愛の探偵たち (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 早川書房
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感想 : 34
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  • Amazon.co.jp ・本 (364ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151300615

作品紹介・あらすじ

雪に閉ざされたゲストハウスに電話が入った。ロンドンで起きた殺人事件の関係で警察が向かっているという。やがて刑事がやってきて…マザー・グースの調べにのって起こる連続殺人劇、戯曲「ねずみとり」の原作をはじめ、ポアロ、ミス・マープル、クィンら、名探偵たちの推理がきらめく珠玉の短篇集が新訳で登場。

感想・レビュー・書評

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  • 美味しい所どりの短編集。戯曲原作『三匹の〜』の上手いこと。マープルの仕事人ぶりを堪能『申し分のないメイド』とマープル慰めるためヘイドック医師書いたという設定が楽しい『管理人事件』、ドラマで観たポアロ2篇とクィンも良い。

  • 霜月蒼氏『アガサ・クリスティー完全攻略』では星二つの本書だが、111108さんの「美味しい所どりの短編集」という言葉に勇気づけられて手に取った。

    本書は、戯曲『ねずみとり』の原作『三匹の盲目のねずみ』と、ミス・マープルの短編4編、ポアロの短編2編、ハーリ・クィンの短編1編からなる。
    『三匹の盲目のねずみ』は『ねずみとり』とほぼ同じストーリーだが、会話だけでテンポよく進める『ねずみとり』の方がぐっと洗練された感じを受けた。

    クリスティーについては基本的に長編の方が好きなのだが、ミス・マープルシリーズについては短編の方が面白いと思っている。ミス・マープルは捜査権限がないため、重大な殺人事件を長期的に捜査する話になると、ちょっと無理があるなあ、と思ってしまうのだが、短編だと、彼女の関与が不自然ではない程度の事件におさまっていて、彼女の鋭い洞察力が生かされるように思う。
    本書の中では、いたずら好きのおじさんが残した遺産のゆくえを探す『奇妙な冗談』がお気に入り。それにしても、せっかくかわいい親戚のカップルに財産を残したのに、ヒントがわかりにく過ぎて、あやうく破棄されるところだった。おじさんのいたずらが過ぎるなあ。

    クィン氏は初読み。ポアロシリーズの『三幕の殺人』でヘイスティングズ的な役割を担うサタースウェイト氏が、クィン氏の友人として謎解きに重要な役目を果たす。芝居好きで観察力のあるサタースウェイト氏が、その特技を生かしてナイスアシストするのが微笑ましい。

    総じて気軽に楽しめる一冊。

    • 111108さん
      b-matatabiさん、こんばんは♪

      クリスティーのまだ手をつけてない物、どれ読もうか悩ましいですね。この本確かに攻略本では低評価ですが...
      b-matatabiさん、こんばんは♪

      クリスティーのまだ手をつけてない物、どれ読もうか悩ましいですね。この本確かに攻略本では低評価ですが、味見と考えれば悪くないですよね?
      2024/04/15
    • b-matatabiさん
      111108さん、おはようございます。
      私はシリーズものをあらかた読み終えたからか、短編集でポアロやミス・マープルにまた出会えるのがちょっ...
      111108さん、おはようございます。
      私はシリーズものをあらかた読み終えたからか、短編集でポアロやミス・マープルにまた出会えるのがちょっとうれしくて、短編も楽しく読んでいます。

      クリスティーを読む順番、悩ましいですよね。私は、完全攻略の低評価本から読みつつ、評価は高いけれどミステリではないメアリ・ウェストマコット名義の本を先に読んでいこうと思っています。
      やっぱり、最後のクリスティー本はミステリにしたいので。
      2024/04/18
    • 111108さん
      b-matatabiさん♪
      そうですね〜私も最後はミステリー読んで終わりたいです!ミステリー以外のものも早めに読まなくては。
      b-matatabiさん♪
      そうですね〜私も最後はミステリー読んで終わりたいです!ミステリー以外のものも早めに読まなくては。
      2024/04/18
  • 短編集。探偵役も様々で、まさに寄せ集めという印象。
    メインはおそらく、三匹の盲目のネズミ。キーポイントは他作品と同様なものがあったと思うが、うまく解決している話と思う。

