サマーサイダー

著者 :
  • 文藝春秋
3.69
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本棚登録 : 430
感想 : 69
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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163806402

感想・レビュー・書評

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  • 廃校になることが決まった出身中学での作業のために集まった倉田ミズ、恵悠、三浦誉の三人は、それぞれに言えないままの想いや秘密を抱えながら作業を進めていく。彼女たちを結びつけているのは、過去に変死体となって発見された担任教師、佐野青春(アオハル)の記憶で……。

    ……読み終えた瞬間の、言いようのない重みはなんだろう。
    少しずつ明らかにされていく過去の記憶は、もちろん明るいものではありません。そこに彼女たちの身勝手さ、劣等感や、後ろめたさが重なって物語に薄暗さをかもし出します。心地の良い風、さわやかな太陽、それら全ての“清々しい夏”を排して、耳障りな蝉の声とじっとりとする夏の息苦しさを思わせる空気がありました。
    男2人の関係がとても、とても好きでした。恵の持ち合わせた傲慢さはあまりにも人間らしく、そこに三浦の劣等感と嫌悪感とが入り混じって、見ている方が痛々しくなるほどの軋みを見せる。間に入る倉田の存在は決して緩衝材には成り得ないのです。彼女を想うがゆえに、なおのこと内面での軋轢を生みだしていく、そんな三人の姿の向こうに人間の暗さを見てしまって、胸が苦しくてたまりませんでした。
    危機に陥った倉田の心に浮かぶのは三浦だけれど、助けを呼ぶのは恵。そこに倉田という女の子が見えてくるような気がします。ラスト部分、生理的な気味の悪さのあとに、あんなにもいじらしい二人を映しだしてくるのがすさまじい。
    序盤で名前の挙がったヤッチョという俳優は、やっぱり、「代々木Love&Hateパーク」の蓮沼保人ですよね! ちょうどこの本の前に読んでいたのでにやにやした部分でした。

  • 帯読んだ限りこんな感じとは思わなかった。
    同じ罪を背負った若者の薄暗い青春ストーリーかと思いきや、まさかあんなテーマが絡んでくるとは…
    個人的に、途中描写が気持ち悪いところもありましたが、壁井さんの話はやっぱり独特で好きだなと思いました。

  • ラノベより少し読み応えのある感のある内容で、さわやかな青春物かと思えば、べたべたの砂糖入り炭酸水がずっと肌に残っているような、飲み干した最後の一口のような読後でした。
    夏の物語ですね。

    私はアオハルとミズのエピソードが好きです。
    年齢的にアオハルに近いかも知れないけれど、アオハルが一番、ミズの幸せを願っていたんじゃないかなあと。
    ちひろはミズはおろか、たぶん三浦にも勝てなかった…。
    夏央よりずっと、アオハルのなにかを受け継いでいくのはミズと三浦なんじゃないかなあ。蝉として生きてきたはずのアオハルが、蝉としては不必要な「たいせつなもの」を見つけてしまったわけで。
    ミズはアオハルとのことを恵には話さなくても、三浦には話すと思うし、そのときは三浦もいろいろ思い出して、「あーあれは不完全な三角関係だったのか」って思い至るのではないかと。

    少し気持ちが悪くて、でも読み進めないとさらに居心地が悪い、そんなお話しでした。

  • 市川先生繋がりで読みました。市川先生の挿絵最高です。恵がだいぶ不憫でした。夏の狂気っぽい雰囲気がよかったです。

  • 面白いんだとは思うけれど、好みではない。ちょっと気持ち悪くなる話。
    2012/12/16

  • 蝉怖くなった。タイトルと挿絵が爽やか系なのに、内容が怖すぎた。佐野が、自分の担任と似てて、トラウマになりそう。名字も一緒で、性格や体格も似てる…。小2の時の、三浦と倉田のエピソードは可愛かった。

  • 夏が嫌いになりそう。
    夏が、と言うよりかは蝉が。
    蝉が怖くてたまらなくなりそう。

    もっと青春の話かと思った。
    とはいえ、壁井ユカコらしい。
    人間だけど、人間でない。
    気になる終わり方で、続きが気になる。
    もし続きがあるならば、それは完璧に恋愛だ。

    このあとの3人の進路、関係性が気になるところ。

  • 女子1人男子2人の幼馴染み青春ものとしては面白かった。まさかのホラーというかグロいとこはきびしかった・・・。図書館で借りたら、本文中の難しい単語が鉛筆で塗りつぶされていた。たしかに唐突に小難しい単語が出るのは違和感あったかも。

  • 蝉について詳しくなりました 笑

    文章に夏とか爽やかさがにじみ立てて
    題名にピッタリだなと思いました。

    相手を思うがゆえのすれ違いとか
    恋愛要素もあったり、
    ラストの場面はホラーじみていて怖かったです。

  • 2012.08.18

    青春小説かと思っていたら、意外とホラー作品でした(笑)
    自分には欠陥があるから、大切な人を守れない。
    その偏った考え方が如何にも思春期特有の考え方で、だからこそもどかしく懐かしかったです。
    今振り返れば、なんてないことも、その頃の自分にとってはそれば全てだった。
    蝉は成虫になったら一週間で死んでしまう。だからこそ、幼虫のうちに何をするべきか考える。人間も同じなのかもしれない。

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著者プロフィール

第9回電撃小説大賞〈大賞〉を受賞し、2003年『キーリ 死者たちは荒野に眠る』でデビュー。その他の著書に、『鳥籠荘の今日も眠たい住人たち』(電撃文庫)、『エンドロールまであと、』(小学館)など多数。

「2009年 『NO CALL NO LIFE』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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