機龍警察 白骨街道 (ハヤカワ・ミステリワールド)

著者 :
  • 早川書房
4.18
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本棚登録 : 491
感想 : 64
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152100450

感想・レビュー・書評

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  • ◆おすすめ度◆
    ・ハラハラ・ドキドキ冒険小説度:★★★★★
    ・誰が何をの警察小説度:★★★★
    ・パワードスーツSFアクション小説度:★★★★★
    ・夕方に読みはじめると徹夜になっちゃいます度:★★★★★

    ◆感想◆
    国産機甲兵装の機密情報を持ち出し逃走していた男が、ミャンマーで身柄を拘束される。姿たち警視庁特捜部突入班の三人を現地に向かわせ、男の身柄を引き取ることになるが、沖津特捜部長は「敵」の奸計を確信する…

    ミャンマーの奥地に入り込み男の身柄を引き取る、というシンプルなストーリーがいいですね。
    そこにミャンマーの政治情勢や、姿たち突入班を護衛する現地警察、どう出てくるかわからない国軍や闇組織、こいつは味方なのか敵なのかの疑心暗鬼と罠、そしてメインの機甲兵装のアクションシーンの味付け。
    シンプルなストーリーにてんこ盛りのトッピングです。
    面白すぎて読み出したらやめられません。
    美味しいスイーツを途中でやめられないのと同じです。

    並行して描かれるのは、機甲兵装の機密情報持出を発端とした疑獄事件。
    日本の政界等に太いパイプを持つ城州グループ。
    いったい城州グループ役員たちは何をたくらんでいるのか。
    警察内部や政財界に潜む「敵」は誰なのか。
    そして国産機甲兵装の真実は?

    いつにもましてアクションシーンが多めのエンターテイメントになってます。
    特捜部突入班の三人もに加え、脇役たちも漢ですね。
    特に沖津特捜部長の采配に拍手です。

  • 月村了衛『機龍警察 白骨街道』読了。
    2010年代で最高の小説シリーズとも評される本シリーズの6作目。公式には至近未来警察小説から、大河警察小説に看板がかけ変わったようです。
    本作では〈敵〉の策略により、特捜部突入班の3名がミャンマーへ生還の望みの薄い危険な任務に赴くことが太平洋戦争時の日本軍のあまりに無謀で悲惨な結果をもたらしたインパール作戦「白骨街道」をモチーフとして語られるのだけれども、雑誌連載時に読んでいて劇中の展開が現実と巧妙かつ劇的にオーバーラップしてくる展開にページをもつ手が震えた。
    改めて通読してみれば、作者はインタビュー等でよく「フィクションが現実に肩を叩かれる」ということを言っているのだけれども、そのような危機感・緊張感が本作を終始一気通貫していて、読み手に作中の言で〈妖気〉のようなものが迫ってくる気さえしてくる。兎にも角にも本シリーズをリアルタイムに追えることの幸せを噛み締めずにはいられない本作。前作で出番のなかった機甲兵装がここぞとばかり"大暴れ"するのも見どころではありますが、極秘裏に進んでいた国産機甲兵装開発計画とそれにまつわる国際疑獄事件の捜査のスリリングな展開も最高ですね。

    事あるごとにいろんな人に機龍警察を勧めている僕ですが、改めていまこそ機龍警察を読もうと声を大にしてまた言うのである。
    ちなみに2作目「機龍警察 自爆条項」の電子書籍版が期間限定で上巻分が無料で読めるようになってるとかなので俄然オススメ(機龍警察読む上で2作目から入るのは全然アリかと)

  • 機龍警察6作目。警視庁特捜部・突入班3名は、初の国産機甲兵装モジュールの技術流出を目論むとされる国際指名手配犯・君島の奪還のため、インパール作戦の「白骨街道」に続くミャンマーへ派遣される。一方日本では、城木理事官の親族らが経営する会社に合同捜査が入る。

    インパール作戦やロッキード事件など、史実に関する知識の無さを恥じると同時に、機龍警察という素晴らしい作品を通じて実際の過去を詳細に知ろうとする意欲が掻き立てられたので、物語や作品の持つ力は大きいとも思う。

    機龍警察の好きなところは、挙げ出したらキリがないのだが、第一に登場人物の立場とリンクするそれぞれの「戦い方」の描き分けにある。
    突入班であれば当然、ドラグーンによる戦闘、あるいはドラグーン意外の機甲兵装を含めた装備による戦闘である。また孤高の部長・沖津は、人材の最適配置やそれによって得られる情報の分析・予測による先読み、あるいは対人との振舞いによる組織の存続など、あらゆる要素に隙のない戦略・戦術の展開であろう。さらに城木・宮近両理事官は、出世を見据えた組織での立回りに加え、人脈の形成、そして利用することで特捜の捜査を進める力が必要だし、由起谷や夏川などの主任クラスになると、現場での機転や実際の対人戦闘に迫られることもある。さらに捜査二課の面々の知能犯罪に対する動き、鈴石ら技術班の深い知見による洞察、組織の緩衝機能としての庶務の存在、などなど、これら全ての人たちが物語の不可欠な存在となっており、彼らは自分たちの職務を全うしている。本作・白骨街道もその役割と戦い方が忌憚なく描かれ、非常にスリリングで興奮するのである。

    そしてストーリーは「敵」の存在に近付きつつあり、また突入班の人材も1人増えた。新たな4人目はキール-ウィスカー方式のドラグーンではないとは言え、元モサドの経験を活かし、姿以上の才能の片鱗を覗かせている。姿自身は、引退を諭されているように受け取っている描写もあったが、そんなはずはない。沖津は姿を信頼している。その沖津が、彼に引退させるはずはないのだ。むしろ彼にもドラグーンが導入される方向で話は進み、その中で、本来のドラグーンというものの素性が明かされながら、さらに日本の特捜以外で、ドラグーン相当の機甲兵装が誕生する……そんな次回作を予想している。

