ありふれた愛じゃない

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (468ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163900360

作品紹介・あらすじ

藤沢真奈は32歳、銀座の老舗真珠店でチーフマネージャーを務める。お局の部長に目の敵にされながらもやりがいをもって接客に励んでおり、顧客の信頼も厚い。私生活では6歳下の大野貴史と半同棲状態にあり、結婚も遠くなさそうだ。夢ばかり見るかつての恋人との苦い生活を経て、真奈は安心と穏やかな日常を望んでいた。ある日、真珠店の高橋社長に呼び出された真奈は、タヒチ出張への同行を命じられる。真珠を買い付けに行くのだ。抜擢を喜ぶ貴史にも背を押され、真珠の猛勉強を始める真奈。「気の早い新婚旅行」で自分も後から向かうという貴史のプロポーズに泣きたいほどの幸せを感じた真奈は、しかしどこか心細さを感じていた。 タヒチで真奈は意外な人物と再会する。かつて熱烈に愛した男、朝倉竜介だ。大学時代からつき合っていた竜介は、まるで生活能力のない男だった。卒業後もろくに働かず、口癖のように「南の島でヤシの実でも採って適当に暮らしたい」と言うばかりの竜介に真奈は疲れ果て、生皮を剥ぐ思いで別れたのだ。そんな中、トラブルで貴史の到着が3日も遅れることに。心細さを抱えたまま、タヒチの開放的な風土と本能のままに生きる人々に囲まれた真奈は、一層増した竜介の逞しさと官能性に胸をざわめかせる自分に気づき、貴史への罪悪感に心悩ませる―— 同性上司との対立と和解、自分らしく働きたいという思い、年下の恋人への遠慮、人生で最も愛した男の記憶……恋愛と仕事に心揺れる大人の女性であれば誰もが胸に覚えのある切実なテーマを描き、読む者のこころを強く捕える、激しいラブストーリーが完成した。 著者は2度のタヒチ取材を敢行。美しい海や島々の豊かな自然、世界一のリゾートホテル「セント・レジス」の豪奢な空間、人々で賑わう朝市や屋台村「ルロット」の猥雑な魅力、出産のために訪れるクジラ……精緻な描写で楽園の島の風物もリアルに伝える。

感想・レビュー・書評

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  • 地上最後の楽園と呼ばれるタヒチ。
    私がボラボラ島を訪れたのはかれこれ15年以上も前のこと。
    そこはその名の通りまさに天国だった。
    この世のものとは思えない息をのむような美しさ。
    そびえたつオテマヌ山を取り囲む青のグラデーションが織りなすラグーン。
    これほどの感動も徐々に薄れほとんど忘れかけていた。

    でもこの本を読んだらぶわっと一瞬にしてよみがえってきた。
    ボラボラ島の景色が波の音が空気が。
    もう余すところなくボラボラ島の魅力がつまってる。
    巻末の協力の欄に「タヒチ観光局」の文字が!
    そうかー、なるほどね。
    定番の足元の熱帯魚が泳ぐ水上コテージはもちろん、ビーチでの情熱的なタヒチアンダンス、色とりどりのパレオ、モツピクニックと言われる無人島ツアーなどなど盛りだくさん。
    おまけに何と舞台になった「セント・レジス」は実在するホテルだ。
    ボラボラ島に行った事がある人や行きたい人はもちろん、興味のなかった人もボラボラの魅力にやられちゃうんじゃないかな~。

    で、肝心のストーリー。
    「ありふれた愛じゃない」ってタイトルの割にはありふれたストーリーだった(^_^;)
    主人公は老舗宝石店に勤務する32歳の女性。
    仕事は充実し、プライベートにも可愛い年下の彼が。
    結婚を目の前にして幸せだと思いつつもどこかに物足りなさが。
    そこへ真珠の買い付けにタヒチへ出張を命じられることになった。
    なんと現地には10年前に別れた元彼が。
    年下の彼とは正反対の野性味あふれる魅力を前に揺れる心。
    ああ、危険なにおいが!!
    もうありきたりすぎるー(笑)
    他にも意地悪なお局やらセクハラまがいの社長やらテンコ盛り。
    ここにお得意の(?)官能シーンを差し込めば、村山ワールド出来あがり~♪

    もう一ひねりあったら良かったのかもとも思うけれど、これはこれで良いのかも。
    設定ありきだとしたらこれ以外に落とし所はないか。
    ああ、とっても面白かったですよ。
    宝飾店での接客から始まる冒頭シーンから引き込まれて、舞台がボラボラに移ってからは読むテンポも速くなって。
    南の島が好きな人、ベタな恋愛が好きな人には間違いないです!

  •    ーーー真珠の輝きは、貝の苦しみから生まれるーーー

    銀座の老舗真珠店で働く真奈
    現在6歳年下で真面目で優しく穏やかな『貴史』と付き合っている
    年上の女性としての思い遠慮少しの不満などを抱えながら…。
    十数年前に一緒に暮らしていた日本では「社会不適合者」ろくに働かず
    夢ばかり追っているような『竜介』
    真逆なタイプ

    特産品の黒真珠の買付けでタヒチに出向き、思いがけず再会してしまった『竜介』
    十数年前はどんなに野放図で勝手で子供っぽかった彼……
    それでも、本当に心の底から愛していた事
    そんな彼が、日に灼けて逞しくなり、他を圧するほどの生命力に満ち溢れている

