ゼロ時間へ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 早川書房
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感想 : 122
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  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151300820

感想・レビュー・書評

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  • ラストが謎展開だがサイコ犯人は面白かった

  • 2004年早川書房発行の文庫本。解説は権田萬治。登場人物が比較的少ないにも関わらず、前半の行動の把握ができなかった。犯罪の解決編ではすごく納得がいくのだが、ラストシーンがどうしてそうなるのか、ちと理解できなかった。

  • 「しかし、殺人は結果なのだ。物語はそのはるか以前から始まっている」
    その殺人が巻き起こる「ゼロ時間」へ向けて、着実に進んでいく綿密な計画。中盤あたりまでは事件も起こらず、不穏な空気がじわじわと満ちていく人間ドラマが積み重ねられていく。そして、老婦人・トレシリアンの死で堰を切ったように溢れ出す人々の感情と事件の謎たち。そこからラストまで勢いに流されるまま夢中で読んでしまった。

    張り巡らされた伏線や、登場人物たちのちょっとした行動が「ゼロ時間」に向けて集約していき回収されていくのは素晴らしいの一言。ミステリとしての面白さに加え、キャラクターの心理描写も実に巧みでドラマへもミステリへも絶妙な味付けをしている。みんな怪しく思えてしまって、犯人は全然わからなかったな(笑)

    あと、好きな台詞が二つあるので紹介しておきたい。

    「ただそこにいるだけでいいのかもしれない─何かをするのではなく─ただある時に、ある場所にいるだけでいいのかも─ああ、うまく言えないのだけれど、あなたはただ─ある日、ある場所を歩いているだけでいい、それだけで何かとても重要な役割をはたすことになるかもしれない─たぶんあなた自身はそれとは気づかずに」

    「人にはたいていなんらかの欠点があるものだ。そしてたいていは、どんな欠点かは一目瞭然だ。子供が欲張りだったり、意地が悪かったり、弱い者いじめをする質だったりしたら、それは見ればわかる。しかし、おまえはいい子だった。とてもおとなしくて、やさしくて、なんの問題も起こさなかった。それでときどき心配になったんだよ。目に見えない傷があるものは、力が加わったときに壊れてしまう恐れがあるんだ」

    この物語を象徴するような台詞でもあり、それ自体もとても心に残る。人は目に見えるものばかり追ってしまうけど、こうして自分が気づかないものだったり、目に見えない部分にこそ見逃してはいけない何かがあるんだろうね。

  • 著者:アガサ・クリスティ(Christie, Agatha, 1890-1976、イングランド、小説家)

  • 犯罪は唐突に起こるのではなく、はるか以前から始まっている。数多くの要因とできごとがあって、その結果としてある人物がある日のある時刻にある場所に赴くことになる・・ 犯罪発生のゼロ時間に向かって。冒頭に犯罪学者トレーブが登場する。

    ゼロ時間に向かう人々が少しずつ関係しあって順次登場し、それぞれの事情が明かされる。テニス選手と二人の妻の三角関係、その二人に好意を寄せる別な男性、そしてスパイスは自殺し損ねた男と犯罪学者のゼロ時間説。恋愛小説かと思うような恋愛心理描写が面白い、が、それが犯罪の動機にもなっている。
    殺されたのは館の女老主人だが、実は目的は別にあった・・

    最後でクリスティにはよくあるカップル成立。


    1944年
    2004.5.15発行 2014.2.15第6刷 図書館

  • ただ単に、面白い。

  • まあ解決のきっかけが運に頼りすぎ、という気はするけど
    なかなか面白かった。
    思わず乗り過ごすくらいに(おいおい)。

  • どのように話がつながっていくのかな、と思って読んでいったけど、後半から話がどんどん進んでいって、いろんな要素が噛み合っていって、犯人が特定される過程がおもしろかった。犯人の特徴がちょうど読んでいた別の本と関連していて、いつの時代にもこんな人は存在しているんだな、と複雑な気持ちになった。ポワロは出てこないが、登場人物の会話にポワロのことが出てくるのがなんだかうれしかった。

  • クリスティーが得意とする、遺産相続と男女間の嫉妬を背景にして起こる殺人事件。ポアロ、マープルではなく、バトル警視が探偵役であるのは、犯人をいったん見誤るという状況を作り出すためだろうか。冒頭のバトル警視の娘の出来事や、後半で目撃証言者となるマクハーターの話がうまく真相とつなっているところに、ミステリーの女王の匠の技を感じた。
    この事件の核となるトリックについては、私はこれまでに、クイーン、横溝正史、有栖川有栖の作品で使われているのを知っている(クイーンの作品の方が書かれたのは約十年も前)。本作品では、アリバイが問題にされていないので、このトリック自体はそれほどうまく活かせていないと感じた。また、マクハーターの目撃証言者が出てくるまでは、犯人を特定するような決め手に欠ける事件の状況であり、ミステリーとして特に特筆するような内容を持ち合わせていないと感じる。ただし、動機に関してはひねりがあって、かなり屈折した動機なのだが、個人的にはその心情は理解しがたい。
    「殺人は終局であり、物語ははるか以前から始まっており、あらゆるものがその終局、ゼロ時間の一点に集中されている」という、作品中で弁護士トリーヴスが語っている言葉を体現するような作品を書きたかったというのが本作品の創作意図ではないだろうか。
    本作品は事件を取り巻く人物の配置が絶妙であり、人間関係をうまく構築して、人物を適切に配置さえすれば、事件は起こるべくして起こるということなのだろう。

  • 2018/04/22読了

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