若冲

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163902494

感想・レビュー・書評

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  • 「美しいがゆえに醜く、醜いがゆえに美しい」若冲の絵は人の心に似ていると君圭は語る。なるほど、人の心ってのはどこか薄汚れている部分が大なり小なりあるもんだよな。そんな絵を観た時に浮かび上がる感情は、それぞれの人が歩んで来た道によって大きく変化するのかも。日本画を身近に感じた事はなかったが、めちゃくちゃ興味が湧いてきた。

  • 画集や解説書などからでは見えない、伊藤若冲というひとりの人間の息遣いを感じることができます。

    絵師であるのは言わずと知れた事実ですが、その絵師としての伊藤若冲が、ひとりの人として苦しみ、悩み、喜び、葛藤しながら、また絵に立ち向かう。

    そんな事実の隙間を豊かに繋ぎ合わせる「感情」が描かれており、伊藤若冲という人物を身近に感じることができる小説です。

    小説の中で作品が取り上げられるたびに、『もっと知りたい 伊藤若冲』(佐藤康宏、東京美術)を開いて作品を鑑賞しながら読み進めました。

  • 目次
    ・鳴鶴
    ・芭蕉の夢
    ・栗ふたつ
    ・つくも神
    ・雨月
    ・まだら蓮
    ・鳥獣楽土
    ・日隠れ

    長編小説なのですが、最初から長編を書こうと思って書いたのか、結果的に連作短編になったのかよくわかりませんでしたので、一応各短編のタイトルを書いておきます。(自分の記録用)

    題材は面白いと思うのですが、小説としての出来は…うーん…。

    京都の青物問屋の旦那を退いて、絵の道一本に生きることにした若冲。
    40歳から物語は始まる。
    84歳で亡くなるまで。

    絵を描くことしかできない若冲を支えた、異母妹のお志乃。
    若冲と結婚したばかりに、嫁ぎ先でこき使われ、孤独のうちに自殺した姉のために若冲を恨み続ける弁蔵。(市川君圭)
    若冲の人生の節目に関わってくる同時代の絵師たち―池大雅、円山応挙、与謝蕪村、谷文晁など。

    これでどうして面白くならないのかというと、人物がまず薄っぺらい。
    40歳からの40年、人としての成長というか、深みが感じられない。
    妻の死に責任を感じる若冲、それを許せない弁蔵、弁蔵をひそかに思うお志乃。
    40年もこの関係が変わらない。
    それはちょっと気持ち悪い。

    若冲が亡くなった後、最後の最後に弁蔵は若冲の真の思いを知るのだけど、読者よりもお志乃がまずそれを大きな感動をもって受け取るので、読者としては引いてしまう。

    有名絵師たちも、ストーリーを動かすための駒にすぎず、必要な時に登場して、必要がなくなると物語から退場する…わけではないんだけど、ちゃんと伏線にもなっているんだけど、どうもモブ感がぬぐえない。
    何が悪いんだろう?

    時代小説らしい重厚な言い回しが、時に足を引っ張る。
    言葉の意味、間違えてます。
    編集者がもう少し何とかできなかったのだろうか?
    多分小説家としての力が、まだ題材に見合っていないのだと思うのだけど。

    読後いろいろと調べてみたところによると、概ね史実に沿っているらしい。
    歴史を書きたかったのか、若冲という人物を書きたかったのか。
    それを整理して、もう一度何年かのちに書いてほしいと思う題材ではあった。

  • 自分が思い描いていた若沖像とは、
    かなりイメージが違いましたが、
    思いもしなかったストーリー設定。
    たしか妻帯せず、生涯独り身だったような。

    いまとなっては史実がどうなのかは知るよしもありませんが、
    もとある設定のまわりに再構築して、
    話を盛り上げながら、ひとりの絵師の生きざまを描くのはすごいと思います。

