朝が来る

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163902739

感想・レビュー・書評

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  • 一気に読み終えた。これは、心にずしんとくる。不妊治療のこと、ママ友のこと、思春期の性、…どれも実際にあったことのように迫ってきた。最後にひかりを救ってくれて良かった。

  • 不妊治療も実らず、養子縁組で子どもを授かった夫婦と、望まれない出産をし、子どもを手離す中学生を描いた物語。前半の栗原夫婦の部分は良かったけど、後半のひかりの部分は、展開が少し雑で無理があるように感じた。その分あまり感情移入できなく、また期待度が高かったせいか残念だった。ただ、血の繋がりがあっても、虐待で実の子を死なせたりというニュースが多い昨今、家族や血縁の意味を考えさせられるテーマだなと思いました。

  • 913-T
    人気作家コーナー

  • 私がこの本を読む直前に、瀬尾まいこさんの「そして、バトンは渡された」を読んでおりました。
    同じような境遇を描かれているにも関わらず、視点、手法が「これほど違うものなのか!!」と、圧倒されてしまいました。
    優しく、ポジティブに、励ますように描く瀬尾さんと、
    鋭く、深く、切なく切り裂く辻村さん、 両名とも小生が尊敬する現代日本文学を代表者ですが、その切り口は全く違っておりました。
    文学の奥深さ、読み込むほどに引き込まれる感覚は「読んだ人にしか分からない」感覚だと思います。

    個人的には「かがみの孤城」とならぶ、辻村さんのお気に入り作品です。

  • 評価は5


    (BOOKデータベース)
    「子どもを、返してほしいんです」親子三人で穏やかに暮らす栗原家に、ある朝かかってきた一本の電話。電話口の女が口にした「片倉ひかり」は、だが、確かに息子の産みの母の名だった…。子を産めなかった者、子を手放さなければならなかった者、両者の葛藤と人生を丹念に描いた、感動長篇。

    ここまで報われないってどうなのよ!と思わずにはいられんかった。親からの呪縛や反抗心にいつまで振り回されてるんだ!

  • この本を読みながら考えさせられることが本当に多かった。ひかりがかわいそうだなぁーと思うけど決して他人事とは思えないくらいリアルだったし、自分もこうなる可能性があったと思うと考えさせられる。ひかりが悪い気がしちゃうけど、家族や巧など周りにも影響を受けてることも多い。だからひかりに味方してしまう自分もいる。誰が悪いの?何が悪かったの?と考えるときりがない。

    私は二児の父でもあるので親として子どもがひかりのようになったらどのようにするかなと考えたりもした。やはり子どもの意思を尊重する大切さにも気付かされた気がする。親が考える『普通に育ってほしい』は単なるエゴな気もするし、でも自分が失敗したようになって欲しくもない。難しいですね。

  • 大人になった今だから分かる感覚とでも言えばいいのか。
    非常にモヤモヤとした気持ちが残った小説でした。
    でも、それは嫌な感じではないのだけれど、スッキリ爽快という感じでもない。

    おそらくそれは、私自身が「普通」の人生を送り、「普通」に生きているからなのだろうなと思います。

    小説の中で表現されていた中学生だった頃の感覚。
    確かにその通りで、その当時の自分も同じような感覚を持っていたような気がします。
    大人となった今の自分からすると、ちょっと危なっかしい子供には「この小説を読んでみろ。いい事ばかり想像するけど、現実はそうじゃないんだよ」と言いたい所ですが、子供が読んでもあまり心には響かないような気もします。

    そういう意味でも、沢山の人の人生を見てきたり、自分が経験してきた蓄えがあるからこそ、グッと心をつかまれたのだろうと思います。

    ぜひ沢山の人に読んでもらいたいなと思った小説でした!!
    辻村さんマジでスゴイ。

  • 特別養子縁組をした栗原さんちと朝斗くん、その実母のひかりのお話。

    タイトルの「朝が来る」が二人の母にとって子どもである朝斗くんの存在であり、お互いそれぞれの存在であったという事に感動する。最後の最後でひかりを救ったのは佐都子だし、その佐都子に「朝が来た」と思わせてくれた朝斗を生んでくれたのはひかりだった。
    出産、育児、親子関係、、、とか考えさせられることは色々あるけども、二人の女性が、なんとか幸せになれそうな最後でホッとした。

    栗原夫婦のような関係は、とても理想的。対して、ひかりは親と相性が悪かったんだなという印象。でも、そんなに悪い家庭ではないと思うよ。浅はか、という言葉がしっくりくるひかり。嫌っている母親と似てるよ、と思った。

  • 辻村さんの親子の話だから。
    たぶん抉ってくるだろうなぁとは思いつつ。
    今回は親子のことよりひかりの人生について、読み終わってからじわじわとくるものがある。

    主人公の夫婦は理想的な2人だった。
    まずあの大空くんママに対して「朝斗はやっていない」と言える勇気があっただけでも完璧だった。
    自分の子を信じるのかどうかというよりも、親同士で連携して「子供は嘘をつくかもしれないものだ」って共有できてれば、話がしやすいよね。誰だって自分の子供を信じたいのは同じだから。

    実際、この夫婦は強かった。不妊治療〜養子縁組、育児までもこんなふうにできる夫婦がいたなら全然何も怖くない。

    不妊治療も、うまく行かないなく夫婦関係までぎくしゃくする場合もあると聞く。こんなに理想的な夫婦の間でさえ「俺休めないの知ってるでしょ?」「(私休んでるのはどういうこと?2人の子供なのに!)」みたいな会話があったし
    (出産育児に関してはえてして女性側に負担がかかってると私は思ってる)