    ドラグーンが登場しなくても、ここまで面白い。もう押井守監督に映像化してほしい。

  • 機龍警察シリーズ、6作目。

    今回のテーマはミャンマー・ロヒンギャ問題。至近未来という設定で、今回も龍機兵こそ出てこないものの、別の型の機甲兵装はふんだんに登場し、数多くの戦闘描写が描き込まれているが、その舞台の背景にあるロヒンギャ問題においては現実そのもののように超リアルでシビア。アウンサン・スー・チー統治政権下、日本がどのように対応してきたか、問題点が浮き彫りにされている。また、日本では、国産機甲兵装開発計画が絡んだ権力闘争が繰り広げられ、特捜部が崩壊の危機に晒される。ミャンマー、東京、京都と三舞台で同時進行しながらも、展開はそれぞれスピーディー。断然不利な場面もその直後には好転し、事態は逆転の連続。熱い展開に痺れますワ。そして、最後。ミャンマーの今現在がどうなっているかは誰もが皆が知っていること。なるほど、そういうオチかと。この本はいつ書かれたものかと思いながら読んでいたが、上手くリアルな時事を落とし込んできたなと最後溜息をついた。

  • まるでチャンバラ劇!機甲兵装を駆使して敵をやっつける。一方で黒幕が暗躍しているところなんてそのもの!こういうの好きです。

  • 機龍警察の最新刊。
    ミャンマーで収容された容疑者を
    姿らが、引き取りに行く。
    途中、ミャンマーの警察が護衛に
    付くものの、襲撃される。
    戦闘の描写、徒歩で山中の移動の
    描写は、読書していながら映画を
    観ているような感覚だった。
    今回は、日本での捜査とミャンマ
    ーでの過酷なミッションを繰り返
    して物語が進んでいく。
    結局、〈敵〉の正体は明らかにな
    らず、次のシリーズに続くのか?

  • 面白かったけど、クワンが万能すぎるのと、思わぬ助っ人にちょっとしらけた…。
    城木は気の毒すぎる。
    姿の秘密って何だろうねぇ。

    早く続きを読みたい。

  • ミャンマーの国境地帯で軍事機密を持ち出した日本人が拘束された。日本初の国産機甲兵装のサンプルを隠匿したその人物を確保せよ。しかしミャンマー政府が指定した引き渡し場所は紛争地帯。日本政府は警察官の犠牲を出したくない。そして姿、ユーリ、ライザ、3人の突入班龍機兵搭乗員たちに白羽の矢が立つ。すべてが罠。わかっていてなお、進むしかない汚泥にまみれた道がある。かつて史上最悪の作戦『インパール作戦』の失敗によって日本兵の死骸が累々と倒れ伏した白骨街道で、今再び多くの兵士が命を落とす激戦が繰り広げられる。

    「この国はね、もう真っ当な国ではないんだよ」
    「だが、それでも――我々はできる限りのことをする」

    菩薩の微笑みを浮かべる裏に修羅の憤怒を隠し持つ。慈悲深く人を救いあげる、その同じ手で人を地獄に突き落とす。人間の複雑な本性を、ミャンマーと京都、深く仏教の影響を受けるふたつの地域を舞台に描き出す第6弾。

    6作目にして第四の男シェラーが登場。”敵”の妖気もますます濃くなり、一体特捜部はどうなってしまうのか……。
    本書刊行時に催されたトークショーで著者の月村さんは「政府や警察の現実は私の書いている小説なんかよりももっと下品であってそこが薄い」と語っていたけれど、下品で底が薄い警察機構の宿業を、このさきどう描いていくのか、続きが早く読みたくてたまらないシリーズです。

  • シリーズ第6段。だけど図書館で借りた本の背表紙にはシリーズ7ってシールが貼ってありました。

  • 前作までの展開がうろ覚えだったが、簡単なあらすじや人物紹介もところどころ挟まっていたおかげで思い出しながら読み進めることができた。
    暗黒市場あたりから濃厚な映画を見たような没入感に浸らせてくれるシリーズだが、その期待を裏切らず本作も面白い。前作は機甲兵装での戦闘がなく、今作は戦闘はあるものの龍機兵は登場しない。だが龍機兵が出ないからこそ、姿、ライザ、ユーリの搭乗者としての有能さが際立っているように見える。また本作は本作でマレーシアでの死闘と日本での陰謀捜査が並行して進んでいく演出が新しく、退屈させない。
    ついに<敵>の正体が垣間見えたが城木はどう立ち向かうのか。ここに来て突入班が増員されたが果たしてどういった形で作戦に組み込まれるのか。姿は本当に警察を辞めるのか。まだまだ先が気になる展開ばかりで、次回作が待ち遠しい。

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著者プロフィール

1963年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部文芸学科卒。2010年『機龍警察』で小説家デビュー。12年『機龍警察 自爆条項』で第33回日本SF大賞、13年『機龍警察 暗黒市場』で第34回吉川英治文学新人賞、15年『コルトM1851残月』で第17回大藪春彦賞、『土漠の花』で第68回日本推理作家協会賞、19年『欺す衆生』で第10回山田風太郎賞を受賞。近著に『暗鬼夜行』『奈落で踊れ』『白日』『非弁護人』『機龍警察 白骨街道』などがある。

「2021年 『ビタートラップ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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