ゼロ時間へ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

著者 : アガサ・クリスティー 三川基好

• 早川書房 (2004年5月14日発売)

感想・レビュー・書評

[723さんの感想 · 2017年12月10日]

アガサクリスティーの作品にはまり、続けざまに読んでいます。

本作品にはポアロは出てきませんが、よく相棒となるバトル警視が主人公となり物語を進めていきます。序盤はさまざまな登場人物が出てきて関係性がよくわからなかったのですが、次第に不穏な空気になっていき、事件が起こってから収束まではスピード感がありました。

ある程度ポアロシリーズを読んだ後の方がいいかもしれません。初めてのひとは前振りの長さにうんざりしてしまうかも。

トリックにはちょっと無理があるようにも思いましたが、登場人物たちの人間模様と相まってなかなか味わい深く読み終わりました。

[chidori8さんの感想 · 2017年11月21日]

★3.5
昔、数冊読んだことがあるだけのクリスティ。最近、P・D・ジェイムス作品を立て続けに読んだせいか、クリスティのライトな書き味に驚いた。加えてこんな昼メロみたいな人間模様を書くんだなーと新鮮な驚きも。
終盤キーになる人物の行動が唐突すぎることや、何事かを企んでいたと思われる人物が何を狙っていたのかが結局分からず終いで少し消化不良。ただ、伏線から真相まで良くまとまっていて面白かったので、他の作品も読んでみたい。

[タカツテムさんの感想 · 2016年8月24日]

　この物語は全く嘘を吐けない正直者が、ただ誰かを救うためにたった一つの嘘を吐くまでを描いた話かもしれない。そんな風に考えてしまった。

　ネヴィル・ストレンジは何もかもを手にした男だった。スポーツ万能、頭脳明晰、そして結婚したばかりの若い妻。しかし、前妻オードリイには未だに想いを寄せており、後妻ケイもオードリイに対して嫉妬心を抱いていた。ネヴィルは懇意になっている老婦人のところで二人に『仲良く』なってもらおうと引き合わせることにした。そしてその老婦人の家に集まる人間達。人間関係は軋みながら段々と殺人の企てられる瞬間から、殺人の瞬間『ゼロ時間』へと向かっていく……

　クリスティー独特の恋愛の絡ませ方をしつつ、物語の流れは非常に美しく、他の推理作家にはちょっとやそっとでは真似の出来ないレベルの高い作品となっている。私としては殺人事件に下手に恋愛を絡ませた作品というのは苦手だったりするのだが、クリスティーだけは普通に読めたりする。
　今回登場する探偵役は脇役などで何度か登場したバトル警視。突飛なところはないが、長い経験から培った『事実から真相を見抜く力』と『人の表情を観察する力』に関しては飛びぬけた部分がある。しかし、それゆえにこれだけの難事件を解決する力は持ち合わせていなかった。この事件を解決する人物は他にいるのだ。

　この作品の最大の魅力はその構成力である。殺人の瞬間『ゼロ時間』へと向かうためにあらゆる出来事が非常に綺麗に展開されていくのだ。その上でミステリらしく読者の予想を裏切るであろう真相が用意されている。正直私も予想を外した。序盤のブラフに先入観を持たされ全く違う人物を追い続けてしまったのだ。解決の瞬間には『こいつはやられた！』と兜を脱いだ。しかし、その感覚こそがミステリの醍醐味だと私には思える。

　奇抜な探偵こそ登場しないがそれゆえに人間じみた青臭い物語がそこかしこに展開され、複雑な人間関係に基づいた殺人が行われるのだ。

[ゆーさんの感想 · 2015年7月17日]

タイトル通りゼロ時間へ収束していく物語の流れが非常に飽きさせなくできていてとても面白かったです！
バトル警視の5冊目
最後の本と言うことですが
これが初めて読んだバトル警視の物語になりました。
このバトル警視
物語の中で非常に聡明で落ち着いて読み進めていくことができました。
毎回のことですが
キャラクターの描きかたが素晴らしいです！

[kiyosiさんの感想 · 2015年5月28日]

カミーラ・トレシリアンの屋敷に集まった人々。カミーラの管理する遺産を相続するネヴィル・ストレンジと妻のケイ、ネヴィルの前妻オードリー、ケイの友人デッドなど。弁護士トレーヴが語る少年の犯罪。その夜ホテルに帰ったトレーヴの死。故障していないエレベーターに張られた「故障中」の張り紙。ケイと離婚しオードリーと再婚したいと願うネヴィル。ネヴィルとカミーラの口論。翌朝発見されたカミーラの遺体。ネヴィルの指紋のついたゴルフクラブ。同じ日に自殺をはかり助けられたマクワーター氏。バトル警視と甥のリーチ警部の捜査。なぜかポアロを思い出すバトル警視。逮捕されたネヴィル。ネヴィルに仕掛けられた罠。犯人はオードリーと指摘するバトル警視。自殺をはかる女性を助けたマクワーター。自身の自殺未遂の夜に彼が目撃したもの。濡れたヒモ。

[y_dokaさんの感想 · 2015年5月5日]

全体を読み終えると、この小説の異質さがわかる。
それは画期的で上質ではあるし、名作と称賛する人が多いのも理解できるけど、本格ミステリとしてはちょっと食い足りない感じだなあ。

[keikubo27さんの感想 · 2014年9月20日]

なかなか事件が起きなくてどうなるんだろうと思いながらも先が気になって一気に読んだ。
どんでん返し続きと伏線が繋がっていくのは好きな作りなので、これまで読んだアガサ・クリスティー作品の中でもいちばん読み応えがあって面白かった。

[オーネさんの感想 · 2014年8月25日]

書かれた時代を考えると、すごく斬新な犯人。
最後の恋愛の結末は、ちょっと唐突に感じた。

[横溝ルパンさんの感想 · 2014年4月27日]

バトル警視が探偵役をつとめる作品でした。
海辺の館で老婦人が殺害されます。しかし、事件そのものはその何ヶ月も前から始まっていたのでした。
この作品は、とにかくその構成の見事さに驚かされました。いっけん無関係に見えたエピソードが、きちんと後から意味を持ってくるのが爽快でした。

[chocolat27さんの感想 · 2014年3月31日]

誰が誰を恨んでいたのか。予想外の過去。