対岸の彼女

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 622
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163235103

感想・レビュー・書評

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  • ずーっと読んでみたいと思っていた本。
    なんといっても大好きな角田光代さんの直木賞受賞作ですから。

    結構ドロドロしたものを予想していたら、思った以上に淡々としていた。
    角田さんの作品は結構暗いところにも切り込んでいくけど、読み終わったとき、なぜか少し爽やかな気持ちにさせてくれる。なぜ歳を重ねるのだろう、という小夜子の自問に、また人と出会うためだ、と書ける角田さんの物語の力がやっぱり好きです。そして、この現状と自分を変えるために働こう、と思える小夜子が何よりもすごいと私は思った。現状に甘んじて、ただ愚痴を言って日々を過ごしてしまうことは簡単なのに、それをせずに新しい世界に飛び込んでいく小夜子が凄すぎる。どんな失敗しようと、何もしないでいる人の百倍、挑戦している彼女の方が圧倒的に偉いと思いました。見習うべき主人公。

  • 女だ〜〜〜〜!!全部全部私も感じたことあるものばっかで分かる!分かる!って言いながら一気読みした。

    人間関係築くのってすごい難しいし分かり合えなかったりあーーーって思っちゃったりすることあるけどこの先もっと大人になっても、そうやって沢山悩みながら適当にバカ笑いできる人がいるといいなって大好きな友達達思い出しちゃった。
    人は出逢うために歳を重ねるんだって。
    かなり好きな本。

  • ポスト・モダニズムが二項対立によって説明されていることを知った直後に読んだ。
    近代の成り立ちは、神を代表とする宗教的呪詛からの独立であり、ポスト・モダニズムは、そのように宗教的バックグラウンドを失ったことにより、個人のアイデンティティーを自分で確立しなくてはいけなくなった状態に起因している。
    と、言うことを考えながら、そう言うことが小説のテーマとして取り上げられて、その軸の上でうまく展開している小説が直木賞などの賞を取るのだろうと思う。
     わかりやすい二項対立と、アイデンティティーを確立していく課程を扱った小説。

  • 私たちはなんのために歳を重ねるんだろう。

    一個一個歳を重ねていくと、ふと、前じゃなくて後ろを振り返る瞬間があるんだよね
    そしてまた前を向いて進んでいくことが、とても億劫に感じる
    そこで迷う
    道が分からなくなる
    向かう先まで橋が架かっていればいいのにね

  • 「対岸の彼女」角田光代著、文芸春秋、2004.11.10
    290p ¥1,680 C0093 (2021.01.12読了)(2006.11.03購入)(2005.01.20/4刷)
    角田さんの本が19冊ほど積読してあります。1冊でも減らそうと手に取りました。残り全部はとても読めないですね。
    大人の小夜子さんと楢橋葵さんの話。高校生の楢橋葵さんと魚子(ナナコ)さんの話。
    二つの話が交互に綴られています。楢橋葵さんは、同じ人です。
    小夜子さんには、夫・修二と子供のあかりちゃんがいます。小夜子さんは、働こうとして楢橋葵さんの会社に採用されました。
    高校生の楢崎葵さんは、中学までは、横浜市磯子区に住んでいたのですが、いじめが原因で、一家で群馬に引っ越してきて、女子高に入学しました。そこで、魚子と出会い、仲良くなりました。高校二年生の時、事件を起こしてしまいました。

    【目次】(なし)
    1~15

    ●なんのために(273頁)
    何のために歳を重ねたのか。人と関わりあうことが煩わしくなったとき、都合よく生活に逃げ込むためだろうか。銀行に用事がある。子どもを迎えにいかなきゃならない、食事の支度をしなくちゃならない、そう口にして、家のドアをぱたんと閉めるためだろうか。
    ●なぜ私たちは(282頁)
    なぜ私たちは年齢を重ねるのか。生活に逃げこんでドアを閉めるためじゃない。また出会うためだ。出会うことを選ぶためだ。選んだ場所に自分の足で歩いていくためだ。

