機龍警察 自爆条項〔完全版〕 (ハヤカワ・ミステリワールド)

著者 :
  • 早川書房
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感想 : 33
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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152096173

作品紹介・あらすじ

英政府高官を狙うかつての古巣からの刺客が、特捜部の契約する〈傭兵〉ライザ・ラードナー警部の凄絶な過去を呼び覚ます。人気の高いシリーズ第二作が大幅加筆と特別付録収録の完全版として登場

感想・レビュー・書評

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  • またコロナが増加傾向にあるようですね
    コロナ前の状況に社会が戻ることってもうないんですかね

    例えば先日も同僚が熱を出して休んだ(コロナではなかった)んですが、以前だったら38度くらいの熱だったら出勤しちゃってましたよね
    むしろそれくらいで休むなんて甘えるな!なんて言われた時代もありました
    今はもう出勤したらえらい言われちゃいます
    会社の方から言われちゃいます「休め!」って

    『昨日高熱 自宅療養』なんちて

    さて『機龍警察 自爆条項』です

    今回は元テロリストのライザにスポットが当たっています
    そして過去の章と現在の章が交互に進むんですが、過去の章に文字通り爆弾が仕掛けてありましたね
    凄いです

    そして本作では北アイルランドの非常に特殊な社会情勢を知っているとさらに深く楽しめると思います
    ブラディサンデーのこととか
    エイドリアン・マッキンディとか読むと凄いいいと思います
    北アイルランドの曇天の空、プロテスタントとカソリックのこと、テロリストやその家族が普通に隣人としていることとかを理解することはできなくても知ることで作品世界により入り込むことができます

    そして本作で印象深いのは対比を多く使ってるところですよね
    現在と過去の章立てもそうです
    テロによって家族を失った技術班主任の鈴石緑とライザ
    緑とライザの妹ミリーは音も意識的に似せてますよねきっと
    そしてそしてライザのテロリストとしての父ともいえるキリアン・クインの書いた詩集と緑の父輝正の残した旅行記『車窓』
    この対比は物語の核になってます

    もちろん『車窓』のほうにより共感するわけです

    ー国境を越えるとき、私はいつも人と人とを隔てる真の境を思う。この境は、国の境とは必ずしも一致しない。それは幸福であるとも言えるし、不幸であるとも言える。
    人はなにかによってお互いに常に隔てられている。

    この一節は北アイルランドの状況を暗示しているとも言えるし、同時に全世界で起きている「分断」も示していると思います

    ー列車の中では誰もが互いに異邦人である。それはこれから知り合える可能性を意味している。未知の友人は常にいる。

    知り合えるということは理解しあえるということだと思います

    ーこうして列車に揺られていると、友人になれるはずだった人が不意に車輛のドアを開けて顔を覗かせ、声をかけてくるような、そんな気がすることがある。

    隣人は常に同じ列車にのっている。声をかけるのは自分からでもいいはず

    ー幻の友人達に感じるこの懐かしさはなんだろう。まだ出会ってもいないのに。きっとそれは人間本来が持っている寂しさであり、他者への慕しさだ。
    ー一番悲しむべきことは、本来なら友人になれるはずの人とそうなれないことだ。

    自分はこの言葉に静かな感動を覚えました
    そして友人になれない人などいないと思う
    全世界の人が本来は友人になれる人なのだと
    現実を知らないだけだと笑われても、頑なにそれを信じる人が増えればきっとそれが現実になる


    そしてライザはこの本によって「自由」を知ります
    流した涙は後悔?解放?


    いやー本当に面白かった!!
    自爆条項と附則項目を知った傭兵3人の関係、ライザと緑の関係がこれからどう変化していくかますます楽しみ!!

    • 松子さん
      ひまさん、おはよ(^^)
      メモ取りながら本を読んだのが何十年ぶり⁉︎
      そのメモ見たーい!
      どんな風にこんな感想が生まれるのか、気になります
      ...
      ひまさん、おはよ(^^)
      メモ取りながら本を読んだのが何十年ぶり⁉︎
      そのメモ見たーい!
      どんな風にこんな感想が生まれるのか、気になります

      ライザとキリアンの対比かぁ
      テロを題材とする作家さんの苦悩、
      考えた事なかったなぁ…深くて興味深い!

      作家さんの価値観や性格が伝わってくるなぁと
      思うことはあったけれど、書く苦悩は考えた事なかった!

