赤い夏の日 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ラ 16-2)

  • 早川書房
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (515ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151778520

感想・レビュー・書評

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  • ストックフォルムの女性弁護士を主人公に彼女の故郷で起きた女性牧師殺人事件の謎をめぐるお話。自然の描写があちこちに出てきて映画を見ているような気分にさせる。

  • レベッカシリーズ2作目。レベッカの故郷に近い村で女性司祭が殺害される。レベッカは、謎解きの中心ではなく、むしろただの宿泊客でありながら自分を癒そうとしている。
     1作目よりさらに面白かった。事件はスピーディーではないし、事件解決担当の刑事たちも地味な捜査。でも登場人物ひとりひとりを丹念に描いていくことで、しかもひとりひとりがはっきりとわかるように追いかけることで、じっくり味わえた。憎しみや醜さや苦しみも丁寧かつしつこくなく表現されているので、話しにすっと入り込める。ま、その分だけ、ラストのレベッカには、どんだけ不幸に遭わせるんだとどきどきした。

  • レベッカ・マーティンソン・シリーズの二作目
    またも故郷キールナ、またも教会、そしてまたまた殺人事件。
    被害者は前作では年若い男性説教師、本作では女性司祭となっています。
    ですが今回は「黄色い脚」という野生の雌オオカミのお話が少しずつ挿入されていて、その姿がレベッカに通じているというのが読ませどころかもしれません。
    が、このラストはあまりの仕打ち。作者は何故こうも主人公に対して残酷なのか。ひょっとしてサディスト?
    …文句なく1作目より面白いと感じました。

  • 悲惨な事件で心に傷を負ったレベッカが故郷で巻き込まれる殺人事件。

    人物描写はうまいと思う。
    やるせなさ感とか伝わってくるし。
    なのに仕事で長く中断してしまい、通して読めなかったら、「魔女遊戯」と登場人物が混ざりなんだかよくわからないことになってしまった。
    残念。
    機会があれば再読しよう。

  • スウェーデンを舞台に女性弁護士の活躍を描いた「オーロラの向こう側」。

    本書は、その続巻になります。

    「オーロラ~」で彼女を襲ってきた3人もの人間を殺害してしまった主人公・レベッカ。

    彼女はその時に負った心の傷が癒えず、所属している弁護士事務所を病気休暇中です。

    何かと気を使ってくれる周囲と彼らの希望に背くわけにはいかないとプレッシャーを感じている彼女の姿が印象的な冒頭から始まり、主人公が再び殺人事件に巻き込まれてしまうお話です。