    ☆角田光代さんの本(既読)
    「まどろむ夜のUFO」角田光代著、幻冬舎文庫、1998.06.25(1996.01.)
    「キッドナップ・ツアー」角田光代著、新潮文庫、2003.07.01
    「これからはあるくのだ」角田光代著、文春文庫、2003.09.10
    「幸福な遊戯」角田光代著、角川文庫、2003.11.25
    「この本が、世界に存在することに」角田光代著、メディアファクトリー、2005.05.21
    「空の拳」角田光代著・池田進吾絵、日本経済新聞・連載、2010.12.15-2012.02.01
    (2021年1月12日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    女の人を区別するのは女の人だ。既婚と未婚、働く女と家事をする女、子のいる女といない女。立場が違うということは、ときに女同士を決裂させる。

  • (葵)「旅行ってさ、to seeとto do って二種類あるわけね、周遊して遺跡や博物館なんかを見るものと、お祭りなんかに参加するものと。だけど大前提にto meetってのがないと、話になんないよね。異国って、『ここ』とは違うじゃない、人はみんなわかりあえるとか、人間なんだから同じはずとか、そういうのは嘘っぱちで、みんな違う。みんな違うってことに気づかないと、出会えない。マニュアルってのは、あれしなさいとか、これが常識だって説明するだけで、違うって感覚的に分かることを邪魔するんだと思うんだ」(p.143)

  • 久しぶりに小説が読みたくなって図書館で手に取った1冊。角田さんの小説初めて読んだけど、癖のない文章で読みやすい。比喩が多用されてないのもありがたし。性格も立場も異なる同世代の女性が、惹かれ合い、異なるゆえに衝突し、再び関係を構築していく物語。
    確かにね。惹かれ合い、仲良くなることまでは出来るかもしれないけど、1度壊れてしまったものを、もう無理に戻そうとは思わない。
    なんのために歳を重ねたのか
    その答え、私はまだ見つけられていない

  • ここではないどこかに行けば、自分の居所があるのではないか、自分らしく生きられるのではないか、という思いのは、きっと誰もが大なり小なり持っているんだろう。
    大事なものは外から見えないし、見えたと思っても違うかも知れない。人と親しくなることでかえって大きく傷つくこともある。そういうことに惑いながら、でもやっぱり最後は人との出会いなんだな、とじわじわ再生していく気持ちになった。

  • 結婚、未婚、立場によって女性同士の共感度合いは大きく変わってくる。

    小夜子と葵
    葵とナナコの学生時代

    2つの軸で話が展開されていく。
    もう少しドロドロした話かと思ったがどこかセピア色の物語だった。

    なんでこの2軸で話が書かれたかよくわからなかったけど
    小夜子目線で描かれる葵はどことなく学生時代のナナコが投影されている気がした。

    学生時代のナナコの
    本当に大切なものがどこにあるかわかっていれば、無視されたり陰口を叩かれることなんて何にも怖くない、気にならない。
    という言葉がが印象に残っている。

    もう少し年齢を重ねて、友達の環境がみんな変わってきたら共感できるようになるかな⁇
    文章自体は読みやすく、描写もわかりやすかった。

  • 直木賞受賞作品。
    やっぱりとってもいい作品でした。

    何が、て一言ではいえませんが、女性の目線から見た仕事、家庭、友人等々、とにかくリアルで共感するところばかりで、人と人との出会いはいつどこに転がってるかわからないなあ…と今更ながらしみじみ感じた作品でした。

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著者プロフィール

1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。90年『幸福な遊戯』で「海燕新人文学賞」を受賞し、デビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で、「野間文芸新人賞」、2003年『空中庭園』で「婦人公論文芸賞」、05年『対岸の彼女』で「直木賞」、07年『八日目の蝉』で「中央公論文芸賞」、11年『ツリーハウス』で「伊藤整文学賞」、12年『かなたの子』で「泉鏡花文学賞」、『紙の月』で「柴田錬三郎賞」、14年『私のなかの彼女』で「河合隼雄物語賞」、21年『源氏物語』の完全新訳で「読売文学賞」を受賞する。他の著書に、『月と雷』『坂の途中の家』『銀の夜』『タラント』、エッセイ集『世界は終わりそうにない』『月夜の散歩』等がある。

角田光代の作品

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