      確かに、ライザとキリアンがいる事で
      人の大切な命を何とも思わない人、自分のやっている事をちゃんと理解できずにテロリストになってしまった人、色々なテロリストがいる事が伝わってきたなぁ

      ひまさん、読書って奥深いねぇ(^^)
      ひまさんみたいに読めたら、もっと感動が大きくて世界が広がるんだろうなぁ。

      私も少しずつでも世界を広げて行きたいな
      そしたら、もっともっと読書が楽しくなるもんね♪
      朝からいっぱい教えてくれてありがとう(^^)
      はいっ!次行きまっす

      こちらはにわか雨が降ってきたー!
      ひまさん、毎日暑いけど夏バテしませんように
      楽しい日曜日を〜(^^)
      2022/07/03
    • 土瓶さん
      ひまわりめろんさん。こんにちは。
      油断できないな~。
      普通の”入り”だと思ったのに……。
      ひまわりめろんさん。こんにちは。
      油断できないな~。
      普通の”入り”だと思ったのに……。
      2022/07/03
    • ひまわりめろんさん
      土瓶さん
      こんちは!

      油断大敵!
      注意一秒怪我一生!
      土瓶さん
      こんちは!

      油断大敵!
      注意一秒怪我一生!
      2022/07/03
  • 機龍警察シリーズ第2弾。

    アイルランドの過激派テロ組織・IRFが、極秘要務で来日するイギリス要人・サザートンを暗殺しようとキモノ(機甲兵装)を日本に密かに(かつ大量に)持ち込んだ。その首謀者は超大物テロリスト〈詩人〉ことキリアン・クイン。

    機甲兵装『龍機兵』のパイロットの1人、ライザ・ラードナーは、IRFの元テロリスト。かつてキリアンの下で暗殺者として数々の同志を処刑したが、組織から逃亡し今は裏切者として狙われる身でもある。今回のキリアン来日の目的の一つは、裏切者ライザの処刑だ。

    東京で進行するテロ計画とそれを阻止しようとする特捜部の動き、アイルランドを舞台としたライザの過去(生い立ち、テロリスト誕生)の2つの物語が重苦しく交互に進行する。

    独自捜査を続けるも、例によって警察組織内でつま弾き状態にされる特捜部。だが、沖津部長の政治力で外務省・官邸をも捲き込んだ厳重な警備体制の一角に食い込むことができた。

    謎が謎を呼ぶ複雑な展開、荒みきったアイルランド社会のやるせない状況、シリアのテロリスト養成機関での過酷な戦闘訓練、龍機兵(ドラグーン)の緊迫した戦闘シーン、そして明かされる龍機兵パイロットに課された『自爆条項』等々、読みどころ満載の作品だった。

    が、後半で突如浮かび上がった新たな〈敵〉、彼らは一体何者なのか? IRFや中国黒社会を手玉にとった〈敵〉の狙いは一体何なのか? この辺りが全く分からなかった。香港の実業家・馮やその秘書で裏社会と通じる關の思惑は? そしてそもそも龍機兵はどこでどのように手に入れた兵器なのか(自爆条項を付けなければならない程の機密とは)?

    謎が深まってきて、モヤモヤしているうちに終わってしまった。続篇を読めば解消していくのかな??

    • アールグレイさん
      norisukeさんこんにちは(^_^)/

      結末がスッキリしないのは、イマイチでしょうか?(。_゜)
      続編がでればいいですね!
      (*^o^...
      norisukeさんこんにちは(^_^)/

      結末がスッキリしないのは、イマイチでしょうか?(。_゜)
      続編がでればいいですね!
      (*^o^*)
      2022/08/09
    • norisukeさん
      アールグレイさん、コメント有難うございます。

      この機龍警察シリーズ、機甲兵装という懐かしいSFアニメ風の作品ですが、硬派で重厚なミステ...
      アールグレイさん、コメント有難うございます。

      この機龍警察シリーズ、機甲兵装という懐かしいSFアニメ風の作品ですが、硬派で重厚なミステリー・サスペンスとしても楽しめると思います。星4つ付けました。ただ、〈敵〉の存在を臭わして読者を混乱させる必要はなかったんじゃないかなと、僭越ながら感じた次第です。シリーズは「龍機警察 暗黒市場」「龍機警察 未亡旅団」「龍機警察 火宅」「龍機警察 狼眼殺手」「龍機警察 白骨街道」と続いているようですので、読み進めて見ようかと。
      2022/08/09
    • アールグレイさん
      norisukeさん♪

