開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU― (ハヤカワ・ミステリワールド)

著者 :
  • 早川書房
3.95
  • (219)
  • (275)
  • (187)
  • (22)
  • (9)
本棚登録 : 1737
感想 : 330
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152092274

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 皆川ワールド全開!!
    著者ご本人は、なんでもミステリーというカテゴリーを意識して描いてらっしゃるわけではないとのことですが、これは純然たるミステリー。
    前半、章ごとに焦点を当てられる人物が変わってゆく、その過程でだんだん人と人がこう繋がってゆきそして・・・というそのことだけでまず、皆川初心者の私は驚かされた訳ですが、後半、これでもか、これでもか!というひっくり返しに波間を漂う木の葉のように翻弄されまくりそれはもうめくるめく楽しい時間を過ごしたのでした。

  • ずっと読みたかったのですが、なかなか気がのらず。
    肌寒くなってきたからか、気分が向いたので購入~。

    一番後ろのページに「本書は活字が大きく読みやすい<トールサイズ>です」と書いてありますが、字、大きくないし、字の線が細い上に印刷(インク?)が薄くて読みにくかったです。近眼も老眼も乱視もなくて視力も裸眼で1.0以上あるうちに読んでよかったな~。

    解剖医とその弟子の話です。
    舞台はイギリス。18世紀。
    多くの女子と同じように中世ヨーロッパに憧れを持っていますが、実情は貴族のドレスのようには美しくないのですよね。
    衛生環境や人権、教育など劣悪すぎる。
    少し前に「パヒューム」という映画を見ました。
    イギリスではなく、フランスのパリが舞台ですが、18世紀のお話で、街並みや生活の実態などもほぼ同じだと感じたので、映画で見た映像を思い出しながら読みました。
    映画は月並みな言葉ですが、とてもリアリティがあり、匂いや空気(気温)の感じが見ているだけで感じられるようでした。
    その時代の人に見せても、映像の方がリアルだねと言われそうなぐらいの作りこみようで、生々しかったです。

    小説ですが、推理小説なので事件が起こり、過程を経て犯人がわかるのですが、話が二転三転し、結局最後まで結末がわかりませんでした。
    伏線の張り方(と書くとなんだか嫌らしいですが)も自然なうえ完璧で、後から「ああ、あの時そういえばそんなことを言っていたな」と、まるで当事者のように思っていました。

    結末は悲しく思いましたが、あの二人ならどう考えてもうまくやっていけそう、というか今以上に良い暮らしができそうなので、師匠と弟子5人の関係が壊れてしまうことがわたしとしては悲しかったのかもしれません。

    ふろく(?)として解剖ソングの歌詞と楽譜が載っています。
    機会があったら歌ってみよう(笑)

  • 舞台が18世紀ロンドン。最近、登場人物の識別に時間がかかるようになってきた私には、序盤が苦しかったです(苦笑)。 中盤以降は、誰が犯人なのか、次々と明かされる真実に何が何だかわからなくなって、最後はやっばりまんまと騙されていました^^ エドとナイジェルの真意が掴みきれなくて最悪なことも考えたけど、愛のある終わり方で良かったです。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「最後はやっばりまんまと」
      私も同じ、、、
      皆川博子は、ドロっとしているけど、何とも言えない可笑しみがあって。緻密に組み立てられたストー...
      「最後はやっばりまんまと」
      私も同じ、、、
      皆川博子は、ドロっとしているけど、何とも言えない可笑しみがあって。緻密に組み立てられたストーリーだったので、途中で止められませんでした。
      早く「アルモニカ・ディアボリカ」読まなきゃ!!
      2014/05/14
    • さらさん
      猫丸さん、こんばんは^^
      『アルモニカ・ディアボリカ』私も早く読みたいです。その前に文庫版の『開かせていただき~』を読んだ方がよいらしいの...
      猫丸さん、こんばんは^^
      『アルモニカ・ディアボリカ』私も早く読みたいです。その前に文庫版の『開かせていただき~』を読んだ方がよいらしいので、待ってる状態です^^;  皆川さんの他のお話も読んでみたいと思ってます♪
      2014/05/14
  • このミスで知った本。皆川博子は初めて読んだ。
    ぐいぐい読ませられた。久々に良い本を読んだという気持ちになれた。ミステリの肝である謎解きも良いが、それ以上に描写や設定が良かった。登場人物も魅力的だし、エドとナイジェルいいね。
    解剖シーンをもっと出して欲しかった…。あと二人の夜遊びについてももっと詳しく。
    この作者の本を追ってみようと思う一冊でした。

  • 舞台は18世紀のイギリス、という時代設定から、勝手に「薔薇密室」や「聖餐城」、あるいは「死の泉」や「伯林蝋人形館」のような雰囲気の作品を想像していたのだが、まったく空気感は異なり、どちらかというとシンプルで分かりやすいミステリーテイストに仕上がっている。
    といいながら、死体解剖や男色などの風味を効かせているところはいかにも“らしい”し、微妙にズレたカットバックを最後に帳尻合わせる構成力はさすがである。
    ただ、読後に覚える得も言われぬ作品のスケール感、という意味においては、「冬の旅人」も含め、先に挙げたような傑作群の方に分があるように思われる。
    いずれにせよ、皆川博子氏の筆力と懐の深さを改めて感じられる作品にはなっている。
    ナイジェルのバックグラウンドが結局最後まで明らかにされなかったことが、少し残念だ。

    2011年「このミス」3位に選ばれたことが影響しているのだろうが、この作品によって一気に皆川氏の認知度が高まったように見受けられる。
    齢80を超えた今、ようやく時代が追いついてきたのだろうか!

