出会いなおし

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163906201

感想・レビュー・書評

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  • 表題作を含む、6つの短編集。
    短編それぞれのカラーがだいぶ違うため、1本ごとに好みが分かれると思います。
    まあまあなお話、うーんなお話とあったので、間をとって☆3つにしました。

    「出会いなおし」は、あるイラストレーターと編集者のお話です。
    同じ人であっても、環境が変わり年月を経ることで、中身も外見も今までと同じではいられないもの。
    だからこそ、合わないタイミングがあるとしても、それもまた運命なのかなと思いました。

    いちばん理解が難しかった話は「テールライト」、単発ドラマみたいに、画が浮かんできたのは「むすびめ」「出会いなおし」「カブとセロリの塩昆布サラダ」、世にも奇妙な物語のような雰囲気をかんじたのは「ママ」「青空」でした。

    たまにはバラエティに富んだ短編も、自分の好みがはっきりわかるので、おもしろいものだなと思いました。
    さて、あなたのお好みのお話はどのお話ですか?

  • 帯の一文。「年を重ねるということは、おなじ相手に、何回も、出会いなおすということだ」。
    本当に縁がある人とは、一度関係が途切れたように思っても、また出会って再びの交流が始まることがある。ということは、たったの30数年しか生きていない私でも知っている。

    5編からなる短編集で、表題作はまさしく2人の男女が“出会いなおし”を何度も果たす物語。
    その2人は恋人にも友人にもなったことはない。女性イラストレーターと男性編集者をいう仕事を介した関係性なのだけど、ものすごく強いというわけではなくとも静かに長く続く結びつきには、一度でも濃くあった関係性よりも縁の確かさようなものを感じた。
    消え入るようにふっと途切れたものだけど、心の中にはずっと残り続けている。恋焦がれるような強さはないけれど、ふとした瞬間にまた会ってみたいと感じる。どんな人間にもそう思える相手が存在するような気がする。

    その他の4編にも、「出会い」「別れ」「再会」の匂いを根底に感じた。
    それは人に限らず、自分自身の中にあった想いであったり、過去の記憶であったりもする。
    すっきりしないまましこりのように自分の中に在り続けた過去の思い出と、時を経て再び触れる機会が訪れ、また別の視点からその思い出を見つめることが出来た時、そのしこりが優しく解れていく。そういう過去の出来事との「出会いなおし」も、きっと長い人生の中で何度か訪れる。

    表題作の他は、「カブとセロリの塩昆布サラダ」と「むすびめ」が特に好きだった。
    実際自分の身に起こってもおかしくない現実感と、わだかまりが解れる瞬間のカタルシスが心地良い。

    一度離れた人と再び「出会いなおし」を果たした時、その相手について、とても変わった部分と全然変わっていない部分の両方を感じることがある。
    それはきっと自分も同じで、様々な経験を積み重ねることで変化していく部分と、生まれ持ったまま変化しない部分がある。そしてそのことを恐らく、私と出会いなおした相手も感じているのではないかと思う。
    そしてそれは自分自身の中でも起こりうることで、まっすぐに生きていれば、時とともに更新されていく自分と「出会いなおし」を果たす瞬間があるのだと、読み終えた本を閉じながら思った。

  • 短編集の中「むすびめ」が印象的だった。
    初めて参加した小学校のクラス会。
    今まで参加できなかった原因となっていた悲しい思い出の真実を知ることになり、主人公の心は晴れる。
    悩んでいたのは自分だけではなかった。
    心開くことによって自分も友も心が晴れた。
    安っぽい言い方になるけれど、友達って良いなと思える瞬間は必ずあると信じる。

