それをお金で買いますか――市場主義の限界

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152092847

感想・レビュー・書評

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  • バイアティカルの醜悪さと、生命保険との意外な近さ。それでも厳然としてある違い。等々、お金で評価することそれ自体が価値を壊してしまうお話。

  • 大学時代からなんとなく気になっていたのに今まで読まずにいた一冊。最近の俺の情緒不安定さを沈静化させるためにいざ読もうとやっと決心。
    予想通りなかなか面白く示唆にも富んでいた。ただ、いつも思うんだがこの人って新自由主義・市場主義vs倫理・道徳主義の両観点について言及するけどあんまし自分の考えを明言はしないのが残念。うっすら倫理・道徳主義とは言っているが俺はこいつは結構腹黒いのではないかと勝手に思っている。まあ話が面白いから堂でもいいのだが。

    なんてことで、久しぶり(?)の星4つ。次回作にも期待。

  • 消費者の立場に立つと、我々の生活が徐々に市場主義に冒されてきたことを思い知らされる一冊です。
    その一方で、企業の立場に立つと、市場主義の蔓延の片棒を担いできたことも、思い知らされました。

    なお、この本のキーワードは「善」「公平性」「腐敗」。
    すべての説明において、これらがしっくりきたわけではないですが、少なくとも、そういう視点から見えてきた市場経済の姿は、今後、消費者の立場としても、企業の立場としても、参考になりそうです。

  • マイケル・サンデルの新著。正義について考えた前著に比べて、市場主義が倫理的に(正義的に?)考えて、どれだけ正しいかを検証している本。

    前著の方が多くの哲学的な問題を例題を通して考えさせるような気がしたが、今回は市場主義ということで新しいことと、人間の根幹にかかわるよりも、今の少し頭の良い人がお金に換算して、考えてしまう方法についての考察かなと思った。

    全5章を通して1つ言えるのは、世の中の事象では、お金に換算してはならない領域があるということは確かだと思った。あとは答えがないグレーゾーンがあることもまた確かだと思った。

  • 2013.03.07

  • 最初は、「お金を使わず丁寧に生きる」啓もう書の類だと思って、サンデル先生ってそんなことも書いてるんやと読み出したら、ちょっと違う内容。

    なんでもお金で買える世の中なんだなぁ、せやけど、それを売ったらアカンのとちゃうか?ってそういう本である

    ・絶滅危惧種黒サイをハンターが撃つ権利
    ・主治医の個人携帯に24時間電話をかける権利
    ・名門大学への裏口入学権
    ・ジャンキーが避妊手術を受ける
    ・妊娠代理権
    ・遊園地での行列割り込み権
    ・渋滞時に優先車線を走る権利
    ・消防車やパトカーに広告を載せる権利
    ・学校を含ぬ公共施設の命名権
    ・高齢有名人がいつ死ぬかをかけるギャンブル
    ・難病患者の生命保険を買い取る権利

    これらすべて実話、金がすべての世の中になってきているなぁとうんざりげんなりしてしまう。先生は何が問題かという考えのヒントはくれるが、解決策を提示してくれるわけではない。そこは考えろという突き放し方なんだろう。

    「そこには金を使いたくない、そこに金を注ぎこむあの会社の商品は使いたくない」そういう価値観をもって各個人が金の使い方をしっかり考える。今できることはそれなんだと思う。

    そこはもう個人的な価値観の世界である。後は広告に惑わされないようにする。世の中広告が多すぎて俺たちの感性がマヒしてるところは否めない
    、意識して広告に浸りすぎない環境に身をおいてみることも大事じゃないかと思う。

    良く考えると、冒頭の「お金を使わない素敵な生き方」って類の本も、2000円ほどのお金を使って買うようになっているのが資本主義・市場主義の世の中である。矛盾や違和感なんてどこにでも溢れるぐらいに転がっている。

  • 本書であげられる事例はかなり論争的なもので、多くの人が不快を感じると思う。
    でも「不快だ」で終わってしまわずに、その不快感は何に由来するものなのだろう、と考える。そして、そこにある経済と道徳の本質的な問題を浮かび上がらせる。
    それは著者の真骨頂でもあり、哲学のエッセンスだとも思うんだ。

    哲学の「有用性(いい言い方ではないけど)」を感じることができる。
    「正義」の頃はなんかタレントみたいな扱いで一般にも「ああ、なんかテレビでてるおじさんね」みたいな雰囲気が漂ってしまった感があるんだけど、実はすごい人なんですよ、サンデル先生は。

  • なんでも売れる世の中。売買できるもの、できないもの、できるけどしてはいけないものに分類し、自由、平等・公正、道徳・腐敗の観点から論じている。具体例が豊富でわかりやすい。

    幼稚園の迎えに遅刻すると罰金を課す制度にしたら返って遅刻する人が増えたとか。延長料金と解釈されてしまったのね。

    モラルは下がるのか、道徳の概念が変わるのか、売ってはいけないものの範囲は今後もどんどん狭まるのだろう。

  • 市場効率を突き詰めていくとどうなるか。今最もそれが進んでいるアメリカにあって、さまざまな事例を紹介しながら如何にそうした行為が人々や社会の規範を貶め、美徳を損なっていくかを示唆していく。日本だって今後同じような道をたどっていくのかそれはわからない。日本ではサンデルさんの役割を内田樹さんが担っているように思う。まだ内田さんの本が売れているうちは日本人の道徳観もまだ捨てたものではないと思うのだが・・・。

  • 昔では考えられなかったようなものが、
    現在においては市場取引の対象となっている。

    本書で例に挙げられているのは、
    道徳的に問題があるような商品ばかりなのだが、
    効用があることを考えると
    絶対にだめなものだとは否定できないなぁと。

    あと、金銭的インセンティブがかならずしも有効ではないという事例は
    非常に興味深い。

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著者プロフィール

1953年、アメリカ合衆国ミネソタ州ミネアポリス生まれ。アメリカ合衆国の哲学者、政治学者、倫理学者。ハーバード大学教授。

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