ここがホームシック・レストラン

  • 文藝春秋
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (403ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163118604

感想・レビュー・書評

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  • 「家族」や市井の人々の日常を描くことに定評があるアン・タイラーの1982年の作品。
    学生時代、英文学の授業に苦手意識があり長らく手にしていなかったのですが、中野恵津子さんの翻訳のおかげで、年齢を重ねた今読んでよかった1冊でした。

    1960年代のボルティモアに住む家族が舞台です。
    同じ屋根の下で出来事を共有するのが家族ですが、それぞれの視点・感じ方により、これほどの齟齬があるのかという現実がさらりと描かれます。

    いつの世も、いずこも「家族」は難しいなあとしみじみ。
    善い人・悪い人という紋切り型の人物像ではなく、登場人物の家族それぞれと適度な距離を保ちつつ、淡々と描かれます。

    各章ごとに誰の視点で出来事を見ているのかが異なり、「事実」は1つでも「真実」は人による捉え方だから異なること前提で生きていくことが大事かなと感じました。

    心の底から求めている「大事な人」からの承認や肯定が得られないとき、人はこういう行動をとってしまうものだなとつくづく…。
    自分の心と向き合うことはとても勇気がいるのだなと自分を見つめるいい機会になりました。

  •  アン・タイラーは、映像化には向かないほど平凡な生活を生きている人たちを主役にします。だから、海外の生活をのぞいてみたい人間にはもってこいの小説です。

     暴言、暴力の濫用。どう見ても毒親の母パールなのに、子供たちの根は『母が好き』という想いで切っても切れない親子関係を続けています。どうしようも無い母親だと分かっているのに、そこらの仲のいい家族よりも頻繁に会い食事をし、電話をかけ、母が衰えれば手添えをする。母親のことを切り捨てられない子供たち。
     これぞ腐れ縁。唯一感情移入できなかった場面といえば、パールと子供たちを捨てた父親を放っておかなかったこと。
     何十年振りに会って、変わらぬ態度で受け入れてもらえると思っている図々しさ。子供から冷たい言葉を投げかけられ、自分は傷ついたという顔。そして、ちょっと言い過ぎたと後悔して探そうとする子供たち…。

     「奥さんと子供を捨てたくせに」とただひたすら父親に憤りを感じました。きっと現実にもこんな話はごまんと転がっているでしょうね。
     アン・タイラーをより好きになった作品でした。

  • ほろ苦い家族関係に泣けます。

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著者プロフィール

1944年生まれ。主な訳書に、A・タイラー『ここがホームシック・レストラン』『歳月のはしご』、A・マクラウド『灰色の輝ける贈り物』、W・トレヴァー『密会』、M・マッカーシー『アメリカの鳥』など。

「2010年 『アメリカの鳥』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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