    『いったいどうすれば、あの男にこれ以上惹かれずにいられるだろう』

    大人の女性の恋愛小説
    主人公の真奈の真面目で頑なな性格素敵でした。
    バーテンダーのジョジョの言葉は辛辣でとても気持ち良くまた、考えさせられる

    『きっと、すべては心の中にしかないのだーー
    怖れも、迷いも、ゆえのないうしろめたさも。
    自分に害をなすものが外側にあると思うから怖い。
    自らの心の問題だと思い定めてしまえば、
    怖れる必要はない。
    怖れても意味がない。』

    『人生は願うならどんな方向にだって舵を切ることができる』

    沢山の心に響く言葉がありました。
    村山さんの表現力素晴らしいです。

    主人公の真奈……タヒチのマナ 神の恩寵・神々の香気

  • 真珠の買い付けで訪れた、楽園の島タヒチ。主人公の真奈は楽園で運命的な再会を果たす…。
    大人の女性の心をとらえる、全身全霊のラブトーリー。450ページ超えの長編ですが
    引き込まれて一気に読みました。タヒチの美しい風景が目に浮かぶようです。
    人物描写がリアルに感じられ、それぞれがいきいきと魅力的。特にバーテンのジョジョがいい味出してる!

  • かなり久しぶりの恋愛小説。楽しくて夢中になった。恋愛小説はあまり好きではなかったけど、海外舞台はやっぱりいいな。タヒチの自然いっぱい解放感あふれるリゾートで元彼と再会。恋愛の話より、タヒチの解放感あふれる自然と海にうっとり。20と数年前、新婚旅行は絶対ボラボラ島に行きたいと夢いっぱいだった理想と現実を知らない頃を思い出した。
    主人公の真奈は、男に頼ることなく自立した女性と暗に自負しているようなところが、どうにも気になってあまり好きになれなかった。それなのに結局最後は男に走るんかい!みたいな。でも、これが現実。大半の女性の現実だと思うので、最後、真奈が自分を開放できて、行動したところは、本当に良かったし、羨ましいとも思えた。
    文中の言葉「恋に落ちるのに時間など必要ない。まばたき一つの間があれば十分だ」・・自分の人生において、こういう情熱的な恋愛を経験できなかった事、残念だな。みんなこういう恋愛を1回くらいは経験してるものなのかな?
    村山さんの本、ライトなものから他も読んでみたい。

  • まともな現代舞台の大人~~な恋愛小説読むの久々だったな~~
    南国・・・男女・・・ビジネス・・・懐かしい雰囲気だ・・・

  • 真珠店で働く真奈。
    年下の恋人がいるが、買い付けに行ったタヒチで、10年前に別れた恋人と再開。
    真珠は、母貝が体内で苦痛の末作った異物の結晶。
    シャーディーの音楽

  • 仕事で訪れたタヒチで10年前に別れた男と再会。
    恋愛小説としてはありきたりなパターンだし、主人公のマナがどうも好きになれず、恋愛小説としては今ひとつだなぁ、との印象。
    けれどタヒチの風景、海や土地の描写が瑞々しく
    リゾート気分を味わえ、開放的な気持ちになれました。
    この情景描写は一読の価値あり!
    タヒチ行ってみたいな。

  • 久しぶりに村山由佳の「おいしいコーヒー」シリーズじゃない本を読んだ。内容はよくある昔の恋人に再会して、気持ちが揺れて、いろんな人を巻き込んで、結局はハッピーエンドって話。純粋に恋愛小説を読みたかったので、それなりに満足だけど、もう少し、ハードな方が良かったかな。

  • いったいどうすれば、あの男にこれ以上惹かれずにいられるのだろう。未熟だがまっすぐな年下彼氏との婚約に満足していたはずの真奈が偶然再会したのは、社会不適合だが危険なほど官能的な元カレだった。揺れる心と躯。楽園の島タヒチで真奈が選んだ愛とは? (「BOOK」データベースより)

    そうそう!これこれ!こういう村山由佳さんが読みたかったの!っていう作風で小躍りしそうに嬉しかったです。「翼」とか「星々の~」とか、こういうのが好き。久しぶりに1日で一気読みしました。面白かった!!!

  • 真奈は、銀座の老舗真珠店でチーフマネージャとして働く32歳。6歳年下の彼とは結婚も間近だ。
    それなのに。
    まさか、地球の裏側で10年前に好きなまま別れた、かつて愛した人に再会するなんて。

    本書を読み終えたらどうか、カバーを外してみてほしい。
    読み進めていく中でタヒチの美しさに心を溶かされていたのに、ふとカバーを外したら、こんなにくい演出まで。心はすっかり楽園タヒチに飛んでいってしまったかのようでした。

    さらに、作中に出てくるSadeの「No Ordlinary Love」は海の中で人魚が唄うPVで、あわせて聴くのもいい。

    登場人物では、ジョジョが特に好き。辛辣だけど、まっすぐで素敵な人。でも、その他の登場人物もみな魅力的で、頭の中で動き回っています。

    大人になればなるほど、こんな身を焦がすような、一生を賭けるような大恋愛をすることを避けてしまうからこそ、物語の中で追随できたらもう十分。
    恋愛小説といえば、村山さん。
    頭の中に次々に浮かぶ映像があまりにも美しくて、心が解き放たれたような清々しい読了感でした。

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著者プロフィール

村山由佳
1964年、東京都生まれ。立教大学卒。93年『天使の卵――エンジェルス・エッグ』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2003年『星々の舟』で直木賞を受賞。09年『ダブル・ファンタジー』で中央公論文芸賞、島清恋愛文学賞、柴田錬三郎賞をトリプル受賞。『風よ あらしよ』で吉川英治文学賞受賞。著書多数。近著に『雪のなまえ』『星屑』がある。Twitter公式アカウント @yukamurayama710

「2022年 『ロマンチック・ポルノグラフィー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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