    脅しに来た時、夫婦は産みの母であるひかりを強く信じていて、へぇ、ひかりはどういう子だったのかと思っていたが‥‥

    これが読後モヤモヤしているポイントなんだよなぁ。子供は持てない人生になると分かった時や、妊娠した時って、すごく大きな人生の岐路を曲がったところだと思うのに、実際は劇的なことでも何でもなく、現実が普通にやってくる感じなんだ。

    特にひかりが妊娠した時の、現実感のなさ。妊娠したことがどれほど自分の人生を変えるのかということがわかっていなくて。
    もちろんまだ13歳だし、なんとなく〜惰性で妊娠22週まで行ってしまうのも、まぁわからないでもなくて‥大人でさえ妊娠を認めたくなくて放置する人がたくさんいるんだからね。

    でもじゃぁひかりは子供を産みたかったのか?本当はあげたくなかったのか?片時も、一生忘れないと誓うほどに?…うーん。疑問符。夫婦が強く信頼するほど、ひかりに何か強いものがあったかかと言われると…?

    ひかり編はずっと彼女の目線で語られてるから最初は13歳で最後は20歳になってるはずだが、思考が何も変わってない気がするんだよね。
    中学生の頃と同じように、大きくなっても、小さな優越感を得るためだけに、言い寄ってくる男に体を許して。

    いつも思うのは無知と純粋無垢は同じことで、知ってしまったら前には戻れない。失われたものは尊い。まぁそういうこと。知ってしまった大人はみんなそう感じると思う。
    男の子も女の子も、みんなに、ゆっくり大人になってって言いたい。嫌でも大人になるんだから。
    でも時が来たら、実際に乗り越えていくのは、他の誰でもない、自分なんだってこと。

    -ダサかった姉がキレイになっている。
    待てば良かったのか、と心の内側から声が浮かび上がってくる。
    …わからないよ…正解なんてないよね。
    だけど辻村さんがよく作中で言ってることの一つに「永遠に辛いのが続くじゃない」っていうのがあって。この年頃の子たちの話ね。焦らなくていい。みんな同じで、長いトンネルを「抜ける」ことになっている、慌てないでいい。いつのまにかこっち側に来てしまってるけど、あっち側にいるひかりにそうやって教えてあげたかった。

    あなたは誰ですか?
    言ってしまったら、私もきっと必死で彼女を探すだろう。

    ひかりが悲しすぎる。
    強制的に性の犠牲になった訳じゃない…と思ったけど逆かな?本当は、男たちに利用されてしまってたのに、本人が「自分で選んできたんだ」と思っているところが哀しいのかな…

    事後に話した時の巧の薄っぺらさは際立っていて、まあ彼もどうしていいか分からなかったのだ(と思いたい)が…彼もまともな大人になればこの時のことを思い出して辛いんじゃないかなぁ。

    なんていうか、もにゃるわぁ。

  • 今日読了。不妊治療や我が子に対する女性自身の想いや気持ちが全く分からなかった男子大学生が読んだ感想としまして、新たな知見や思考回路の風を吹き込んで来れました。

    それまで、一握りも不妊治療に対して興味が無く、妊活ドラマ等も見ず嫌いをしていましたが、文章あら妊活のイメージを頭の中に構築してくれました。

    自分とその両親だけの家族だったのが、自分自身が伴侶を見つけ、家族となり、さらに自分とその伴侶から生み出される生命の偉大さを改めて実感しました。

    特に養子縁組というものに興味を持ち始めたサトコ夫妻が、養子を持つことに対して様々な意見および情報を収集している間、血が繋がってない子供を持つことの偏見に関する描写がありました。それに対して、もともと妻と夫の間にも血縁関係が無いのだからという意見が出た時、確かにその通りだと思い、感心した瞬間を覚えています。

    不妊治療のきっかけとして、男性の無精子症が6組に1組の割合で挙げられるというのを後日知り、これだけ身近な問題なのに今まで知らなかった自分が恥ずかしいです。


    さらに話変わりまして、第1.2章の栗原?夫妻の保育園でのいざこざおよび妊活のストーリー自体自分にとっては新鮮な話だったのですが、3章から始まる肉親の片倉ひかりの生い立ちの話からも、思春期の姉妹を持つ家族の大変さや、女性が多い世帯の大変さをは初めて想像できました。思春期の女の子の何気ない日常なのですが、女性の心の繊細さとその感性、思考力に心を打たれました。

    ひかりは、両親や、叔父に対する小さな反抗が積りに積もって、考え方が徐々に悲観的になってしまうように感じられました。その後広島での生活で年も考え方も大人な人々と寝食を共にし、家族の元に戻った後は、巧や友達共々子供のように感じられ、嫌気が差していきます。最後の最後には犯罪を犯してしまいますが、女性の考え方の変容が有り有りと書き綴られており、女心が全く分からない自分からしたら、全てが新鮮なストーリーでした。

    是非皆さんもご一読なさってはいかがでしょうか。

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著者プロフィール

1980年山梨県生まれ。2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。11年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、12年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、18年『かがみの孤城』で第15回本屋大賞を受賞。『ふちなしのかがみ』『きのうの影ふみ』『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』『本日は大安なり』『オーダーメイド殺人クラブ』『噛みあわない会話と、ある過去について』『傲慢と善良』『琥珀の夏』『闇祓』『レジェンドアニメ!』など著書多数。

「2023年 『この夏の星を見る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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