ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士(下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
- 早川書房 (2011年12月5日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (556ページ)
- / ISBN・EAN: 9784151792564
作品紹介・あらすじ
リスベットは回復しつつあった。ミカエルは様々な罪を着せられていた彼女を救うため、仲間を集めて行動を開始する。だが、特別分析班は、班の秘密に関わる者たちの抹殺を始めた。一方ミカエルは病院内のリスベットと密かに連絡を取り、有益な情報を得ようとする。そして、特別分析班の実態を調べる公安警察と手を組む、巨大な陰謀の解明に挑む。やがて始まるリスベットの裁判の行方は?驚異のミステリ三部作、ついに完結。
感想・レビュー・書評
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スウェーデンは福祉国家と言われているし、男女も平等で国民の幸福度も高い国だと勝手に思っていたけれど、実は虐待されていても闇に葬られている女性は沢山いるし、冷戦時代から引きずる欧米の国家間のドロドロドロドロとした歴史の中での裏社会と国家権力とのつながりみたいな黒歴史もあるのですね。もちろん、この小説はフィクションですがこの小説のようなことが起こりえるような社会だったのだと目から鱗でした。
作者スティーグ・ラーソンさんのジャーナリストとしての見識、洞察力が推理小説にリアリティや奥行きを与えています。
サランデルの双子の姉妹について気になりますが、もう、ラーソンさんの手による続編は読めないことが本当に残念です。
海外小説ってやっぱりその国の土壌でしか生まれないものだからよんでいて楽しいですね。観光したくなるような描写は少なかったけれど、例えば、登場人物たちが、さっとサンドイッチを作って食べるだけのシーンになぜあんなにもそそられるのかと思います。
読んでいる間はハラハラドキドキでしたが、読後はもう一度本の中の世界に帰りたくなります。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
三部作の第三部です。
解説者によれば、
「第一部が孤島ミステリーであり、サイコ・スリラーであったとするなら、第二部は警察小説&復讐小説であり、第三部はスパイ・スリラー&リーガル・サスペンス。つまりこの三部作にはミステリーのあらゆる要素がぎっしり詰まっている。まったくすごい小説があったものだ」
言い得て妙。いやはや、まったくすごい小説があったものです。
大円団へと向かうまでの「スパイ・スリラー」、そして大円団での「リーガル・サスペンス」。
圧倒かつ圧巻。 -
この数週間、ミレニアム3部作とともに幸せな時間を過ごした。多くの人が書いているように、1~3部、登場人物は同じで連続したストーリーであるのにそれぞれ全くちがった味わいでいちいち驚愕する(ちなみに3部はリーガルサスペンス)。
「3部に続く」とでも言いたげに2部が終わり、初めからハイペースな3部。…常套的に考えると、2部を引き継いでの物語かと思っていたら、いきなりのどんでん返し。
決して同じ歩調の物語は作らない、という作者の意気込みが強く感じられた。
これもまた、多くの人が書いているが、…かえすがえすも作者急逝が惜しまれる。
あぁ、読み終わっちゃった。ぬけがらの気分。 -
イヤ面白かった。一気読みです。
1のサイコサスペンス的な雰囲気
2の刑事ドラマ的雰囲気
とまた変わり3は諜報小説&リーガルサスペンス的な内容になっています。
この作家さんは多彩ですね。
読み終えた感想ですが「ちゃんと終わって良かった」が第一印象でした。
2の最後の感じだと、3も終わっていない状態になるのではと心配していましたが、今回は一応お話は終了しました。
解決されていない謎はありますでの作者は4以降で明らかにするつもりだったのでしょうが、今回のお話の筋には直接関係していませんので問題なし。
何度も書きますが、この作家さんは本筋に関係ない要らない内容の部分を無くせばもっと良いのに。
今回も、エリカがヘッドハンティングされた先のでストーカー騒動や、問題が解決されてからのリスベットの資金管理方法なんかは全然無くて良いと思うんですが。。。
まあ、面白いので文句を言っちゃうんですけどね。。。 -
数巻分たまった鬱憤を晴らす爽快さ
すべては この時のために
ただ 主人公がモテすぎる -
映画化されアカデミー賞編集賞も受賞した作品。
世界的に売れに売れた本の一つだが、著者は最後まで見ることなく死去。
悪魔崇拝者、レズビアンと呼ばれる女性は強く、一人で立ち続けている。
数奇な運目に飲み込まれ、多くの人に蔑まされながらも、ある意味で達観して戦い続ける。
洞察力と行動力のある記者とともに進み、その結果がわかる最終章。
こうあるべき、こうだろうという想像が、多かれ少なかれ人にはあるだろう。
それでもこの本の中でも、色メガネをかけていない人たちは、
彼女がおかしくないということを理解している。
多様性、尊重といわれる世の中で、どれだけの人がそのことを実践できているのだろうか?
その前に目の前の人にきちんと向き合えているのだろうか?
この本の本当のところは、目の前にいる人と理解、認識、許容し合い、
お互いにお礼を言えているのかという、根幹のコミュニケーションを言っている気がした。
以下抜粋
- 「ひとりのほうがいいわ。あまりしゃべらないならいっしょにいてくれてもいい。うちに来てセックスする気はないわよね?」
「ええっ?」とアニカ・ジャンニーニは言った。
「やっぱり。あなたは筋金入りにのストレートだものね」
アニカ・ジャンニーニは急に愉快そうな表情になった。
「依頼人からセックスに誘われたのは初めてよ」
「興味ある?」
「ごめんなさい。まったくないわ。でも、誘ってくれてありがとう」(P.508) -
第2部からの第3部が1番面白かった!
ミカエルの妹のアニカが法廷でテレボリアンをやっつけるシーンは痛快やった笑
一応、完結してスッキリはしているけれど、
著者が変わっての第4部と第5部が出版されているようで、
読むか迷うところだ…。 -
いろんな捜査チームが出てきて混乱しそうになったが無事に読みおおせた。別人によるシリーズ4を読むかどうかかなり悩む。
今回はエリカにも焦点が当たっていて、その話も楽しめた。男女平等なイメージがあるスウェーデンだけれど、実情はまだまだそうではないのだなと思わされた。
三部作を読み終えて、まだまだ性差別的な男性もいるけれどそうでもない人もいるという、当たり前のことが印象に残った。また、性差別に対する抵抗をけして諦めない強い女性が何人も出てくることに勇気づけられた。