とっぴんぱらりの風太郎

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 547
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  • Amazon.co.jp ・本 (752ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163825007

感想・レビュー・書評

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  • 万城目さんの好きそうなモチーフ全部乗せな作品。
    まだ物語の余韻から抜け出せない。
    いろんな想いがどっと流れ込んでくるラストシーンに飲み込まれてしまった。

    思えば「約束」について、万城目さんは繰り返し繰り返し書いて来たのではなかっただろうか。
    それがこの物語を読見終わって真っ先に思ったこと。
    風太郎が交わす約束の重さをどうしたって感じずにはいられなかった。
    正しいとか、間違っているとか、いいとか、悪いとかじゃない。
    ただただ約束を果たそうとする姿に我が身を振り返る。
    風太郎だけじゃない。
    皆がいろんな約束によって立たされてるようにも思える。
    もう嫌だ、駄目だ、と思った時に私を動かすのはいったい何か。
    それが「約束」なのではないか。

    まだ今はここまで。
    でも万城目さんの書く物語がまた次の場所に連れて行ってくれる。
    そんな気がするから今は日々の想いを掬いながら待ちたいと思う。

  • 装画が中川学さん…ということに惹かれて、久しぶりに万城目作品を読みました。

    伊賀の落ちこぼれ忍者の風太郎と、その忍び仲間たちの活躍を描いた作品です。
    最初のうちは伊賀を追い出された風太郎が、ヘンテコなひょうたんを手に入れたことから、なぜかひょうたんの栽培を始めることになり…と、展開が全く予想できませんでした。
    でもきっとコメディタッチで進むのだろうなぁ…とぼんやりしているうちに、物語はどんどん不穏な空気が満ちてきて、最後のページは半ば呆然としながら読み終えたのでした。

    大坂夏の陣で燃え盛る天守閣の周りで起こったドラマに胸が熱くなりつつも、同時に悔しさも残る読後でした。
    けれど、この物語の何百年か先に『プリンセス・トヨトミ』があるのだと気付いたとき、すうっと救いの風が吹いてきたような明るい気持ちになれたのでした。

    余談ですが、最後まで風太郎を「ぷうたろう」と読むことに馴染めなかったのは私だけでしょうか…

  • 急遽、チビちゃんの卒園式でスピーチを頼まれて、読書を封印。終わったらこの本を読むぞ!とそれを目指してやってきてようやく解禁~!
    でも、この巨大弁当箱はいったい。通勤読書に対する挑戦?

    伊賀の柘植屋敷で忍びとして育った風太郎は伊賀を追い出され京へ。
    いつの時代か文禄生まれって言われてもピンと来なくて、モヤモヤしながら話が進む。
    だんだんと明かされる風太郎の過去。
    生きている時代の背景。
    「まったく、あの屋敷の生き残りは皆、頭がどうかしておるの。風太郎、百市、おぬし、ーー、まともな忍びはひとりだっておらぬではないか。」
    と怒鳴らせるほど、蝉、百市、黒弓、常世、伊賀の忍びの面々が個性的で魅力的。
    誰が敵で誰が味方か。
    最後までハラハラが止まらない。
    まさに忍びの駆け引き。

    主人公が毎度このキャラなのか、って気もしてきたけど、因心居士とか万城目ワールドも飛び出す。
    瓢箪を育てる過程とか、我が家も瓢箪を作ったことがあり、ニヤニヤする。

    登場人物が面白いので、ニヤニヤしたり、ホロリとしたりこの厚さだけど、あっという間に読む。
    最後は寂しい。
    忍びって、やはり物悲しい。
    こんな風に名も残さずに死んでいった人々で現在はあるんだな。

    「儂はとてもうれしかったのだよ、風太郎。人として見られて、とてもうれしかった。ただーー、それだけじゃ」

    さて、これがプリンセス・トヨトミにつながるのかな。
    いろんな本を読んだけれど、家康はどうも好きになれない。
    この家康をあそこまで描いた大河ドラマって凄いと改めて感じる。

  • ひょんなことから、伊賀を追われた忍・風太郎が大阪で活躍する時代小説。
    登場人物は、誰しもがこんなはずじゃなかったという思いを抱え、色々なものに縛られている。自由に生きることは、平和な時代にのみ許された身に余る幸福なのだろうかと感じさせる。忍として与えられた任務を全うするため、友との約束を果たすため、友を生かすために、自分の命を捨て投げ出す。コミカルな作品が多い万城目さん作品の中で、突拍子もない設定はとても少ない。そこにいわゆる“万城目作品”を期待した読者で、残念に思った人もいるのでは。
    文藝春秋12月号内のエッセイで、万城目さんは早乙女貢さんの「歴史小説を書くとき、資料は捨てるべき」という言葉を引用して時代小説に対する考えを語っている。