    さて、あらすじを簡単にご紹介。

    気を使ってくれる上司の誘いで一緒に自分の故郷へ出張することになったレベッカ。

    簡単な仕事を終えた後、故郷近くに宿を取りしばらくそこに滞在することに。

    幼い頃の祖母との思い出に浸りながら心身を癒していた彼女ですが、実は滞在先のキールナでは女性司祭が何者かに殺害されていました。


    滞在先で徐々に周囲と親しくなったレベッカ。

    それと共に心の傷が徐々に癒えてきたが、それと共に事件に巻き込まれる時も近づいてくる・・・


    と言うお話です。


    周囲に波紋を広げた殺された女性司祭を回顧する関係者達。

    そして、女性司祭が財団を作り保護しようとした狼、特に"黄色い脚"と名付けられた雌狼の姿を描いた文章と関係者たちの動向を描いた文章が交互に挟まれている様。

    最後まで読んで対象的な"黄色い脚"とレベッカの様子が印象的でした。

    あるいは、著者は表面的な様子ではなく、主人公の心の奥底を狼の姿を使って描き出したのでしょうか。


    文量も多く、じっくりと腰をすえて本を読みたい、読後に「本を読んだ~」と言う充実感に浸りたい方にはお勧めかも。

  •  スウェーデン推理作家アカデミーの最優秀新人賞を獲得した、2003年発表の処女作『オーロラの向こう側』に次ぐ、2作目の本書。内容(「BOOK」データベースより)悲惨な事件に巻込まれ、心に傷を負ったままのレベッカは、職務に復帰した法律事務所で空虚な日々を送っていた。そんな彼女が、上司の出張に同行して故郷のキールナへ戻ってきた。だがそこで待っていたのは、またしても殺人事件だった。教会の女性司祭が夏至の夜に惨殺されたのだ。ふとしたことから被害者の周囲の人々と関わることになったレベッカは否応なしに事件の渦中へ…『オーロラの向こう側』を凌ぐ最新傑作登場。スウェーデン推理作家アカデミー最優秀長篇賞受賞。主人公をはじめ、登場人物たちの心に焦点を合わせた作品。スウェーデン推理作家アカデミーの受賞作品といっても、推理小説としての謎解きの面白さは弱い。だから、斬新なトリックを期待している方には向かない。主人公の女性レベッカ・マーティンソン作品としてシリーズ化している。一貫したテーマは、彼女の心の葛藤かもしれない。都会で働くキャリアウーマンが、心に傷を負うごとに生まれ故郷に引き寄せられていく姿が描かれている。彼女の心の傷は果たして癒されるのだろうか? 注目して読んでいる。

  • 「オーサ・ラーソン」の長篇ミステリー作品『赤い夏の日(原題:Det blod som spillts、英語題:The Blood Spilt)』を読みました。

    『オーロラの向こう側』に続き、スウェーデンの作家「オーサ・ラーソン」の作品です。

    -----story-------------
    悲惨な事件に巻込まれ、心に傷を負ったままの「レベッカ」は、職務に復帰した法律事務所で空虚な日々を送っていた。
    そんな彼女が、上司の出張に同行して故郷のキールナへ戻ってきた。
    だがそこで待っていたのは、またしても殺人事件だった。
    教会の女性司祭が夏至の夜に惨殺されたのだ。
    ふとしたことから被害者の周囲の人々と関わることになった「レベッカ」は否応なしに事件の渦中へ…
    『オーロラの向こう側』を凌ぐ最新傑作登場。
    スウェーデン推理作家アカデミー最優秀長篇賞受賞。
    -----------------------

    1年半前に(前作で)負った心の傷が癒えず、病気休暇中だった「レベッカ・マーティンソン」は上司「トーステン・カールソン」の出張に同行して故郷のキールナを訪れ、たまたま見つけたパブに併設されたコテッジに滞在して心身を癒そうとする、、、

    そこで出会った人たちとの交流により「レベッカ」は健康を取り戻していくが、ふとしたきっかけから、この地で3ヵ月前に発生した女性司祭の殺人事件(夏至の夜に女性司祭「ミルドレッド・ニルソン」が撲殺され、教会内に吊るされていた…)の捜査に関する情報を入手したことから、殺人事件の渦中に巻き込まれて行く… 序盤の展開はやや冗長でもどかしい感じですが、どんどん真相に近付いて行く後半は一気に読めましたね。


    キールナ警察の「アンナ=マリア・メラ」と「スヴェン=エリック・ストールナッケ」が活躍したり、「レベッカ」の亡くなった祖母の家のご近所さんの「シヴィング」が魅力的に描かれていたり、「モーンス・ウィングレン」が陰ながら「レベッカ」を見守っていたり… と前作での主要人物が登場する点は、シリーズ物の良さで安心感がありましたが、、、

    前作では犯人一味に一人で立ち向かいタフな女性として描かれていた「レベッカ」が、心と身体に、再び深い傷を負ったことが心配ですね… 作者が巻末の謝辞で『「レベッカ・マーティンソン」は立ち直る』と宣言していたので大丈夫だとは思いますが、次作では、悲しみから立ち直って欲しいなぁ。


