ハチはなぜ大量死したのか

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163710303

感想・レビュー・書評

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  • レイチェル・カーソン「沈黙の春」が予言していたことがまたひとつ的中してしまったのか。CCD〜蜂群崩壊症候群を通して明らかになる現代農業の問題点。農作物の80%がミツバチによる受粉に頼っているなど、農業との密接な関係をもつこの昆虫の驚くべき生態に感動する。>ニホンミツバチの可能性、日本に於ける養蜂業の未来

  • ミツバチの大量失踪事件から見えてきた、現代農業の危うい姿。蜂群崩壊症候群と呼ばれるハチの謎の大量死事件が主題の本ではあるけど、そこから見えてきたのはあまりに「不自然」な現代農業の姿。広大過ぎるアーモンド農場のためにハチを出張させるからか?\"理想の\"農薬のせいか?ハチを殺すダニを排除するため使われた薬品のせいか?ハチが行方不明となる原因ははっきりせず、解決法はまだ見つかっていない。ノゼマ原虫説が有力なようだけど、反例もあるようで、おそらく複数要因が重なっているんだろう。受粉者に頼ってきた植物と動物のエコシステムの異変は、思っているより深刻だってのはごもっともなんだけど、現代農法でないと地球の人口を食わせてゆくことは出来ないのも事実。そのあたりはもうちょっと経済学的分析が必要でしょうねぇ。うまい落としどころが見つかればいいんだけど、、、花粉の運び手というあまり重要視されてこなかった分野に光りを当てたという点で評価されるべき本ではあるし、不必要な煽りも少ないものの、タイトルは原題の通り「実りなき秋」でよかったのではないかと。「ハチはなぜ〜」は副題で十分だった。ハチ問題から農業全体の問題を見つめた本なんだし。

  • ミツバチの話に終始するかと思いきや、ポリネーターの話一般にまで広がっている。そこまでするなら林冠の生態系についてももうちょっと書かれているといいかなー、と思ったけど。

    ラスト付近の「うれしいからだ」という展開はなかなか良いな、と感じた。

    福岡伸一さんの「解説」がイマイチ解説になってない件はまぁ御愛嬌ってことで:-)

  • 数年前に買って積ん読…でも非常に興味深い。ハチに限らず昆虫が消えていく…自然界の多様性が失われていく。その先にあるのは…いや全てが失われてしまうのかもね。

  • そういえば数年前、ミツバチが消えてるってニュースあったなぁって今更気になって読んでみました。おもしろい!いまだに原因は不明の消える蜂たちらしいんですが、働かされ過ぎてストライキちゃう?と思ってしまう。あと蜂カワイい私もミツバチかいたい。内容はショックだけど蜂が愛しくなる本だったとは。

  • セイヨウミツバチのコロニーの突然の崩壊とそれに伴う米国農業の危機。植物と昆虫の共生、そして農薬や都市化、グローバル化による種の減少。取り敢えず、中国産の蜂蜜を食べるのはやめよっと。

  • 2012年現在、ミツバチ事情はどうなっているのかな?
    まだ、原因不明の大量死は続いているのか?

  •  ある日一夜にして忽然と大量のハチが失踪? 本書は蜂群崩壊症候群CCDと呼ばれる原因不明の現象の謎に迫るサイエンス・ノンフィクションだ。

     CCDは典型的な探偵小説そのもので、興味をそそる要素をすべて備えている。つまり、不可解な死、消えた死体、世界の破滅を招きかねない結果。その上、容疑者は山ほどいる。犯人の可能性を示す指はあらゆる方向に向けられ、なかには驚くようなことまでほじくりだされた。(p95)

     犯人候補としては、携帯電話の電波中継塔説、宇宙人による拉致説、地球温暖化下人説などあらゆる可能性が検証された。自称探偵の科学者や研究者達が我先にと、犯人を見つけるため躍起になっていた。まずはじめに、大きな注目を浴びたのはコロンビア大学の高名な研究かで、遺伝子分野の花形であるイアン・リプキン博士である。緻密な捜査によって彼はついに容疑者を突き止めたのだ。それはイスラエル急性麻痺病ウイルスである。『サイエンス』に掲載された論文で以下のように結論付けている。

     「CCDに侵されたコロニーのミツバチにおいて、イスラエル急性麻痺病ウイルスの配列が広範にみられること、およびCCDの発生とこのウイルスに感染したミツバチの輸入の時間的地理的一致をかんがみると、イスラエル急性麻痺病ウイルスはCCDの有意な指標であることが示唆される」

    と断言せずに有意な指標であると控えめに表現していたが、マスコミにとっては原因と同義であった。この論文によって一応の解決を見ることになるだろうとそのときは誰もが疑わなかった。がこの仮説は結局すぐに反証される運命にあった。その後も、ノマゼ病、ギイタダニなど犯人候補が挙がったが真犯人であるという証拠は見つかっていない。

     ところで、ミツバチと私たちの食生活は密接な関係も持っているということを知っているだろうか。ミツバチには花粉交配という重要な仕事を担っていて、合計すると百種類近くの作物がミツバチに頼っている。花粉媒介者のおかげで、食物の実の恩恵を受けることができるのだ。花粉媒介者としてミツバチほど優秀なエージェントはいない。学習能力が高く、順応性に優れている彼らの存在の偉大さに畏敬の念を感じずにはいられないくらいだ。

     さて、原因は複合汚染である説が有力であるが、そうであっても完全には解明されていないという現実は変わらない。といってそのまま手を拱いている訳にはいかないので、CCDを抑えるための努力が養蜂家の間でなされている。その秘訣は自然の流れに任せることだという。自然の復元力に任せることこそたった一つの冴えたやりかたなのだ。人間の介入によって急激な変化(農薬汚染や、環境の変化、人為的な繁殖)を強制した結果、システムにバグが発生してシステムダウンしてしまった可能性が最も高い。

     本書は知的好奇心を刺激する探偵小説であると同時に優れた経済問題、環境問題書、ビジネス書でもある。いろいろ考えさせられること間違いなしの良書だ。

  • ハチが飼いたくなる本。環境の様々な事に話が広がり、色々な知識が得られる。読み物としてとても面白い。

  • 原因は今でも不明。そのとっかかりすらもない。カーソンの指摘通りになりつつあるのが、薄ら寒い。

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