    資料を調べなければ小説は書けない。資料を調べるには手間がかかる。人間、手間をかけて知った内容を、どうしても作品の中に取り入れたくなる。俺はこれだけ知っているのだと誇示したくなる。でも、それは小説のためにならない。

    この言葉の通り、本作ではまどろっこしい時代背景の説明等をほとんど省いているように感じた。登場人物についての描写が多く、とてもキャラクターが立っている。時代小説であっても、読みやすく誰にでも読みほぐすことが可能なエンターテインメント作品であった。(それにしても前半部が長すぎですが…)

  • 日本が統治され戦国の世が収まりつつある時代に、食い扶持のかかる忍者は道具のように扱われ、そでも必死に、時に使命と感情の間で揺れながら任務を遂行する姿に泣けます。『プリンセス・トヨトミ』でも描かれていましたが、大阪の人って太閤さんに親しみがあるんじゃないのでしょうか。昔、大阪につとめてたときにランチで出前を取っていたお店が、その名も『太閤はん』でした。読んだ後は、ちょっと豊臣家贔屓になります。ただ、ちょっと話しが長かったな~。

  • タイトルはおちゃらけてるし、万城目さんだしで「あカルい」話だろうと思って読み進めていったら、だんだん暗くなっていくのでびっくりした。
    でも面白かった。

    風太郎たち忍びの立場の弱さが悲しかった。
    権力者たちにいいように使われて・・・。
    だから最後は自分の意志で戦えてよかったと思う。

  • ところで、とっぴんぱらりってどういう意味なんだろう。
    ⬆︎調べた。物語の結語らしい。
    「とっぴんぱらりのぷぅ」という使い方が多いらしい。

    江戸時代初期。
    伊賀の里を追い出され、無職の風太郎。
    ひょうたんの因心居士に、半ば強引に片割れ(果心居士)に会うための手伝いをさせられる。
    ひょうたんを育てたり、ひさご様と蹴鞠をしたり。
    そんな中、近づくいくさの気配。

    周りに流されてばかり、最後までやり遂げたことがなかった
    風太郎が守ると決めた約束。
    大軍が囲む大坂城からの決死の脱出。

    蝉と黒弓とのトリオが良かった。
    この3人の掛け合いがもっと見たかったなぁー。

  • 2013.10.9am5:45読了。一気に読んだ。徹夜。授業ヤバし。
    万城目学の最新作ということで手に取った。長い。746ページもある。ハリポタ並み。ちょっと物足りなかった。プリンセス・トヨトミに繋がる物語。先に現在を描き、後にその現在につながる過去を描く、という手法を使う物語が最近多い。漫画もシリーズの長編も。この方法は確かに面白いんだけど、そろそろ飽きてきた。
    以下、感想。
    結局一気読み。時代小説。キーは忍者とひょうたん。が思うに『しゅららぼん〜』『ホルモー〜』の方が面白い。展開がゆるやか。がっついて先へ先へと読み進める感じではなかった。長い割には…という感が拭えない。もののけの類が絡むが、同著者の他作品を読んでそのような展開に慣れているので、あまり驚かなかった。インパクトに欠ける。想像をふくらませつつ読んだら楽しいかも。最後に因心居士がひょうたん屋に願掛けをしたことで店が繁盛し、プリンセス・トヨトミでは大量のひょうたんを合図に用いたのか、とか。『プリンセス・トヨトミ』も合わせて読むことをおすすめします。あと本編とは関係ないが、各章ごとの扉絵のデザインが好き。

  • 最初は本の分厚さに圧倒されたが、意外とすいすい読み進み、読み終えた。時代劇仕立てだが、登場する人物は現代的な万城目ワールド。

  • 後半は良いが、それまで辛い。

著者プロフィール

万城目学(まきめ・まなぶ)
1976年生まれ、大阪府出身。京都大学法学部卒。
2006年、『鴨川ホルモー』(第4回ボイルドエッグズ新人賞受賞)でデビュー。主な作品に『鹿男あをによし』、『プリンセス・トヨトミ』、『偉大なる、しゅららぼん』などがあり、いずれも文学賞ノミネート、映像化等など、大きな話題を呼ぶ。また、エッセイ集に『ザ・万歩計』、『ザ・万遊記』、対談本に『ぼくらの近代建築デラックス!』がある。

「2013年 『ザ・万字固め』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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