    時代小説の醍醐味ですね。

    絵に対面する思いなどは、
    自身も絵を描くので、共感できるところもあります。それに、若沖と同時代の絵師の存在がわかるのは、小説ならではですね。

    何より、読み終わったあと
    創作意欲がふつふつと沸き起こりました。

    人の思いが交錯する力強い一冊です。

  • 2017.5.21
    作者は若い。若いのにどうしてこの時代を見てきたかのように書けるのだろう
    亡き妻への罪滅ぼしの絵
    怨みを受けることの恐ろしさ
    マス目のあの絵は極楽だった
    なるほど、そうなのか
    人が生きていくことってなんだかもの悲しい。
    漢字や古い役職、地名、京言葉に馴染めず、読み飛ばした部分が多かった。
    もっと平易な言い回しが好みだなぁ。
    若冲の描く覚悟や人となりやいろいろわかり、1日読書に没頭してしまった

  • 面白かったです。若冲の絵が好きで、その作者の生き方が良くわかりよかったです。

  • いままで若冲の描いた絵については見て感じていろいろ考えたことはあったけれど、本人がどういう背景で描いたかということは考察したことがなく、そういう点ではフィクションとはいえ非常に興味深く読むことができた。
    見たことのある絵でも、今後感想が少し変わりそうです。

  • 話として面白かった、が、二人で競い合う?というあたりが強く書き込まれている割に、いまいち納得できなかった。

  • 17/3/10

  • 若冲と君圭の作品を通じて戦う姿は力強く見えたし、また作品を通じて言葉とは違った感情を通い合わせる姿は芸術の可能性みたいなものを感じた。ぼくは若冲詳しくないけども、不器用でも自分にひたすら向き合うこの作品の若冲像にはすごく惹かれた。

  • 江戸時代に凄い画家がいた。作風の凄まじさがこの物語を書かせたのか、そして読み手は虚構に納得する。

  • 以前MIHO MUSEUMで偶然見つけた若冲の絵 華やかだけど不気味なものを内蔵していて忘れられない 

    伊藤若冲 1716~1800
    池大雅 1723~1776
    丸山応挙1733~1795
    与謝蕪村1716~1784
    市川君圭1736~1803
    表紙裏のこのデータをみるだけで当時の京の華やぎと切磋琢磨が感じられて 分厚い本ながら一気読みしてしまった

    本家との葛藤 新婚二年で自死した妻 贋作者君圭の存在の大きさ
    若冲の絵が実はこのような苦しみから生まれたものであったのかと腑に落ちた

    京の大火やお公家さん方の 歴史に記された資料は数々あるだろうけれど 一画家のここまでのすさまじい葛藤を長編の本にまとめられた作者さんの熱意に脱帽する

    池大雅の鷹揚さ 与謝蕪村のがんばり 美術の授業では知り得なかったことも学べた
    あらためて滋賀石山の山奥にあったMIHO美術館に行ってみたくなった 検索してみたら 彼が苦しい一生を送った京の街の近くであった

  • スマホ傍に、作品の画像検索しながら
    作品と合わせて読み進めました。
    歴史小説は苦手であまり手をつけませんが
    これは読みやすかったです。

  • 若冲は、お宝拝見などで、昔から耳にしており、今話題になっている若冲とは、、、いかなる人物か?

    美術館へ足を運ぼうと、思いながらも、行かずにいたが、先日京都で、人と待ちあうことになり、そこで目にしたものは、屏風絵が、置いてあった。
    え~っとこれが若冲の描いた作品(レプリカだが)と、しげしげと、見とれえしまった。
    人を引き付ける作品である。
    なんと細やかな動物、植物、昆虫類などが、今にも動き出しそうであった。
    そして今年生誕300年ということも、、、