      シリーズ本、何冊もあるようで・・・・
      大変そう、などと思ってしまいました・・・失礼
      ( ̄∇ ̄) 暑い日が続きます。...
      norisukeさん♪

      シリーズ本、何冊もあるようで・・・・
      大変そう、などと思ってしまいました・・・失礼
      ( ̄∇ ̄) 暑い日が続きます。溶けそう~
      ヘ(^^ヘ)))。。。
      2022/08/09
  • オーディブルで。途中のライザの周りの人々の切ない話、に沈痛な気持ちになる。後半のスリリングな展開は、テロの卑劣さと恐怖、本当に手に汗握る感じと、悲しくて残酷な最後を想起させられたが、最後の見たことのない穏やかな表情で鈴石の父の本を読むライザとそれを目撃する鈴石主任に、すごく救いを感じて、思わず涙が出てしまった。

    テロには、その背景があるのはわかるが、血で血を洗う出来事の繰り返しになるだけ。人は人を許す存在であるべきだと思う。

  • 機龍兵搭乗員で元アイルランドのテロリストであるライザ・ラードナーを軸に展開する。

    架空のテロ組織IRFによるテロ行為やそれを反映した本書でのアイルランドの歴史は架空のものだが、あたかもパラレルワールドのように実在感を伴い自然に提示される。

    ライザがテロリストとなった経緯、テロ組織から追われ警視庁特捜部に加わった背景も納得的で説得力がある。

    何よりIRFが東京で起こすテロやそれを解決していく流れは、IRF(やその首魁である「詩人」)、特捜部、ラードナーそれぞれの生き様というか存在意義を伏線としたもので、これらを余すところなく文面に表現した作者の構想力と筆力には戦慄を覚える。

    2作目にしてシリーズ最高作と思えるが、3作以降も読まないとそれはわからない。

  • 最高です

  • 今回の相手はIRFのキリアン。当然、ライザをフィーチャーした話でした。突入班の中でライザが一番好きだな。敵との心理戦は少なかったのは残念。

  • 機龍警察シリーズ二作目。ライザ編って感じ。
    テロリストになる以前からの過去がガッツリ描かれている。かなり救いのない話。
    ライザはメタルギアのフォーチュンぽいなあと思ってたけど全然違った。キツイ過去があって、後悔があって、死にたがりで、でも逃げてるようで踏みとどまってて。

  • ライザメインのお話
    題材はラノベっぽいが、具体的な地名や、北アイルランド問題、中国黒社会などリアルな敵の描写が、ラノベと一線を画すところか。
    特捜部メンバーが好みなので読んでいくが、相変わらずのその他警察の貶めっぷりは嫌い。

  • ライザーラードナー警部の過去の話を織り交ぜつつ、現代のテロ犯罪と立ち向かう話と交互に進んでいきます。

    最後に自爆条項の詳細が明らかになり、驚きました。
    確かに、警察官以外の人間が選択されるわけだなぁと。

  • ライザ・ラードナー警部の壮絶で悲しい生い立ちに絶句してしまう。
    テロリスト キリアンの計画は緻密で、最後まで全貌が分からない。著者はテロリスト的思考ができるのか、友人にテロリストがいるのではないかと疑ってしまう。

  • ある意味”死に急ぎ”のラードナー警部の悲しい過去が詳らかになった。そして鈴石緑の過去も…
    次作以降の情報は敢えて入れていないので、ユーリ警部か姿警部の過去に触れると予想しています。

