移行化石の発見

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163739700

作品紹介・あらすじ

ダーウィンが『種の起源』で進化論を提唱したとき、もっとも有力な反証となったのは、化石として出土している古代の動物と現生の動物とをつなぐ、「移行期の種」の化石がみつかっていないことであり、それは「ミッシング・リンク」(失われた鎖)と呼ばれた。だが1980年代以降、とりわけ21世紀に入ってから、クジラ、鳥、ゾウなど様々な動物について、「移行化石」が相次いで発見されている-。

感想・レビュー・書評

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  • ダーウィンが進化論を提唱した時、最も有力な反証となったのは、化石として出土している古代の動物と原生の動物とをつなぐ「移行期の種」の化石が見つかっていないことであり、それはミッシング・リンクと呼ばれた。だが1980年代以降、特に21世紀に入ってから、クジラ、取り、ぞうなど様々な動物について移行化石が相次いで発見されている。

    ウマは、時代とともに大型化し、華央が長くなり、指の数が減るという方向へ直線的に進化したと考えられてきた。しかし化石記録は、原生ウマがランダムな進化の中で偶然生き残った種であることを示す。

    人類もまた偶然の産物である。

  • 進化の歴史を紐解く鍵となる移行化石。
    化石というモノ自体の発見だけでなく、種が進化(移行)するという概念の発見・発展から順を追って説明していく。
    最新の知識を基に、進化と進化をめぐる議論についてわかりやすく解説し、ついでに(まるでついでのようなさりげなさで)科学と向き合う姿勢を考えさせる。

    子供の頃にわくわくしながら図鑑を眺めていたことを、いつしかすっかり忘れていた。
    そんな懐かしさごと楽しめた。
    古代生物学の世界におけるここ何十年かの研究成果はすさまじいらしい。
    現在の「古代観」は記憶の中の古代観とはずいぶんと様変わりしていて驚いた。

    物語は2009年、「ヒトとサルをつなぐ最古の生物」として華々しくデビューした移行化石「イーダ」をめぐるお話から始まる。
    そこで科学の扱われ方への疑問を提起。
    でもそれは横に置いて、まずは化石の「発見」(新大陸発見的な意味で。この変な石がかつて動植物だったと気づくところ)からはじめましょう。

    章ごとにテーマを立てて、水生動物や恐竜、馬、哺乳類に人類と進化を説明しつつ、
    「生き物は絶滅なんてしない。なぜなら神様が創った完璧な世界に絶滅なんてありえないから。」
    という時代から、
    「オーケイ、進化は・・・まああるんだろうけど人がサルからできたとかありえない。だって人は唯一神様がご自分のお姿に似せて作った崇高な生き物なんだから」
    という時期を経て
    「これは人類の祖先です。なぜなら祖先がいるはずだから。人のルーツちょう見たい。だからこれは人の祖先のはずだ!」
    という現代までの進化概念の変遷をたどっていく。

    これは生物の進化の歴史であると同時に、進化をどう読むか・どう受けとめるかという学術論の歴史でもある。

    いつの時代にもイデオロギーにそって世界を読もうとする人がいる。
    その類の人たちは、最初から決まっている(自分の脳内の)答にしたがって現実をゆがめることさえいとわない。
    それは現代でも同じことで、アメリカではいまだに進化論を認めない人たちがいるし、逆に「人類の祖先を発見したい→これは人類の祖先の化石であるはずだ!」とつっぱしる人もいる。
    発見の栄誉を手にしたくて、故意にせよ故意じゃないにせよ、自分の発見こそが「本物」だといい募り、「証拠」の改竄までする人もいる。


    著者は大学時代の教育実習で、小学生に進化論を教えようとしたところ、校長に「面倒をおこさないでほしい」と止められたという。
    これを聞くとうわ信じらんねえアメリカ怖い野蛮!と思うんだけど、ちょっと分野をそらせば似たようなことは日本でもおきている。
    性教育や歴史教育などなど。

    この本の根底には、著者のそんな経験に根ざした、正しい知識を手に入れるための、そして正しい知識の重要性を知らしめるための、伝えようという意志がある。
    正しさよりも「わかりやすさ」(事実を誤認させる情報を「わかりやすい」とは言わないけれど)を重視する派手好きなマスコミへの警鐘であり、そんなものに簡単に流されてしまう視聴者への啓蒙にもなっている。

    で、面白いんだすごく。
    訳も良い。


    関連本
    「ヴィクトリア朝の昆虫学」http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4887217854博物学とイデオロギー。
    ミル「自由論」http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4003411668自説の正当性を高めるには反論をとことん研究してそれに耐える持論を鍛え上げること。という考えが学者にはとくに必要。

