用語自体に、ルルー一族(?)の繁栄を見る思いがするのです☆