    最終シーンの警察署爆破がキリアン・クイン奪取作戦だろうと思った読者は私だけでは無いと思う。
    完全に読み違えました。

  • 面白くなってきた

  • 前作を遅まきながら読んで、まるでハードパトレイバーという事で大歓喜でした。
    警察小説としてもかなりの面白さなので、ロボットもの~?と懐疑的な人にも是非読んで頂きたい作品でありました。
    本作は、3人いる機龍の乗り手の一人。ライザ・ラードナーのテロリストとしての過去がメインでがっつりがっつり書かれているとても重要な巻です。
    機龍の中でも一番印象深い純白の「バンシー」に乗り込む彼女の来歴が、これでもかと描かれるので興味が無い人には非常にきついかもしれません。
    でもこのバックボーンの書き込みが分厚いので、僕は機龍警察を読んでいる事を忘れて、テロリストの悲しい半生を読んでいるような気持になりました。
    彼女が何故、テロルに身を投じたのか。そして組織を脱走して今は警察に所属しているのは何故か。そこが全て明かされます。
    当然戦闘シーンも最後に盛大に行われます。読むごとにこれを映像で見たいなとムズムズします。せめて設定書で姿だけでも見ることができれば!!
    ちなみアイルランドのテロリストたちが乗っている首無しの機甲兵装「デュラハン」は絶対ズゴックだともいます。もしくはパトレイバーのキュマイラ。

  • 主要登場人物の生い立ちを絡めた展開が柱。
    その部分に結構ボリュームがあって、正直ちょとうぜえと思って読んでいたんだが、最後に至って、やはり必要であったかと。

    機甲兵装のの戦い自体は二の次でよく、様々な組織、思惑、展開などで面白く読ませる。
    最低限のSF設定が現実に絡みついて、程よい。

  • 10月-16。3.5点。
    機龍警察第二弾。アイルランド出身の女性刑事に焦点を当てるストーリー。元テロリストの出自、逃亡の理由など。
    引き込まれるストーリー、スピード感あり。

    次作も期待。

  • 機龍警察シリーズの第二作目。完全版が出ているとあって、そちらを読んだ。機甲兵装を使う龍騎兵…つまり操縦者の一人、ライザ・ガードナーの過去を主軸に、お話が展開されていく。彼女はアイルランドのテロリストだったが、今は警視庁に雇用されて龍騎兵になっている『兵隊』。彼女の過去を知る大物テロリストの魔手が、東京に伸びている。その目的は―。というお話。

    警察・あるいは何らかの戦闘・諜報組織の活躍するお話を読みたかったのだが、久しぶりに読んで大満足。月村さんは上手な執筆者だけど、すこし筆にあざとさがある気がしていた。今作ではそれが綺麗に払拭されていて、重厚なお話にグイグイ引き込まれていく。ライザの過去は特にそう。詩情があって、とても繊細だ。戦場や暗殺、テロが描かれているのに、とても悲しい。

    敵の大立者、キリアン・クインの最期は、もっと違った展開でもいい気がするが、機龍警察が追う事件の薄暗さ、怖さが引き立って、あれでもよかったのかもしれない。戦闘場面の迫力もさることながら、警察内部・関係する官公庁の、人事・政治的駆け引き、沖津さんという、組織のリーダーの魅力なども、たっぷり読ませて、組織小説・冒険・スパイ小説としても楽しませてくれるのがいい。

    戦場における冷徹と、捜査官たちの人間味のバランスも非常に良くて、人物に感情移入するシリーズの醍醐味を、2作目にしてたっぷり味わわせてくれる。彼らは人が死ぬことや傷つくことを容認しているわけではなくて、兵装を纏ってなお、脆いいのち。しかも罪なき人の命が散ることへの怒りをちゃんと持っている。壮絶な、ある覚悟を持って、戦っている人々だから。そこがたぶん、読んでいて嫌にならないところ。そして、敵であるテロリストさえも、同様に儚い。そこを見逃さずに描いているから、重いお話なのに次も読みたくなるのかな。

    ともかく、読むかどうしようか迷っている方、1作め読んで、そうでもなかったなー、って思ってる方。ここからぐっと面白くなりますから、ぜひぜひ読んで下さい。読み終わるまで止まりませんよ。

  • 超一級品のエンターテイメント作品。
    普段あまり読まないタイプの設定だったが、お見事なストーリー展開と確かな筆力にぐいぐいと引き込まれた。ラスボスのキリアンクインを含むIRF一味のあっけない最後には物足りなさを覚えたものの、それ以外の部分、特にライザ-ラードナー警部の人間ドラマには機微もあり重厚で、その痛みを十二分に味わうことができた。
    ところどころの何気ない文章、フレーズも秀逸。すごい作家さんだな、と感嘆した。
    ミリーと緑。意図的な命名に違いないが、「運命」の演出はとても効果的だ。

