あなたに大切な香りの記憶はありますか?

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163276809

感想・レビュー・書評

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  • キーコーヒーのサイトで公開された作品集。
    石井衣良「夢の香り」
     15歳の時にみた夢の中。隣で寝ていた男性のにおいが忘れられず、追い求める女性。
    角田光代「父とガムと彼女」
     小学校低学年の時になぜかいなかった母の代わりに面倒をみてくれた女性。
     その女性と一緒に買い食いしたガムの甘ったるいにおい。
    朱川湊人「いちが童子」
     揚げ物・お惣菜・花・果物・海苔・お好み焼き・魚・・・
     いろんなにおいが溢れてくる市場と子供にしか見えない童子。
    阿川佐和子「アンタさん」
     ひょんなことで知り合った宮大工は、今まで付き合ったどの男性とも違う。
     自分のことを『アンタさん』と呼ぶ彼。その彼が好きな木のにおい。
    熊川達也「ロックとブルースに還る夜」
     学生時代を過ごした仙台に仕事で訪れた編集者。
     音楽を聞きに通い詰めたロック喫茶。美味しいコーヒーとそこで出会った彼女。
    小池真理子「スワン・レイク」
     亡くなった夫と一緒に来た白鳥が住む湖。
     水の香りと雪の香りに満ちる中、あの時、見た白鳥は・・・
    重松清「コーヒーをもう一杯」
     大学時代に同棲していた彼女が淹れてくれたマンデリンという名のコーヒー。
     豆をコーヒーミルで挽いて、ゆっくり飲みながらした彼女との会話。
    高樹のぶ子「何も起きなかった」
     28年ぶりにメールでのやり取りし始めた高校時代の女友達。
     学生時代の思い出話の中のいろんなにおいなど織り交ぜて、
     意味深なやり取りを続けるふたり。

    短編なので、さらっと読めるし、どの作品も短編だけど、充分に読み応えあり。
    このラインナップだもの、当然かな。
    好きなのは、角田光代さんと朱川湊人さんの作品。

    誰にでも思い出のにおい、香りがあると思う。
    それは好きな人だったり、食べ物だったり、家族だったり・・・
    生活に密着した、ものすごく身近なもの。
    忘れているにおい、でも嗅いだらいろんなことを思い出すに違いないにおい、
    いまでも嗅ぎ続けているにおい・香り・・・きりがないくらいあるはず。
    食べ物と同じで、においも、懐かしさと思い出に浸れるもの。

  • 香りを題材にした話。
    どれも素敵な話で凄かったけれど、印象に残ったのは角田光代さんの「父とガムと彼女」、初子さんと父の関係、初子さんと母の関係。
    初子さんが父の恋人だったのなら、母は良く父と初子さんを許せたなーと思ったり。
    どれも心がほんわかと温かくなる話だった。

  • どの短編も”香り”という共通のキーワードでつながっていながら、それぞれ作風、世界観、そこで繰り広げられるドラマが心地よかった。高木のぶ子さんの短編は、特に。女性独特の生々しい香りで恐怖さえ覚えてしまうほど。

  • 年の差(と言っても3つ?)の同棲カップルの
    コーヒーの話がどストライク!
    「大切な香りの記憶」に一番ふさわしいお話だったなぁと。
    しかもコーヒーの香りがまた新たに大切な香りになること、
    砂糖やミルクを入れてかき混ぜる大したことない間が
    何かを予感させる間になる所が
    小説らしくて本当にいい!
    他のお話もよかったんですけどダントツでした。個人的に。

  •  特に最後の。ドキドキしながら読んだ。

  • 香りをテーマにしただけあってどれも活字を読んでいるだけなのにそれぞれの香りが漂っているような気分になった。
    どれも飽きずに一気に読める、当たりの本だったとおもう。

