白椿はなぜ散った

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163808000

作品紹介・あらすじ

望川貴は幼稚園で出会った日仏混血の少女・万里枝プティに心を奪われ、二人は永遠の絆で結ばれていると確信する。小中高大学と同じ学校で過ごし、大学でも同じ文学サークルへ入会するが、そこで出会った大財閥の御曹司が万里枝に急接近する。貴は凡庸な容姿の自分とは違い、驚くほどの美貌を誇る異父兄・木村晴彦に、万里枝を誘惑するよう依頼する。貴の計画は成功するかに見えたが-。錯綜する愛憎。はたして真実の絆はどこに。

感想・レビュー・書評

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    望川貴は幼稚園で出会った日仏混血の少女・万里枝プティに心を奪われ、二人は永遠の絆で結ばれていると確信する。小中高大学と同じ学校で過ごし、大学でも同じ文学サークルへ入会するが、そこで出会った大財閥の御曹司が万里枝に急接近する。貴は凡庸な容姿の自分とは違い、驚くほどの美貌を誇る異父兄・木村晴彦に、万里枝を誘惑するよう依頼する。貴の計画は成功するかに見えたが―。錯綜する愛憎。はたして真実の絆はどこに。
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    幼稚園のときに出会ってひと目で惹かれあったタカと万里枝。小・中・高・大と同じ学校で過ごし、大学でも同じサークルに入ったが、そこには万里枝に視線を送る大財閥の御曹司がいた。自分に自信のないタカは、美形の異父兄・晴彦にある計画を持ちかける。まさにそこが間違った道の分岐点だったのである。微笑ましかった幼稚園時代から、歳を重ねるごとに拘りが生まれ、執着が強まり、妄想が膨らんで、現実をそのままに見ることができなくなっているようなタカの姿には哀れみさえ感じさせられる。その彼の純粋すぎる愛情が周囲に広げた波紋の大きさは、彼自身の想像をもはるかに超えるものだった。殺人事件の容疑者にされそうになっている作家の恋人を助けたい一心で奔走する香里がたどり着いた真実を知ったとき、読者はどうしようもない空しさに胸をかきむしりたくなる。タカもおそらく同じだっただろう。救われない物語である。一途さが恐ろしい一冊である。

  • 表紙が乙女チックで読むのをためらいました。が、中身は表紙とは違い、中年オヤジでも十分楽しめる物語です。最初の章を読んだイメージは純粋に人を好きになる男の子の物語って感じでした。章が進むにつれ、ミステリー風に。
    自分の見栄えって、やっぱり気になりますよね。とくに好きになった女の子が超美人だったりすると。主人公にどことなく共感する部分があります。

  • いい意味でとっても期待を裏切られた作品。思っていたよりずっと面白かった。
    幼馴染を一途に愛する青年の大学時代の事件と、癌に冒され、盗作と殺人の疑いをかけられる有名作家。二つの事件の結末が照らす衝撃の真実。
    途中からとにかくページをめくる手が止まらなくなります。
    エキセントリックな部分にも気持ち悪さを感じないのは叙述が美しいからなのでしょう。
    それぞれの登場人物がちょっとわかりやすすぎる気もしましたが、ヒロインの持つ謎と奥深さがとっても魅力的。
    作者の今後の作品にも期待です。

  • サスペンス風味の溢れるミステリ。作家の盗作疑惑から発生した殺人事件と、とある女性の謎の自殺。それらを巡る謎の数々は魅力的なのだけれど。あまりに卑屈な愛情が行き着いた先の悲劇、という構図がやりきれないなあ。
    彼はこの真実を知るべきではなかったのかも。だけど、いくら誤解があったとはいえあの仕打ちはあまりに卑怯だったと思います。この真実は彼に与えられた最大の罰、だったのかも。

  • 幼稚園から大学まで、同じ学校に進んだ幼馴染みの日仏ハーフの彼女。
    その彼女を人知れずじっとりと愛し続ける主人公の青年。
    他の男が彼女に近付くのを阻止するため、容姿端麗の異父兄に彼女を誘惑するよう依頼する。それは成功したように思えたが…