    それなりに愉しめた作品でしたが、北欧ミステリは期待が高かっただけに何点か不満な点が、、、

    私の理解不足なのかもしれませんが、動機に納得感がなくスッキリしなかったんですよねぇ… 障害を抱えた息子の将来を案じていたことはわかるし、司祭の「ミルドレッド・ニルソン」の行動が、息子との家庭や狩猟会等における自身の立場を脅かしていたことが遠因なんでしょうが、それが二人の人物を殺すほどの動機になるのかなぁ。

    「レベッカ」は勘違いで犯人から瀕死の重症を負わされるのですが… それにしても、度が過ぎているような。

    死を覚悟した人物が、そこまでするのかなぁ。

    そして、「ミルドレッド」と「リサ・ステッケル」の関係… 女性グループ<マグダレーナ>教会の活動を超えた女性同士の関係、、、

    これが事件の真相にどう絡むんだろうなぁ… と期待しつつ読んでいたのですが、「リサ」がキールナの生活を捨てて飛び出しただけで終わっちゃう。

    うーん、この二人の関係って、本作の中でどれだけ意味があったのかなぁ。

    等々、ちょっと気になる点はあったのですが、500ページを超える大作で登場人物の人生がそれなりに描かれているから仕方ないのかな。


    章間に挿まれた『黄色い脚』のエピソードは、自然界で逞しく生きる雌狼の波乱万丈の人生が生き生きと描かれていて、著者の動物や自然への愛情の深さや知識が感じられましたね、、、

    「女たちだけの聖書勉強グループ」や「森の狼を保護するプロジェクト」等に象徴される「ミルドレッド」の進歩的な考え方や行動とリンク付けされた挿話なんでしょうが… もう少し、本編との具体的な接点があると印象的になった感じがしますね。


    次作も翻訳されているようなので機会があったら読みたいな。





    以下、主な登場人物です。

    「レベッカ・マーティンソン」
     弁護士

    「マリア・タウベ」
     レベッカの同僚

    「モーンス・ウィングレン」
     レベッカの上司
     
    「トーステン・カールソン」
     法律事務所の共同経営者

    「ミルドレッド・ニルソン」
     司祭

    「エリック」
     ミルドレッドの夫

    「ステファン・ウィクストレム」
     ミルドレッドの同僚の司祭

    「クリスティン」
     ステファンの妻

    「ベニヤミン」
     ステファンとクリスティンの息子

    「ベルティル・ステンソン」
     教区司祭

    「リサ・ステッケル」
     女性グループ<マグダレーナ>教会の会長

    「ミミ」
     リサの娘

    「ミッケ・キヴィニエミ」
     <ミッケのバー&ダイナー>のオーナー

    「ラース=グンナール・ヴィンサ」
     リサのいとこ。退職警官

    「ナッレ」
     ラース=グンナールの息子

    「トルヴョルン・イリタロ」
     狩猟クラブ会長。教会の森林管理人

    「マグヌス・リンドマーク」
     狩猟クラブ会員

    「アンキ」
     マグヌスの元妻

    「アンナ=マリア・メラ」
     キールナ警察の警部
     
    「スヴェン=エリック・ストールナッケ」
     アンナ=マリアの同僚の警部
      
    「フレッド・オルソン」
     同刑事
       
    「アルフ・ビョルンフォット」
     検事長

    「ロベルト」
     アンナ=マリアの夫 

    「シヴィング・フェリボリ」
     レベッカの隣人

  • 「オーロラの向こう側」の続編。

    前作で結果的に人を殺してしまったレベッカは休職中に、
    上司の出張に同行して故郷に帰ることに。
    森で心を癒すレベッカは殺人事件に巻き込まれる。

    またもや教会で惨殺死体が発見されるし、
    最後も悲しい結末だが、
    全体的には陰惨な印象はない。
    レベッカが立ち直ろうとしているからなのか。
    雌狼の話を初めとする自然の姿が描かれているからなのか。
    上司との関係が進むのか、進まないのかが気になる。

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