    「夢の香り」石田衣良らしい作品だな、と感じた。でも短編だと物足りなく感じてしまった。長編恋愛小説にしても飽きなくよめそう。

    「父とガムと彼女」角田光代さんの作品は初めて読んだが、びっくりするほど吸いこまれる物語だった。初子さんと私とのほんのささいな出来事にほっこりしたり、父と初子さんと母の関係に少しほろりときたり。最後のシーンで鳥肌が立ったほど物語にのめり込んでしまった。私は普段ガムを噛まないけれど、この作品を読んであの懐かしいオレンジ味のガムを噛んでみようと思った。

    「いちば童子」関西地方に住んでいる主人公の一人称で語られる物語に最初慣れるまで大変だったが、話を読んでいくうちにその関西弁こそがこの物語をより一層あたたかな、古き良き日本のすがたを映しているんだなと思った。最後の結末にびっくりとともに、心にじんと染みる話だったなとおもわず笑みがこぼれた。

    「アンタさん」アンタさんのさっぱりした性格と主人公のやきもきした感情がなんともいえない、とてもいい恋愛作品だったと思う。短編作品なのでアンタさんと主人公のほんの少しの恋愛シーンを切り抜いた感じがまたなんともいい。

    「ロックとブルースが還る夜」編集に携わる男の若かったころの感傷にどっぷり浸れるお話。ちょっとクサイところがまたいい。学生の頃に一目惚れした女性は、思い出の中に生きているからこそ美しい。大人な男性のお話をあまり読んだ事がなかったのですごく新鮮だった。最後の終わり方がまたなんともいい。かっこいい。

    「スワン・レイク」この話は、恋をしている、愛し合っている人達にぜひ読んでもらいたい作品。話の全体が綺麗で、雪の季節の話ということもあり透明感のあるイメージを浮かべた。

    「コーヒーもう一杯」ちょっぴり切ないお話なんだけれど、彼女の主人公に対する優しさがこちらまで伝わってきて、そこまで悲しい気分にはならなかった。コーヒーの苦みと男女の恋愛を上手く比喩していて、さらっと物語に入り込める作品であった。

    「何も起きなかった」この作品だけアンソロジーの中で異様な雰囲気を醸し出していた。この本の作品の中では一番のお気に入りになった。高校のときの親友とのメールのやり取りの中で話が進んでいくのだが、どちらの女性もすごく鋭い。女特有の感性の鋭さであったり、物の捉え方、第6感的なところも、鋭いな、と思った。最初は何のことだかわからなかった話も、中盤になるとハラハラする展開になり、一気に読み終えることができた。最後まで鳥肌が立つような女のぞっとする話。

  • 図書館 2011.07.22~08.02
    阿川佐和子さん「アンタさん」の優しいストーリーが好きだなぁ
    熊谷達也さん「ロックとブルースに還る夜」は、語り口に引き込まれ、展開にゾクゾク、どうなることかと思ったラストが意外だけどそこがまたいい、素敵
    重松さん、普通に好き

  • 『夢の香り』 石田衣良
    『父とガムと彼女』 角田光代
    『いちば童子』 朱川湊人
    『アンタさん』 阿川佐和子
    『ロックとブルースに還る夜』 熊谷達也
    『スワン・レイク』 小池真理子
    『コーヒーもう一杯』 重松清
    『何も起きなかった』 高樹のぶ子

    香りをテーマにした短編集。やはりどの作品も面白かったが、個人的には角田さん、阿川さん、小池さん、重松さんの作品がよりよかった。阿川さん以外はいくつか作品を読ませてもらっているのもあるかもしれない。中でも、スワン・レイクって実際ある場所をもとにしているなら、あそこかなと何回も行ったことがある場所をおもいながら読めたのでより興味深かった。

  • キーコーヒー株式会社のWEBサイト「書茶」にて2007年9月14日より2008年10月30日にわたり公開された作品を、単行本化。

  • キーコーヒーのWEBサイトで公開されていたものをまとめたもの

    香りにまつわるアンソロジー


    匂いフェチな私

    付き合う相手との相性も、匂いが重要

    そんな私は



    石田衣良「夢の香り」


    にすごく共感



    角田光代「父とガムと彼女」も良かった

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

阿川佐和子の作品

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