  • 機龍警察の2作目。月村さん女戦士書かせたら抜群に冴える。今回はアイルランドの元テロリスト、ライザ・ラードナーの過去を軸に物語が進んでいく。

    機甲兵装つまり人間が乗るタイプの戦闘用ロボットが、このシリーズのツボなんだけど、このロボットがこれまで他に出てきたガンダムなどのモビルスーツより案外、脆弱なのが面白い。銃で撃たれたり、ナイフで刺されたりして中に乗っている人間が割と簡単に死んでしまう。人間が乗るところを、もっと固くガードしてしまう設計になっていればいいんじゃないの?という疑問はあるけど、人間がいるところを狙ったらOKみたいな、頭を刺せばゾンビは死ぬみたいなところがいいのかもしれない。

    次作も読む。

  • 機龍警察第2弾、いよいよ勢いに乗ってきてボリュームが増大するのが本作かららしい。確かに勢いがあり、読んでいてもその圧が感じられた。

    本作の主人公は、メイン人型兵器「機甲装兵」搭乗者の一人、ライザ・ラードナー。彼女には北アイルランド独立機関のテロリストIRF活動家としての過去があった。そのIRFの最高幹部、銀髪詩人の異名を持つ「キリアン・クイン」が彼女と日本の警察に迫る。

    ライザの過去と、IRFと日本警察の戦いが縦横の糸となり、重装なタペストリーを織りなす。スピード感と閉塞感それぞれの緊張感が続き、ページを繰る手が止まらない。

    鉄腕アトム鉄人28号に端を発する人型兵器(所謂ロボットモノ)は、日本を中心に数えきれないほどの名作を生み出してきたが、この作品もその1つなり、またSF小説、冒険エンタメ小説としても歴史に残る傑作になった。
    続編まだまだ刊行済、そして新作予定もまだまだあるらしく、大いに期待して追いかけていきたい。

  • シリーズ2作目。主役級登場人物ライザの過去と現在進行しているテロ事件が複雑に絡み合った物語。
    シリーズ2作目と言うこともあり機甲兵装の戦闘シーンもシンプルで読みやすくなっている。

  • 「機龍警察」シリーズ2作目の完全版。
    機甲兵装同士の戦闘シーンの迫力も、特捜部部長・沖津とテロ組織や闇社会との諜報戦も1作目より遥かにスケールアップ。
    さらに今作の主役・ライザの少女時代から「死神」と呼ばれたIRF時代の壮絶な過去も丹念に描かれており、かなり濃い読み応えのある一冊に仕上がっている。
    特にクライマックスの首都高上でのバトル、ライザをテロの世界に導いた〈詩人〉キリアン・クインとの対峙はヒリヒリする臨場感。
    ストーリー展開の上手さと非現実的なのにどこかリアリティのある設定、登場人物の心理描写も洗練されていてラノベ好きにも警察小説好きにもオススメできる作品。

  • 10月31日午後、横浜港大黒埠頭の一角で起きた大量殺人。同時に発覚する、軍用有人兵・機甲兵装の密輸事案と北アイルランドのテロ組織IRFによる英国高官の暗殺計画。
    沖津旬一郎率いる警視庁特捜部が捜査に乗り出すが、すぐに中止命令が下る。
    日本政府の沽券にもかかわるこの事件には、日本国の警察庁だけでなく、首相官邸、外務省、経済産業省、北アイルランド、イギリス、果ては中華民国国家公安部、その黒社会まで、あらゆる国家と組織の複雑な駆け引きと暗闘が絡んでいた。
    そして一連の事件のシナリオを描き出すIRFの立役者キリアン・クイン。国際指名手配のテロリスト。彼もまた日本に密入国し、かつての同志、今は特捜部付警部補竜機兵〈バンシー〉の登場要因である裏切り者、ライザ・ラードナーの前に現れる。
    汚名を負ったひとりの少女をテロリストに成らしめたもの。繰り返される惨劇、その過程で喪われてゆく友人や父親たち。そして一線を越えた妹の死。
    ライザの壮絶な過去に寄せて淡々と紡がれる謀略の終焉は――。

