サマーサイダー

著者 :
  • 文藝春秋
3.69
  • (28)
  • (64)
  • (51)
  • (9)
  • (2)
本棚登録 : 430
感想 : 69
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163806402

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ひー。怖かった。
    ジャンルとしては高校生の青春ものというか恋愛もので、この人のうまさが堪能できて満足。三角関係もいいね。話が進むにつれ過去の謎が明らかになってくる展開も良かった。しかし昆虫は怖いよ。ひー。

  • ■青春ものだと思っていたら結末はミステリーだった。新刊の棚に置いてある本を帯の言葉だけ読んで借りちゃうので多いからこういうことになる。(笑)

    ■いつも微笑みを絶やさない優しい女の先生が実は...ってあたりが前半の展開からは全く想像できなかったや。でも、思っていた以上に面白かったので関空の往復で読了。(^^;

  • 前半は青春小説なのかなーと思いながら読んでいましたが、話が進むに連れて不気味に。
    蝉や脱皮といったキーワードで、最初は優しかった先生が終盤で変貌。
    怖かったけど、こういうのも嫌いではない。

  • 青春小説かと思っていたら後半がホラーだった。方言を交えて描かれる登場人物たちの感情描写がリアル。

  • “「倉田、ケータイ切っといたほうがいいぞ」
    バックミラー越しに恵が言った。右に左にと首を倒してハンドルの両脇を覗き込み、ワイパーを作動させてしまって「うお」とか一人で驚いてからヘッドライトのレバーを探しあてたようで、前方の道路が白く照らされる。
    「電話かかってきたら場所が割れるやろ。ほら、前になんや芸能人が覚醒剤の容疑で逃げてて、ケータイの電波で潜伏先がわかったとかいうのテレビでやってたしな」
    ここまで来たら共謀する気満々のようだ。片手でハンドルを操りながら片手で自分の携帯電話をだして電源を切った。わたしもそれに倣って手にした携帯の電源をオフにした。"BYE"という文字を残して液晶がブラックアウトする。
    「三浦も、ケータイ……」
    荷室を振り返って声をかけた途端、こっちがびっくりするくらい三浦が大げさに身体を揺らして顔をあげた。
    「倉田?」
    心配そうな声で呼ぶ。勢いよく顔をあげたわりに頼りなげに視線が泳ぐ。あっ、とわたしは気づき、パネル壁を離れて三浦のほうに駆け寄った。坂道の傾きのせいでたたらを踏み、ボール籠の縁に摑まったが籠がごろごろ滑ってもろともにあらぬ方向に押しやられてしまい「ぎゃー」と騒ぐ。「おまえなにやってんじゃー」と運転席から恵が呆れた声をよこす。一人で羞恥しつつ籠を押し戻し、三浦の前に正座した。
    「ここにいるよ」
    「騒いでたでわかる。ケータイやろ。今日持ってきてえんで問題ない」
    三浦は笑いはしなかったが、強張った表情が心持ちほぐれたように見えた。荷室には窓がないため運転席側の格子窓からわずかな光が射し込むだけだ。ちょうどそう、小学校二年生の、陽が落ちはじめた境内で三浦がそろそろ帰らんとと弱気になりはじめたときくらい。あのときはまだまったく視界が利かないわけではなかったはず。すこしずつ悪くなっていく、と昨夜三浦のお母さんが言っていた。八年前に比べて今の三浦の視力はもっと悪くなっているのだ。
    「見えんの……?ぜんぜん?」
    「翳……はな、こんくらい暗いともう、真っ暗にしか見えん。ここは全部、翳やろ」
    視線を心許なく泳がせて、暗澹とした声で三浦は言った。”[P.256]

    市川さんの挿絵が壁井さんの文章にぴったり当て嵌まってるなぁとしみじみ。体格とか。骨とか。空気とか。
    壁井さんの話が爽やかの一言で括られるはずがない題名に騙されるものかと思って読んでみれば何というか抑え込めるぎりぎりと生きるどろどろ。
    最初は三浦も蟬なのかと思ってた。
    「母親」という生き物は「子供」を守る為に動くのはそれはそうだろうけれど、ぞわりとしてしまう。
    谷津くんが実に絶妙な立ち位置だなぁ。
    追い詰められた感のあるぎらぎらした少年の描写と最後辺りの描写がとても好き。
    倉田ミズ、少女。
    三浦誉、少年。
    恵悠、少年。
    佐野青春、先生。蟬。
    松沢千比呂、先生。
    夏央、千比呂の子供。