  • この著者の本はこれが初めてです。なんとなく雰囲気がいいな~、と思って手に取りました。
    最初、タイトルは『聞かせていただき光栄です』だと思ってたのですが、よく見ると『開かせていただき~』であり、実は死体の解剖を巡って起こる事件の話だったのでビックリ(笑)。表紙もよく見ると美しいけど怪奇的ですね。

    舞台は18世紀のロンドン。解剖教室を開いている外科医のダニエルと5人の弟子たちは、人体の仕組みの解明のため、墓から死体を盗んで研究を行っていたが、ある日、盗んだ死体を警吏に見つからないよう暖炉に隠したところ、その暖炉から見覚えのない別の死体が発見されて・・・といった話。

    作品の雰囲気が独特な上、登場人物の名前がなかなか覚えられないので挫折しかけましたが、慣れると結構楽しいです。
    18世紀のロンドンの様子があまりにも残酷。すごい格差社会であり、貧しい者はまともな裁判を受けることができず、ひどい待遇となっても文句を言うことすらできません。これは、そんな世界を生きる少年の物語。

    そんな腐臭の漂ってきそうな雰囲気の作品ですが、残酷なのにどこか滑稽な趣があり、しかもなぜか上品な感じのする物語です。
    例えていうなら、マザー・グースの詩みたい。理不尽だけど美しい、そんな作品でした。

    • たまもひさん
      蒐さんこんにちは。
      そうそう「上品」!これですよ、私が感じてたのは。
      皆川さんの書かれるものは、素材としてはかなり陰惨なものばかりなのに...
      蒐さんこんにちは。
      そうそう「上品」!これですよ、私が感じてたのは。
      皆川さんの書かれるものは、素材としてはかなり陰惨なものばかりなのに、品格があるんですよねえ。
      私は「死の泉」が一番好きです。
      2011/10/27
  • 初めて読む作者。18世紀のイギリスを舞台にしたミステリ。エンターテイメント。同時に当時の風俗も窺い知ることができる。また登場人物の性格やイマドキの若者のような軽妙な会話のやり取りに親しみやすさを感じ、そのギャップが面白い。
    事件前と後のエピソードが交互に語られるため、核心に迫りそうになるたび、話が切り替わり、著者の意図するところとは分かってはいても焦ったく感じた。
    おすすめされていた理由がわかる!プロフィールを読んで驚きました。1930年生まれ。お書きになった時は?え??しかもこちらは三部作の一作目とのこと。今も作家活動されてるようでさらにびっくりです。残りの二作品も読んでみたい。

  • はじめの方は、複雑な文章に慣れる事が大変だった。しかし、ダニエルと5人の弟子の解剖へ対する考え方や姿勢が素敵だった。

    18世紀のイギリスの最悪な裁判の仕組み、治安の悪さ、ダニエルと5人の弟子と治安判事の信頼性など、様々な人間模様が描写されていて引き込まれた。人を無条件に愛せるのか、塾考した。普段は社会福祉に関わっているので。

  • 解剖についてのお話だったり凄く興味深いお話でいて皆川博子様の作品にはいつも驚かされ文章の力やストーリー等について脱帽の一言に尽きます(^。^)

  • 最初から死体が3体も出てきて、しかも解剖とか言うから、グロいのが苦手な自分に耐えられるかと心配になったが、そういう描写は少なく、読み進めることができた。むしろ前半はなんだかのどかな感じで、このままのほほんと進んで行くのかと思いきや、段々一体誰を信じたらいいの?という状態になり、後半は怒涛の展開。最後まで気が抜けなかった。

全330件中 11 - 20件を表示

著者プロフィール

皆川博子(みながわ・ひろこ)
1930年旧朝鮮京城市生まれ。東京女子大学英文科中退。73年に「アルカディアの夏」で小説現代新人賞を受賞し、その後は、ミステリ、幻想小説、歴史小説、時代小説を主に創作を続ける。『壁 旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞を、『恋紅』で第95回直木賞を、『薔薇忌』で第3回柴田錬三郎賞を、『死の泉』で第32回吉川英治文学賞を、『開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―』で第12回本格ミステリ大賞を受賞。2013年にはその功績を認められ、第16回日本ミステリー文学大賞に輝き、2015年には文化功労者に選出されるなど、第一線で活躍し続けている。

「2023年 『天涯図書館』 で使われていた紹介文から引用しています。」

皆川博子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
麻耶 雄嵩
恩田 陸
小川 洋子
川上 弘美
皆川博子
伊坂 幸太郎
法月 綸太郎
貴志 祐介
皆川 博子
三浦 しをん
伊坂 幸太郎
ウンベルト エー...
綾辻 行人
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×