それをお金で買いますか――市場主義の限界

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152092847

感想・レビュー・書評

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  • なかなか難解な一冊でした。

    社会経済と道徳をどう考えるかというのが本書の大きなテーマ。

    その中で、第1章では「行列に割り込む」、第2章では「インセンティブ」、第3章では「いかにして市場は道徳を締め出すか」、第4章では「生と死を扱う市場」、第5章では「命名権」を例にあげ、経済学的に金銭でそれを購入することと、道徳的にそれはどうかということを論じている。

    奥が深すぎる。

    説明
    内容紹介
    国民的ベストセラー『これからの「正義」の話をしよう』のサンデル教授、
    待望の最新刊登場! 現代最重要テーマに、教授はどう答えるか?


    結局のところ市場の問題は、実はわれわれがいかにして共に生きたいかという問題なのだ。
    (本文より)

    私たちは、あらゆるものがカネで取引される時代に生きている。民間会社が戦争を請け負い、
    臓器が売買され、公共施設の命名権がオークションにかけられる。
    市場の論理に照らせば、こうした取引になんら問題はない。売り手と買い手が合意のうえで、
    双方がメリットを得ているからだ。
    だが、やはり何かがおかしい。
    貧しい人が搾取されるという「公正さ」の問題? それもある。しかし、もっと大事な議論が欠
    けているのではないだろうか?
    あるものが「商品」に変わるとき、何か大事なものが失われることがある。これまで議論され
    てこなかった、その「何か」こそ、実は私たちがよりよい社会を築くうえで欠かせないも
    のなのでは――?
    私たちの生活と密接にかかわる、「市場主義」をめぐる問題。この現代最重要テーマに、国民
    的ベストセラー『これからの「正義」の話をしよう』のサンデル教授が鋭く切りこむ、待望の最新刊。
    著者について
    マイケル・サンデル(Michael Sandel)
    1953年生まれ。ハーバード大学教授。専門は政治哲学。ブランダイス大学を卒業後、オックスフォード大学にて博士号取得。2002年から2005年にかけて大統領生命倫理評議会委員。1980年代のリベラル‐コミュニタリアン論争で脚光を浴びて以来、コミュニタリアニズムの代表的論者として知られる。類まれなる講義の名手としても著名で、中でもハーバード大学の学部科目「Justice(正義)」は、延べ14,000人を超す履修者数を記録。あまりの人気ぶりに、同大は建学以来初めて講義をテレビ番組として一般公開することを決定。この番組は日本では2010年、NHK教育テレビで『ハーバード白熱教室』(全12回)として放送されている。同講義を著者みずから書籍化した『これからの「正義」の話をしよう』は、日本をはじめとする世界各国で大ベストセラーとなった。

    訳者略歴
    鬼澤 忍(おにざわ・しのぶ)
    翻訳家。1963年生まれ。成城大学経済学部経営学科卒。埼玉大学大学院文化科学研究科修士課程修了。おもな訳書にワイズマン『人類が消えた世界』、サンデル『これからの「正義」の話をしよう』『日本で「正義」の話をしよう』(以上、早川書房刊)『公共哲学』、バーンスタイン『華麗なる交易』など多数。

  • やはり、深い著書だった。
    一つひとつの事象を突き詰めると、お金で買って良いものと良くないものがあることがわかる。

    普段、そのことを意識することができない。
    市場の力は、とてつもなく強い。
    意識することが、大切。

    市場は立派な嗜好と低俗な嗜好を区別しない。
    オフセットは危機をもたらしたりもする。
    購入者が気候変動に対してそれ以上の責任はないと考えてしまうのだ。

  • 社会の仕組み、在り方、正義について、誰かに教え込まれるのではなく、自身で考える力を身に着ける礎になると思います。

  • さすが自由の国アメリカ、経済至上主義の何でもアリ感が突出していて笑えてしまう。何でもカネにかえてしまう品の無さは華人の比ではないと感じた。テーマとしてはどこの国にも通ずるものはあるが、歴史や伝統が薄い国では道徳の規範も緩いのかもしれない。
    高名なマイケル・サンデル自身も、図書館で延滞したら申し訳なく感じるが、レンタルビデオ屋なら延滞料払うから遅れても良いだろう、との認識である。日本人の道徳観であれば返却の約束を守って然るべきかと思うが・・
    サブプライムローンも金融会社の何でもアリが原因であって、お金儲けが全てという道徳性の低下は社会全体に悪影響を与える。
    「これからの正義について・・」よりも読みやすいと思った

  • 組織としても個人としても向き合うべきテーマだと思う。
    まだ途中だが、お金を払う事で様々な事が腐敗していくという点は、共感する。

  • タイトル通り、世の中にこれをお金で買うものなのか?何が問題なのか?
    考えさせられる。
    需要と供給という経済観点だけで片付かないことが多すぎる…

  • 値段がつかない、つけられないものにも広告や先物としての価値を見出だし、間接的に値付けされ始めている現実を問う。
    「ランナーがホームイン。セーフです。
    安全と安心の、ニューヨーク・ライフ」
    興ざめしてしまう中継中の広告が、当たり前と感じる世界になるのか。

  • 生命保険まで証券化してしまうアメリカの現状は驚きだが、
    全般的に読みづらい。翻訳者のせい???

  • お金で買えるものは何か、お金で買うべきでないものはあるか、あるとすればそれを決めるのは何か、そんなお話。
    世界では突拍子もないものに値段がついている。驚くような例がたくさん出てきた。

    一番印象に残っているのは、「薬物中毒の女性が不妊手術か長期の避妊処置を受ければ、300ドルの現金を与える」という慈善団体の話。その目的は不幸な赤ん坊の誕生を未然に防ぐこと。
    当然ながら、猛烈な批判の声がある。では何が問題なのか?と議論を深めていく。

    また、値段を設定することで、意図した効果の真逆になることもある。
    ・(イスラエル)保育園の迎えに遅刻する親が多い問題に対し、罰金制度を設けた結果、遅れる親が増えた。お金を払うことで後ろめたさが消え、延長料金で延長する権利を買っている感覚になっている。
    ・(スイス)ある山村で、核廃棄物処理場の建設を受け入れるか?というアンケートを取った。条件なしの場合と、村民への補償金を提示した場合とで、なんと後者の方が賛成は激減した。公共心(国に貢献する気持ち)が浸透している場では、金銭的インセンティブは逆効果になることがある。自分は賄賂に動かされたりしない、と。

  • マイケル・サンデルによる、経済的合理性の追求が、人間本来の倫理観や慈しみを腐敗させていくという論の本。

    帯からして、重厚なメッセージ。
    「金融危機の際に『強欲さ』が一定の役割を果たしたことは確かであるものの、問題はもっと大きい。この30年のあいだに起こった決定的な変化は、強欲の高まりではなかった。そうではなく、市場と市場価値がそれらがなじまない生活領域へと拡大したことだったのだ。
     こうした容共に対処するには、強欲をののしるだけではすまない。この社会において市場が演じる役割を考え直す必要がある。市場をあるべき場所にとどめておくことの意味について、公に議論する必要がある。この議論のために、市場の道徳的限界を考え抜く必要がある。お金で買うべきものが存在するかどうかを問う必要がある。」

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著者プロフィール

1953年、アメリカ合衆国ミネソタ州ミネアポリス生まれ。アメリカ合衆国の哲学者、政治学者、倫理学者。ハーバード大学教授。

マイケル・サンデルの作品

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