    いつもそうだった。頭の中でジャムの感触。悪運が人生の流れを堰き止める。無残な形で爪痕を残す。
    自分の人生は際限のないジャムの連続なのだ――

    人生の排莢を運命が嚙み潰す。そしていつも、大切なものを喪う。止まない雨に打たれながら、深い闇の底のヒースの原を彷徨い続ける人生。約束した、けれど永遠にやって来ることのない水曜日を、諦めながら忘れられない人生。
    ――ライザような壮絶なものでなくとも、誰もみな、人生の流れが不意に止まってしまった、歪められたと思う一瞬を感じた経験はあるだろう。
    それが自分の人生に常に付きまとう悪運だとして、みな、どのようにその後の人生を過ごしていくだろう。自分はどうだったろうか。そんなことを考えながら読んだ一冊。
    シリーズ二作目だが、第一作の機龍警察すっとばしていきなり今作から読んでしまった。Production I.Gかサンライズ制作、ノイタミナ枠でいけそうな内容と世界観。パトレイバーやガサラキを思い出した。

  • 月村了衛、2016年発表の小説。2011年発表作品に加筆したもの。

    近未来警察小説シリーズの第2作。「龍機兵」と呼ばれる近接戦闘兵器を擁する警視庁特捜部の活躍を描いた群像劇風の作品。面白いけれど、官僚機構としての警察の抱える問題とか、北アイルランドのテロリストの物語りとか、何処かで読んだことのあるようなストーリーで、陳腐かつ冗長。特にテロリストの過去の物語りは不要と感じました。

  • ライザの物語。元本よりライザについての背景が書き込まれている(ような気がする)。北アイルランドのテロ組織,黒社会,中国諜報組織が入り乱れての大活劇。ストーリーはほぼ同じなのにページを繰る手が止まらない。「詩人」の真の目的は?

  • 「機龍警察」シリーズの第2作の完全版です。

    本シリーズは、現在までに、
    長編4編、短編集1編が上梓されていますが、

    このうち、第1~3作は、
    「龍機兵」の3人のパイロットについて、
    それぞれ一人ずつ、物語の主軸に据えて、
    それぞれの過去と現在を交錯させながら、
    警視庁特捜部(架空)での任務が、
    リアルテイストで描かれています。

    第2作となる本作品では、
    「龍機兵」唯一の女性パイロットとなる、
    ライザ・ラードナーの物語となります。

    ライザの設定は、
    10代で、北アイルランドのテロリストとなり、
    ある事件を転機としてテログループを離脱し、
    警視庁特捜部に入隊した、といぅ設定ですが、

    本作品では、
    第1章 現在:序
    第2章 過去:生立ち~テロリストになるまで
    第3章 現在:破
    第4章 過去:テロ活動~転機となるある事件
    第5章 現在:急
    の5章構成で、ライザの半生を描いています。

    この後、シリーズ第4作『未亡旅団』では、
    女性だけのテロ集団との攻防となりますが、
    その中で見せた、冷徹なライザの「苦悩」の、
    その理由が、本作品で明らかにされています。

    また、正反対の生立ちと、同様の転機を経て、
    「龍機兵」のメイン・メカニックとなった、
    カウンターパートとなる鈴石主任との関係も、
    今後の展開の中で、注目ですね。

    本シリーズは、
    安定感のある設定と作風も相まって、
    作品の世界観にもグッと引き込まれ、
    また、考えさせられる部分もあって、
    エンターテインメント小説としては、
    抜群に面白いシリーズだと思いますが…、
    特に、本作品は、シリーズ中で、最も哀しく、
    そして、一縷の救いと不安とともに終幕した、
    物語かもしれません。

  • 厚みと重みが好み。

    重層的に綴られるエピソード。
    ライザと緑ちゃんの関係がたまらんなー。
    ライザ妹ちゃんと緑ちゃんの名前が!
    それすらうまいこと使うとこが好き!

  • 初版、文庫化に続いて三度目の読書。
    同じ作品を三度読んだのは、前作を除くと「鷲は舞い降りた」ぐらいだと思う。最近翻訳がまったくないジャック・ヒギンズを読みたくなった。

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著者プロフィール

1963年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部文芸学科卒。2010年『機龍警察』で小説家デビュー。12年『機龍警察 自爆条項』で第33回日本SF大賞、13年『機龍警察 暗黒市場』で第34回吉川英治文学新人賞、15年『コルトM1851残月』で第17回大藪春彦賞、『土漠の花』で第68回日本推理作家協会賞、19年『欺す衆生』で第10回山田風太郎賞を受賞。近著に『暗鬼夜行』『奈落で踊れ』『白日』『非弁護人』『機龍警察 白骨街道』などがある。

「2021年 『ビタートラップ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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