- Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
- / ISBN・EAN: 9784151200403
感想・レビュー・書評
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十数億人いる“中国”という国で、抑圧の時代の中“個人”の価値を歌う青春小説
清朝の腐敗政治・列国干渉・泥沼の日中戦争・国民党との覇権争いを経て、毛沢東による中華人民共和国の建国は、希望に満ちていた。
「20世紀最大の実験」といわれた新たな国家運営手法は、その後の「大躍進政策の失敗による全国民飢餓状態」から「文化大革命による知識層・富裕層への弾圧」で、再び大混乱に陥った。
1966年から10年、「文化大革命」は毛沢東と四人組の反勢力との権力闘争であったはずが、始まると火のついた津波のように中国全土を席巻し、さまざまな悲劇を生み出した。
近衛兵による暴走と下放運動による教育制度の壊滅で、伝統文化は殺戮された。
毛沢東の死とともに収束していったが、その揺り戻しにも悲劇がついてきた(毛主席のために立ち上がった近衛兵たちは、「反逆者」としてことごとく処分された)。
この小説では、17・18歳の二人が、抑圧され声高に叫ぶことができない中、個人であることの価値に目覚めていく様子を、青春の一コマとして描いている。
作家は中国出身、フランスで小説家・映画監督として活動。
短い小説ながら、特別な時代のなかでも変わらない青春の熱量を感じさせてくれた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
SL 2022.3.12-2022.3.15
文化大革命下の中国。再教育に送られた僕と羅。
過酷な環境でも、若者らしい純粋さで美しい少女に恋するふたり。
そして「本」。毛沢東は本を発禁にし焚書も行ったけれど、「本」の力はもっとずっと強く、人の心に働きかけて人生を変えてしまうことさえある。
こんなにも自由にいくらでも本を読めることに感謝 -
文化大革命により「知識階級」とされ、「再教育」のために山奥の山村に送られた若者二人と、近くの街に住む若い娘を軸にストーリーが展開する。この運動の滑稽さや恐ろしさも書かれているが、淡々としているせいか、そのこと自体に注目はいかない。本の背後にある文化大革命で、毛沢東は多くの書籍を発禁処分とし焚書まで行われたわけだが、なぜ本にこだわったのか。「本」には人生を変える魅力があるということが伝わってくる一冊。
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中国の文革下の状況を背景に下放された少年たちの様子が描かれています。文体のリズム、言葉の選ばれ方が素晴らしいが、それを充分味わうには原語であるフランス語で読む必要がありそうです。
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なんだかあっけなさすぎる
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文革時代。下放された僕と羅は一人の少女と、バルザックの書と出会う。
もしも本を禁じられたら、彼らのように盗んででも手に入れたいと思うのだろうか?
紙が手に入らないとしたら、服の裏地にさえ文字を残そうと思うのだろうか?
本編よりも巻末の作者へのインタビューが興味深かった。
しかし下放ってもっとハードだと思ってたんだけどなあ。 -
小説としてはそれ程引き込まれなかったが、やはり本好きとして文化大革命には他人事じゃない憤りを感じてしまう。こうして自由に本が読める幸せが胸にしみる。にしてもバルザックというチョイスが良い。
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文字は少女の世界を解放する。男はその手段、彼女の人生の通りすがりに過ぎないのだ。
映画はオープニングから伏線を張りすぎかな、原作のほうが余韻がある。