  • 愛の探偵たち
    クリスティの短編集。女史が生み出してきた探偵たちが活躍する作品集。
    三匹の盲目なねずみ
     100ページ以上ある為、中編だと認識。新婚夫婦が初めて民泊を経営し、そこに宿泊する様々な特徴の人々。大雪で外部との連絡が途絶えた環境。捕まらない殺人鬼。「雪の山荘」のお約束が十二分に詰まったお手本の様な作品。合わせて、クリスティはサスペンス作品の出来も素晴らしい事を思い出させてくれた作品。
     ストーリーについてはある程度犯人も予測しやすくなっているが、とても面白い。登場人物達の癖づけによって皆んなが怪しく見え、疑う事が出来る状態で進行する為、スリリングな内容だ。
     奇妙な冗談
     マープルが登場。若き夫婦の叔父が亡くなり、遺産があるはずだが見つからない。知人の伝手でマープルを紹介してもらい、遺産探しがスタートされる。短い物語で大きな波は無いが宝探しは古今東西面白い道理で今回もとてもユニークに感じた。高額切手での遺産は今の時代では中々思いつかないが、叔父さんのちゃめっ気にほのぼのした空気感の物語だ。
     昔ながらの殺人事件
     探偵役はマープル。セントメアリミードで発生する事件について、全てマープルに報告すれば良いのにと思うのは僕だけだろうか(笑)警察署長に至るまでマープルの観察力、推理力についていけるものはいない。今回もスペンローという人物が感情を出さないタイプなので警察から疑われているが、この時代は陪審員制度然り、感情に訴えなければ無罪になれないのではと思う程だ。
     マープルの観察と推察はシンプルであり急所を突いている。今回はお節介な部分も魅力だ。
     申し分のないメイド
      探偵役はマープル。村で発生する盗難事件について。彼女が最後、犯人を警官に告げるシーンにおいて、自身のメイドのいとこがあらぬ疑いでクビになり、噂が経っている事を解消する為に憤りを感じている部分が、彼女の優しさだけでは無く強さも表している。事件はありきたりではあるが、犯人の正体についつは楽しむ事ができた。
     管理人事件
     病気で塞ぎ込んでいるマープルにヘイドック医師が身近で起きた謎をまとめて持参。
     若くてお金持ちの夫婦。夫の故郷である田舎に戻り、家を再興し、昔ヤンチャだったがオールドミス達に認められ。そんな暮らしの中で、以前敷地の古屋敷に住んでいた老婆が嫌がらせをする様になり。マープル曰く、昔から人が大きく変化する事はない。後味が悪い事件である。
     四階のフラット
     探偵役はポアロ。若い男女グループがフラットという旧イギリスの家屋で鍵を無くしてしまい裏通路(ゴミ捨て場?)から侵入し部屋のドアを開けようと試みるが、誤って下の部屋に侵入してしまい。死体を発見し、困っているところ、上のフロアにいたポアロが助け舟を出す。最後、ロマンチックに締めていくところがポアロシリーズらしい結末だ。
     ジョニー・ウェイバリーの冒険
     ポアロシリーズ。ヘイスティングスも登場。誘拐事件。被害者家族の屋敷内にて偽装が多すぎる為、ポアロは違和感に気づく。いわゆる誘拐偽装事件であり、ある程度見たことのあるストーリーだった。
     愛の探偵たち
     表題作。探偵役はクィン。表題作の探偵がクィンである事が感慨深い。内容はありきたりなものでアリバイも当時のミステリーに有りがちな壊れた時計の二重仕掛けだ。犯人達がそれぞれ自分が犯人だと名乗り上げ、殺害方法を実際のものと違う方法を挙げ推理が自分達に向かない様に偽装する。何重にも偽装を仕込んでいるところが面白い作品だ。

  • 2004年発行、早川書房のクリスティー文庫。8編。1編目は中編。2編目から5編目の4編がマープルもの。6編目、7編目の2編がポアロもの。8編目がクィン氏もの。これらの作品はすべて古い伝統的な社会を舞台としている。そしてクリスティの話はそちらの方がより良く感じる。

    収録作:『三匹の盲目のねずみ』、『奇妙な冗談』、『昔ながらの殺人事件』、『申し分のないメイド』、『管理人事件』、『四階のフラット』、『ジョニー・ウェイバリーの冒険』、『愛の探偵たち』、解説:「美味しいショートケーキの詰め合わせは如何?」西澤保彦(作家)、

  • 「三匹の盲目のねずみ」(1950) 今日が初日というゲストハウスに、ロンドンで起きた殺人事件の犯人がそちらに行く可能性があり、警察官が警護のため向かうという電話が入る。、犯人は「三匹のめくらねずみ」を口ずさみロンドンで一人殺した。宿泊客は4人。この中で残る二人が殺されるのか・・  雪に埋まった山荘での殺人、名探偵コナンにもよく出てきた。これが元なのか・・

    閉ざされた空間で、経営者の若夫婦、泊り客は疑心暗鬼になってゆく、それぞれ怪しい雰囲気を醸し出し、犯人は実は、というこの過程がスリリング。登場人物の意外な過去。原因は疎開児童の虐待死。「そして誰もいなくなった」は泊り客が過去に起こした事件のおとしまえをつけさせられる、という点ですっきりしたものがあるが、こちらは戦争の悲惨さが底にある。が、最後は若い二人の未来が開けているのがよい。また若夫婦の疑心暗鬼の内容はオー・ヘンリーの「賢者の贈り物」にも通じるオチかな、と感じた。

    1947のラジオドラマを1950に小説で発表。1951に戯曲「めくらねずみ」 戯曲よりこちらの小説版のほうが先に読んだせいか緊張感があった。もともとセリフは戯曲的ではある。

    「奇妙な冗談」(1944) ミス・マープル。頑固なおじの残した遺産はいかに。おじと呼んでいるが本当は「大伯父のおじ」なのだということだが、大伯父は祖父の兄弟で、さらにその伯父なので、結局はひい爺さんの兄弟が「大伯父のおじ」だ、と図を描いてわかった。文字だけみると、ありえない関係、と思ってしまうが、ひい爺さんの兄弟ならけっこう存在する。