    • まことさん
      moboyokohamaかわぞえさん。
      初めまして。コメントありがとうございます!
      図書館でだいぶ以前に借りた本なので、記憶があやふやで...
      moboyokohamaかわぞえさん。
      初めまして。コメントありがとうございます!
      図書館でだいぶ以前に借りた本なので、記憶があやふやですが、確か、キーワードは「汗」でしたよね♪
      2019/09/20
    • moboyokohamaさん
      まことさん
      そうです、汗です。
      30人31脚に失敗して倒れた彼女を責めて手を出さなかったのではなく、汗だらけになっている自分の手を差し出すこ...
      まことさん
      そうです、汗です。
      30人31脚に失敗して倒れた彼女を責めて手を出さなかったのではなく、汗だらけになっている自分の手を差し出すことができなかったって。
      2019/09/22
    • まことさん
      記憶が合っていてよかったです♪
      記憶が合っていてよかったです♪
      2019/09/23
  • 過去を振り返ってみるまでもなく、
    思い出すだけでウワ~~~ッと声をあげたくなるような失敗や恥ずかしい出来事は山ほどある。
    あの時あんなこと言わなければよかった・・・なんて後悔ならもうわんさかと星の数以上にあるんじゃなかろうか。
    タイムマシンがあったらなぁ、、、と思わなくはないけれど
    そんないつやってくるかわからない未来を待たなくても過去は変えられるのだ。
    この本の主人公たちは
    気まずく疎遠になってしまった人と、
    もう二度と会えないはずの人と、
    ムカついて、ぜってーゆるさねー!と思っていた人と、
    それぞれもう一度出会いなおし
    少しだけ今を変えていきます。
    でも主人公たちが本当に出会いなおしたのは
    あの頃の自分より成長した自分の姿なのかもしれない。
    少しだけ過去と向かい合う勇気をもらえた気がする小説でした。

  • 世の中にこんな素敵な言葉があったのか!と素直に思えるほど表題作「出会いなおし」はそのタイトルとともに胸にストンと落ちる物語だった。あぁ、確かに人生はいろいろな出会いなおしで紡がれている。そう思うと何だか自分がすごく素敵な物語の1ページを生きているかのようで読後自然と笑みが溢れた。それは収録されている短編6作すべてに言えることで、どれも日常の痛い記憶と苦味と後悔を織り込みながらも、でも幸せもきちんとそこにあるんだよと語りかけてくれているから、とても温かな感情を胸に灯すことが出来る。それは何にも変えがたい幸福な読書時間だとわたしは思う。

  • 表題作を含む6つの短編集です。
    独特の世界観で描かれていました。
    6作品、それぞれが全く異なった世界観で不思議な印象でした。
    むすびめというタイトルの話は、最後、温かい気持ちになり☆4つつけたいです。

  • テールライトが他の話と全く違った切り口で印象的でした。もしかしたら私が今生きてることも、前世?での誰かの切なる願いのもとで生かされてるのかもしれないと思ったり。「自分」であることを噛み締めて生きていく力強さをもらったような気がします。

  • 人生って、年を重ねるって、悪くないよなぁと思った。
    年を重ねるにつれ、人も自分も多面的になる。
    そういう新たな出会いを、出会いなおし、とする言葉の感性がすごく好きだなあ。

    短編集だけど、全部の話に共感できる瞬間っていうのは多分なくて、でも共通する空気感があるよね。

  • 短編集。出会いなおし、むすびめ、青空の話が良かった。
    年を重ねるにつれ、自分も相手も環境が変わる。
    おなじ相手でも違った形で出会いなおす。なんとも素敵ですね。

  • 短編集。歳を重ねて、出会い直す。同窓会の話が痛くて羨ましい。うまくいきすぎで甘すぎる。自分の中にもある、思い出すと叫びたくなる、恥ずかしくていたたまれない過去の出来事がこんなふうに浄化されたらよいのに。

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著者プロフィール

森 絵都(もり・えと):1968年生まれ。90年『リズム』で講談社児童文学新人賞を受賞し、デビュー。95年『宇宙のみなしご』で野間児童文芸新人賞及び産経児童出版文化賞ニッポン放送賞、98年『つきのふね』で野間児童文芸賞、99年『カラフル』で産経児童出版文化賞、2003年『DIVE!!』で小学館児童出版文化賞、06年『風に舞いあがるビニールシート』で直木賞、17年『みかづき』で中央公論文芸賞等受賞。『この女』『クラスメイツ』『出会いなおし』『カザアナ』『あしたのことば』『生まれかわりのポオ』他著作多数。

「2023年 『できない相談』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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