- Amazon.co.jp ・本 (413ページ)
- / ISBN・EAN: 9784153350205
作品紹介・あらすじ
〈ヒューゴー賞/ネビュラ賞/世界幻想文学大賞受賞〉母さんがぼくにつくる折り紙は、みな命を持って動いていた……。史上初の三冠を受賞した表題作など全15篇を収録した、日本オリジナル短篇集
感想・レビュー・書評
-
15作もの短編集で、魔法や呪い的な要素が入った作品、生命の定義を問うもの、システマティックなもの、歴史認識に関するものなど幅広い作品が収録されていました
読み応えのある作品が多く、読む時間は長くなりました
【特に好印象だった作品】
・良い狩りを
・紙の動物園
・結縄
・波
【歴史認識を高めた作品】
・文字占い師
訳者の後書きは、あらすじに触れずに作者の略歴や収録の経緯を解説されていて秀逸、先に読んでも問題はなさそうです
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
表題作の『紙の動物園』が、あまりにも素晴らしい作品だったので、読み終えていませんが感想を書いてしまいます。
歴史に翻弄される人間の悲哀、深い愛情行動、辛い人生の救い、それらが合わさって、非常に深い物語に仕上がっています。
一生に一度は読むべき傑作です。他の短編も読んできます。 -
中国系アメリカ人作家の短編集。ヒューゴー賞/ネビュラ賞/世界幻想文学大賞受賞の表題作ほか、全15篇を収録。
「紙の動物園」「もののあはれ」「月へ」「結縄」「太平洋横断海底トンネル小史」「潮汐」「選抜宇宙種族の本づくり習性」「心智五行」「どこかまったく別な場所でトナカイの大群が」「円弧」「波」「1ビットのエラー」「愛のアルゴリズム」「文字占い師」「良い狩りを」を収録。
SFに与えられる各賞を総なめにした表題作「紙の動物園」が冒頭に収録されている。最初にもってきたのが正解で、いきなりガツンとやられるインパクトによって、この作家に対する印象が好感あるものに満ちてしまった。折り紙で作られた動物に生命を吹き込むという、ファンタジーを感じる設定ながら、中国系アメリカ人だからこその世界観が巧みに深い母子愛を描き出し、涙なしには読めない結末となっている。文句なしの傑作に喝采だ。
続く「もののあはれ」は、滅びの道にある地球を旅立ち、300年後に到達する深宇宙の星を目指すというガチSFな傑作。ここでも親子愛が基軸となる結末が深い感動を呼ぶ。漢字や日本語がフューチャーされているのが興味深い。
【抜粋――「どんなものでもそれを言い表すのに千もの方法がある」父さんはよく言っていた。「それぞれの場合に合わせたふさわしい表現があるんだ」日本語が陰影と雅趣に満ちた言語であり、一文一文が詩であることを父さんに教わった。日本語は、重層的な言語であり、語られぬことばが語られることばとおなじように深い意味を持ち、文脈のなかに文脈が潜み、まるで日本刀の鋼のように層が重なりある言語である、と。】
他に政治情勢やSFギミックにおける設定も緻密で、この作家はいったい何ヵ国語に精通しているんだ……どれだけ多才なんだ……と空恐ろしくなる一作。物語の感動だけでなく、扱われているテーマも深いものがあり考えさせられる。
最初の2タイトルだけでお腹いっぱいになりお釣りがくるぐらいな上、残りの作品も読み応えあるものばかり。多彩なケン・リュウの世界にどっぷりハマる入門書としてふさわしい一冊になっている。ガッツリSFだったりファンタジーぽい雰囲気だったり歴史改変ものがあったり、様々なタイプの話があるが、「文字占い師」だけは閲覧注意レベルの重たい作品なので、読むときは気をつけてほしい。こういった歴史認識に関わる問題をぶっ込んでいるのもこの作家の特質のひとつなのだろう。あなたのお気に入りはどれですか?読者どうしで語り合いたくなる傑作短編集。 -
中国大地への郷愁と現状への戸惑いが、一冊全体に、とても切なさを感じた。
-
抒情的ファンタジーにトンチキSF、風刺強めの歴史ifもの…飽きることなく満腹になる1冊。テッド・チャンやディック未読のSF初心者には、ぜんぶ新鮮だった。
科学と信仰、思考とAIのアルゴリズム、といったテーマを、人間ドラマの中で読者になんとなくわかった気にさせながら描く「1ビットのエラー」「愛のアルゴリズム」が好き、この時代の旬のSFという気がした。 -
作品が凄いし、これを違和感無く翻訳した翻訳者も凄い。難しい話が語られているのに、何となく理解できる世界観を作り出せるのが本当に素晴らしい。何とも言えない切なさや刹那さ、、、言葉にできないものが物語として描写されている。本当に頭の良い人が書くとこういう物語になるのかもしれない。難しい話を解るように語り聞かせてくれる。ものすごく良かった。
-
空虚で絶望感のある未来世界で描くヒューマニズム作品。人間味や暖かみがより際立ちます。
めちゃくちゃ感動するんだけど、すごく切なさが残る。ちょっと苦手。 -
『心智五行』が一番好き。
人間は科学で説明できるものじゃないと思っているので、ロマンを感じた。
説明できないけど感じるものをうまく表現できていて胸が熱くなった。
『1ビットのエラー』の中の「成熟を価値あることと見なすというよくあるミス(p272)」という所ははっとさせられた。
SFを使って「人間とは」ということを表現するのが得意な作家さんなんだなぁと思った。 -
中国系アメリカ人?のSFってどんなんや…と思ったけど、はるかに読みやすいな…