    “「いつ俺が」
    抑えた声で言いかけたところで、思いあたることがあった。
    佐野が学校にでてこなくなる数日前のことだ。不本意極まりない五者面談の場に出頭させられ、とにかく気がささくれているときに、廊下で倉田とでくわした。様子を見に来たのだろうということはすぐにわかったが、話を聞かれたかもしれないと思った途端頭に血が昇って……死んでまえなどとは誓って言っていない。しかし「倉田に(目のことを)知られるくらいなら(俺が)死んだほうがましだ」と言ったのは確かに憶えている。ここのところ女子からチクチクした視線を感じるような気はしていたが、いろんな部分が端折られてそんな伝わり方をしていたとは……。なにを口走ったか全部は憶えていないが他にもひどいことを言ったかもしれない。壁に突き飛ばしたような気も。
    あの日の翌朝、どっかで脱げたはずの上履き片方が下駄箱に放り込まれていた。履こうとしたら中になにかが入っていた。訝しげに上履きを持ちあげて振ってみるとノートの切れ端が落ちてきた。
    乱暴なでかい字でこう書いてあった。
    "ほまれ あほ"
    校内での自分の評判は知っているから誰かに嫌がらせをされても仕方ないと思っただけですぐに捨てたのだが。
    「……あれ入れたの、倉田か。仕返しか」
    せっこいやり方で仕返しして、子どもかあいつは。
    心臓をきゅうっとつねられたような感じがした。痛みとは違う、苛立とも違うそわそわするなにか、とにかくいてもたってもいられない感情に衝き動かされて立ちあがった拍子に机の脚に脛を引っかけ、跳ねた机に谷津が顎をぶつけて「んが」と白目を剝いた。どこへ行ってどうしようと考えていたわけではないのだが、他人の机や椅子も蹴飛ばしておそらくクラス中の顰蹙を買いながら廊下にでたところで壁にぶつかった。”[P.116]

  • 倉田ミズ、恵、三浦3人が、卒業して廃校になった中学校で、体育用品などを途上国に送るため、ボランティアに駆り出されたところから、話しは始まります。
    とても不思議な小説でした。
    この3人は幼馴染みですが、関係が最初ははっきしりしないまま話しが進みます。中学3年生の担任、佐野が現れてから思わぬ展開になっていきます。夏休みのボランティアを頼んだ、千比呂先生も加わって、ストーリが加速し後半は一気に読んでしまいました。
    蝉の抜け殻や、脱皮を望んで豹変する佐野のようすは、少し怖かった。『月と蟹』(道尾秀介著)の作品を彷彿としました。

  • 青春?ミステリー?ファンタジー?

    あの先生はいったい何者だったんだろう・・
    若者たちが悩む何かをたとえたんだろうか・・・?

  • 爽やかな中に潜む奇妙な感じが、読み進めるうちにどんどん大きくなっていき、後半は読んでいてとても怖かった。
    『蝉』とは一体なんだったのか。
    壁井さんの小説に漂う一定の雰囲気が好きです。

    そこはかとなく恵が不憫だったような。

  • SFのような、ホラー風味のミステリーのような、一筋縄ではいかない青春小説。

    暗がりの中でお互いの心に歩み寄りながら、触れ合う場面はドキドキ。甘酸っぱいわ、胸キュンするわで、読みながらぐぐっと前のめりに。
    正直、運転席で蝉と一人格闘してる恵を差し置いて、イチャついてんじゃねーよとは思ったけど。不憫な男だ。

    別に恵びいきなわけじゃないけど、表紙に三人描かれてるくらいなら恵の章があっても良かったんじゃ・・・?

  • ほろにが青春グラフィティ。
    かなり読みやすかった。
    もちょっとがっつり終わらせてほしかったかな〜(´∀`)

全69件中 41 - 50件を表示

著者プロフィール

第9回電撃小説大賞〈大賞〉を受賞し、2003年『キーリ 死者たちは荒野に眠る』でデビュー。その他の著書に、『鳥籠荘の今日も眠たい住人たち』(電撃文庫)、『エンドロールまであと、』(小学館)など多数。

「2009年 『NO CALL NO LIFE』 で使われていた紹介文から引用しています。」

壁井ユカコの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×