    大事な彼女から男を遠ざけるため、別の男を差し向けるっていう気持ちが全く理解できません。
    半ばからは、彼らが在籍した大学の文学サークル絡みのミステリーへと様子が変わりますが
    印象としては、まあまあ…。何せ前半のストーカー的な行為がインパクト強かった。

  • 5歳の時からずっ一人の女性を思い続けていたタカ、最初のほうはストーカーぽくて気持ち悪いと思ったけど、後半それが伏線になっていたり、やや退屈しかけたところで視点が変わるなど面白かった。
    ただ、謎解きがお粗末なのと、辛い結末なので読後感がよくない。
    ミステリーより恋愛小説だと思えばいいのか。
    (図書館)

  • 5歳の頃からずっと一途に一人の女性を愛し続けている望川貴。
    彼の思う相手はフランス人の母親と日本人の父親とのハーフで、赤毛と灰色の瞳をもつ万里枝。
    中学に入ってからは疎遠になりかけたものの、二人の幼馴染としてのつき合いはずっと続いていた。

    しかし、大学生になった時、貴は万里枝が同じサークル内の別の男性に目を向けていると感じるようになる。
    その頃、貴のもとを母の前夫の子供-貴にとっては異父兄にあたる晴彦が訪ねてくる。
    晴彦は自己中心的な性格で軽薄なプレイボーイだが、ピアノには真摯な姿勢でいる美しい青年。
    貴は兄と出会い、ある残酷な計画を思いつく。
    そして、万里枝への思いを託して1篇の小説を書きあげる。

    それから十年後-。
    貴の書いた小説がある小説家の作中作としてそのまま使われる。
    その小説家によると知人の女性から使って欲しいと言われたらしいが、その事で彼はある人物から脅迫される事となる。
    そして、その脅迫者が殺害されて彼に容疑がかかる事に-。
    彼の無実を信じる、恋人の香里は当時文芸サークルに属したメンバーと会い、話を聞いていく。

    こういう流れでストーリーが進み、最初は貴の目線、2章からは主に香里の目線で描かれた話となっています。
    2つのストーリーは雰囲気が違うので、まるで1つの小説の中に2つの物語を見たような気になりました。
    それぞれの話にそれぞれの結末が用意されていてよく出来た話だと思います。
    登場人物も会話などからその人となりがはっきり見えてきました。
    また、ストーリーだけ見ると謎めいていて妖しい雰囲気が漂っていますが、文章が理知的なため現実離れした感じじゃなく・・・そのギャップがむしろ魅力に感じられました。

    読み終えて何とも切ない気持ちになりました。
    何の予告もなくいきなり花ごと落ちる椿が万里枝という女性の姿が重なって・・・。
    主人公がなくした純粋な気持ちにも重なって・・・。
    かけがえのないものを一瞬で失った主人公。
    自業自得とはいえ、そこに至るいきさつを見ると哀れさを感じます。

    長い間、真実から頑なに目をそらしてきた結果、それを知った時の衝撃と慟哭。
    美しくも残酷な話だと思います。

  • 悲しい。

    粘質的な執着が気持ち悪いのに、
    最後の最後で可愛そうになった。

  • 気持ち悪い。

  • 冒頭に惹かれて読みはじめた。幼少時代の官能的な描写は素敵なのだけれど、登場人物が増えるとその雰囲気はすっかり色あせた。作者の人物描写が下手すぎる。全員に個性がなく、1人1人がはっきり浮かんでこない。ミステリ要素も「だから何」としか言えないし、SFっぽい要素もなかったことになってて、人間として成長した人物もいないし、結末も潔さのない尻切れトンボ。一体どこを愉しめばよかったのかさっぱり。。途中にちらほら出てくる「作家になれなかったひと批判」にはやたら気持ちがこもってると感じた。

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著者プロフィール

1961年、京都市生まれ。パリ第七大学理学部卒。2004年に『密室の鎮魂歌』で、第14回鮎川哲也賞を受賞。著書に『密室の鎮魂歌』『出口のない部屋』『天使の眠り』『めぐり会い』ほか。

「2021年 『味なしクッキー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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