    「昔ながらの殺人事件」(1942) ミス・マープル。 仕立てを頼んだ女性が殺されていた。あまり悲しまない夫、仕立てやの女。現場に残された針。これはマープルでドラマ化されていると思う。

    「申し分のないメイド」(1942) ミス・マープル。4つに区切って貸し出されたお屋敷。そこに住む姉妹。わがままな病気の妹を姉はとてもよく面倒みていたが・・ 村のメイドのブローチ盗みの汚名をそそぐ。

    「管理人殺人」(1942) ミス・マープル。 放蕩息子が美しい妻を連れて屋敷に戻ってきたが妻は前の管理人のいやがらせや村に閉そくし落馬して死んでしまうが・・

    「四階のフラット」(1929) ポアロ。夜遊びした男女4人。女はアパートの鍵を無くし男二人が窓から入り込むと階を間違えそのうえその階には女が死んでいて、おまけにそれはポアロも住むアパートだった!

    「ジョニー・ウェイバリーの冒険」(1928) ポアロ。ヘイスティングス。お屋敷の息子ジョニーが誘拐された。

    「愛の探偵たち」(1926) ハーリ・クイン氏。老サー・ジェイムズが殺され、若い婦人とその恋人が「私が犯人」と名乗り出るが凶器が違っていた。屋敷には給仕、執事、メイドもいたが・・

    1925,1926,1928,1940,1941,1942,1948発表。(renewed 1954,1956,1968,1969,1975 by Agatha Christie)
    2004.7.15発行 2010.11.15第3刷 図書館

  • 『三匹の盲目のねずみ』『奇妙な冗談』『昔ながらの殺人事件』『申し分のないメイド』『管理人事件』『四階のフラット』『ジョニー・ウェイバリーの冒険』『愛の探偵たち』が収録された短編集。
    出てくる探偵も、ポワロ、マープル、クィンとバラエティに富んでいる。
    マザーグースに見立てられて起こる連続事件の『三匹の盲目のねずみ』は、クライマックスの緊迫感が良かったです。見立て事件、結構好きです。

  • 「三匹の盲目のねずみ」は犯人が意外で驚いた。
    「申し分のないメイド」はいきなり署に来て真相を捲し立てて帰っていくマープルの勢いが好き。真相の方からやってくる事もあるのか…。
    表題作は、はじめて読むクィン氏シリーズだった。あんまり毒が無い。

  • いうまでもなく、さすがはミステリーの女王

  • おなじみの探偵たちにまた会える。

    「三匹の盲目のねずみ」大ヒットした劇「ねずみとり」の原作だそうで。確かに「ねずみとり」の方がこなれた感じがしたかも。

    「奇妙な冗談」若いカップルがミス・マープルにした相談は、マシューおじさんが遺したはずの宝物の場所。自分の知り合いのヘンリーおじさんについて楽しそうに語るミス・マープルが示した、マシューおじさんの遺産とは。思い出話で若い人をうんざりさせるミス・マープルを思い浮かべると思わず微笑んでしまう。ハッピーな結末も素晴らしい。

    「昔ながらの殺人事件」スペンロー夫人が殺された。警察から話を聞かれたミス・マープルは、いつものように思いを巡らし、そしてちょっと出かける。ミス・マープルの洞察力と行動力、それから若者をユーモアたっぷりに応援する優しさに拍手したくなる。

    「申し分のないメイド」正直者なはずのグラディスが泥棒扱いされて奉公先をクビになった。代わりに雇われたのはできすぎたメイド。何かを嗅ぎつけたミス・マープルが動く——。鮮やかに悪者を見破り、グラディスを励ますミス・マープルに拍手喝采。

    「管理人事件」事件が何よりの薬とヘイドック医師はミス・マープルに一つの謎解きを渡す。さらりと謎を解いて元気になるミス・マープルはやはり素敵。

    「四階のフラット」鍵がないのでリフトで上がろう。若者たちが間違えて入った部屋で見つけてしまったのは死体だった。そこに現れたのはポアロ。またもや意外な人間関係があり、ポアロは事件解決と共に優しく若者を勇気づける。ところで原タイトルはThe Third-floor Flatなんですね。これイギリス英語だったっけ、アメリカ英語だったっけ。

    「ジョニー・ウェイバリーの冒険」由緒ある一族の跡取り息子が誘拐された。ポアロとヘイスティングスのやりとりが楽しく、事件は大した不幸もなくあっさりと解決するので、気楽な気持ちで読めた。

    「愛の探偵たち」サー・ジェイムズ・ドワイトンが殺された。連絡を受けたメルローズ大佐と居合わせたサタースウェイトは、屋敷に向かう途中でクィン氏に出会う。屋敷で彼らが救うのはもちろん恋人たち。クィン氏に導かれるように、人を語り、事件を語り、解決に導くサタースウェイト。その不思議な感覚を存分に味わえる。

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