  • 本屋さんのいつもと違う本棚を見ていて、「これはっ!」と思い、手に取りました。原題は“Written in Stone: Evolution, the Fossil Record, and Our Place in Nature”。

    「AからBは分かれたのではないか」という、継ぎ目(の証拠)にあたる生物の化石が「移行化石(英語では“missing link”)」。表紙のイクチオステガも、魚類が陸へ上がることを選んだ証拠となる移行化石。イクチオステガだけではなく、始祖鳥や原人など、子ども時代の恐竜図鑑などで「分かれめ」を知っていると思っている化石の定説と現在のポジションが、つぶさに紹介されています。

    読んでいてじわっと効いてくるというか、全編を貫いているのが、古生物学は、宗教に裏付けられた(それだけじゃないかもしれないけど)「人間とは最高の位置にあるべき」という考えと密接に関連していたということ。ときにはそれに政治も加わる。移行化石という証拠はやっぱり少ないし、それがないことが幸い?して、「原始的なものから最も高度なものへ」という、筋が一本通ったシンプルな「進化論」を形作れる。今では進化は多様であり、偶然性に満ちているという説がようやく一般的になってきたけど、以前の姿勢はまだ抜けきれないんだ…というのが、著者さんのサイエンスライターを志したきっかけに如実に出ていて、これには素直に驚いてしまいました。こういう話、うわさには聞いてたけどねー。

    宗教がらみの面では第1章「化石と聖書」、第2章「ダーウィンが提示できなかった証拠」がディープインパクト。ケーススタディではどれも面白いけど、第4章「羽毛を生やした恐竜」と第9章「ネアンデルタールが隣人だった頃」の、従来(というか数十年前の恐竜図鑑的な)考えをじわじわと崩しながら詰めていくところが好みです。

    移行化石とされる生物と、それをめぐる歴史的状況をていねいに追っていく道筋は、学名盛りだくさんでちょっと疲れることもあるんですけど(笑)、訳の処理が的確で、ノンフィクション翻訳にありがちなまわりくどさが最小限に抑えられているからか、ひっかかりなく読めるような気がします。スティーブン・ジェイ・グールド『ワンダフル・ライフ』を読んでいたときのような、エキサイティングで楽しい読書時間でした。新しい恐竜図鑑、買ってみようかしら!

    • diver0620さん
      後でいろいろ間違いを指摘されてはいましたが「ワンダフル・ライフ」もとっても楽しい本でした。謎解き要素が多くミステリーに通じるドキドキ感がある...
      後でいろいろ間違いを指摘されてはいましたが「ワンダフル・ライフ」もとっても楽しい本でした。謎解き要素が多くミステリーに通じるドキドキ感があるからでしょうか。この本も面白そうです。夏休みに寄ってくる虫と闘いながら外で読むのにぴったり!
      2011/07/29
    • Pipo@ひねもす縁側さん
      数日前にも、始祖鳥の分類に関する新説が報道されていた(と思う)ように、新しい要素が発掘されるたびに、どんどん流れが変わっていくさまが、古生物...
      数日前にも、始祖鳥の分類に関する新説が報道されていた(と思う)ように、新しい要素が発掘されるたびに、どんどん流れが変わっていくさまが、古生物学の面白さなんでしょうね。研究するかたは大変ですけど。機会があれば、お休みのお供にどうぞ。がっつり元は取れます!
      2011/07/29
  • ☆どうも、サイエンスライターの本はだらだらとしているな。

  • 進化論はちゃんとしたサイエンスなのだということが理解できる一冊。ただしサイエンスライターが書いたにしては必ずしも全ての人にとって読みやすいとは言えないかも。

  • さまざまな種の「移行化石」を紹介する傍ら、古生物学史上の論争も概観しており、どういった流れで現代のどういった理論が主流になっているのかがわかりやすく、丁寧に記述されている。
    とても面白かったのだけど、ただ著者がどうもスティーブン・グールドに私淑しているような感じで、ドーキンスやサイモン・コンウェイ・モリスに対してちょっとアンフェアのような印象を持った。印象だけどね。
    ちなみに僕もグールドファンです。

  • 読みたい

  •  新しい種と古い種の中間となるいわゆる「移行化石」が知らない
    間に多く発掘されていたことに単純に驚いた。 進化の歴史について
    は、これからまだまだ議論が続いていくことだろう。

  • アメリカ人の半分はこれ呼んだら激怒するんだろうな

  • 本屋で、こいつはなんか面白そうだ!と、そのままレジまで持って行った本。

    ヒレから指
    恐竜と鳥
    哺乳類





    それぞれ章にわかれ、発見された化石から、移行について述べている。やはり人間として生を受けたため、人の章は興味深かった。なんといっても現在我々人類は、数百万年を経て、ただ1種のみの存在なのですから。

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