    そして、この本を手にしてから、若冲という人物を読んでみて、フィクションながら、と面白く読んでしまった。

    池大雅、丸山応挙、与謝蕪村、谷文晁、池川君圭、、

    どうして、若冲(源左衛門)の妻が、自死したのか?は書かれていないので、謎であるが、そこまで追い詰められていた状態が、分からなかった周りの非があるだろう。

    お金の苦労もせずに、錦高倉青物市場の老舗の跡取りなのに隠居し、高い顔料も、何不自由なく使用して描いている作品も、自分が書きたいものが、何であるか?
    そして、自死した妻の弟の市川君圭も、憎悪と、尊敬と、執念で、競い合う。

    子供の大学が、京都なので、相国寺も一緒に行ったが、こんなに、重要なお寺とは知らなかった。

    この本も、描き方が、作者の意図を察するかの如く書かれており、一気に読んでしまった。

  • 京都錦の青物問屋の長男として生まれたが家業を放棄し、隠居し、画にあけくれる。妻帯の有無が不明。晩年、妹ないし弟の妻と共住み。樹花鳥獣図屏風と贋作を疑われる鳥獣花木図屏風の関係。史実をふまえつつ著者オリジナルの想像で膨らませた本書には、若冲好きには「そう来たか!」的な楽しさはある。とはいえ、この本が若冲の絵を知らない読者にとって面白いかは甚だ疑問。また、小説として、若冲の心情等を論理的に文章にし過ぎ、またその心情が必ずしも腑に落ちるものではない。ということで、小説としての出来は世評ほどのものではないと思う。

  • 話題の「若冲」ということで手に取った。若冲とその作品に対しての解釈に納得できなかったので、話に入り込むことが出来なかった。

  • 若冲作品を観賞する視点が増えました。

  • フィクションとノンフィクションが織り交ざっているのがわかるので、のめりこむことができず。
    絵はすごい。

  • 一言で言うと、つまらない。
    若冲が流行っているので目立ったが、内容が面白くない。
    静かな本は好きだが、この本は盛り上がりがない。
    メリハリがなく、だらだらと陰鬱な雰囲気が続く。

    小川洋子と系統は違うが、村上春樹、小川洋子に続いて、もう二度と手に取らないだろう作家リストに名を連ねる一歩手前。

    若冲を恨んで贋作を書いたという設定の市川君圭の立場に作者は近いのではないかと思った。
    若冲の作品が好きではなく、唯一一作好みにあったものがあるという感じでは。
    そう思ってしまうほど、若冲への尊敬の念が感じられない。それと、若冲が絵を好きでないところが、不快かな。

    芸術系の映画やお話は、狂気を伴う事が多いが、その定説には飽きたし、あまり好きではない。暗いことの多い世の中、せめて天才は好きなことをしていると信じたい。

  • 2016/9/3 図書館
    2016/9/5 読了

    想像以上におもしろかった。一気に読み終えちゃったし。
    まあ、ちょっと陰鬱とした話なもんだから、フィクションであって欲しい(もちろんフィクションだけど。)と思いつつどの程度リアルなのか気になる。

    登場する作品を多分大体知ってるから、より楽しめたはず。また図録も見直さなくっちゃ。
    私が作品を見てて勝手に想像していたイメージとは全然違うもんだから、何か納得いかなくて☆-1。
    だけど、谷文晁が美味しいし、円谷応挙が素敵だったのはイメージ違うけど気に入ったし、蕪村とか周辺人物が魅力的だった!!

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著者プロフィール

1977年京都府生まれ。2011年デビュー作『孤鷹の天』で中山義秀文学賞、’13年『満つる月の如し 仏師・定朝』で本屋が選ぶ時代小説大賞、新田次郎文学賞、’16年『若冲』で親鸞賞、歴史時代作家クラブ賞作品賞、’20年『駆け入りの寺』で舟橋聖一文学賞、’21年『星落ちて、なお』で直木賞を受賞。近著に『漆花ひとつ』『恋ふらむ鳥は』『吼えろ道真 大宰府の詩』がある。

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