作品紹介・あらすじ
勉強とは作ることだ!売り上げ5万部を突破した、気鋭の哲学者・千葉雅也さんによるベストセラー『勉強の哲学』の続編。『勉強の哲学』はどのように構想され、書かれたのか。発想の源から、手書きアイディアノートのつけ方、evernoteなど様々な書くツールの使い方まで、構築的に”メイキング・オブ・勉強の哲学”を語るとともに、母校・東大駒場で学生たちを前に語った講義内容を収録。さらに、書きながら展開させるための哲学「欠如のページをめくること」を新たに語り下ろし(電子書籍版『メイキング・オブ・勉強の哲学』には未収録)。書いて考える、考えを作る、その新しい方法論を語った『勉強の哲学』の発展的副読本。すべての「作る」人のために。
感想・レビュー・書評
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勉強の哲学がいかに作られたのかを著者のノートやアウトライナーを参考にしながら説明していく。本一冊が出来るのはここまでの推敲がされるものなのかと初めて知った。新書が語りおろしが多いということも知った。前に読んだ勉強の哲学自体の内容はほとんど覚えていないが哲学者である著者の話はもちろん難しいのだがその中でも使われる用語を工夫して一般にも分かりやすくしてくれていて理解のしやすさはある。(読みながら一瞬分かりそうになるところが多いのは僕が著者と同い年であり勝手にシンパシーを感じてることもある気がする)それこそここに出てくる本の入門書などを読んでみようかという気にさせてくれる。勉強、特にすぐには役に立たない実用的な学問の重要性について今後書いていきたいという部分は注目したい。
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アイロニーによる愚直な探求をユーモアによって相対化し、ユーモアの暴走、つまり享楽を、ふたたびアイロニーによってこの世に繫ぎ止める。そのようにして、あるいはそのサイクルに失調をきたして生きているのが人間なのだということをより深く知れただけでも、読んでよかった。
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思索をする際のツールやステップの解説。
紙にざっくりと手書きする。縦横無尽に自由なレイアウトで。アウトライナー、Notionを使ったりして、箇条書きをする。箇条書きをあとで俯瞰して並べ替えたり、付け加えたり、階層化したりする。
人と話す、twitterにつぶやくなど、外部のリソースとも交流しながら。
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副読本。別に絶対に読まなきゃいけないというタイプの本では無い。元の本の展開に惹かれた方なら、それなりに楽しめると思う。
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タイトル通り、メイキング編です。
書いてあることは平易です。
講演での質疑、対談、語りおろし2本、資料集の構成です。
書くことの考察、もがきは著者も一員である『ライティングの哲学』のほうがわたしには刺激的でした。
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Twitterをアイデアの宝庫に。ノート術。手書きノートは論理を四方八方に展開できる(マインドマップ等)。デジタルノートはEvernoteからWorkFlowyへ。アウトライナーで論理的ステップを書き出して並べ替える(総合的な使い方)。行き詰まっている問題に自己ツッコミをかけ、難点をあぶり出す(分析的な使い方)。
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手書きのノートとアウトライナーを交互に駆使して論を建てていく様を解説されていて、大変参考になった。論文やレポートの書き方に悩んでいる人は参考になるはず。
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《占いとは、現実から切断された余白、欠如を提示するものです。占いにおいては、実はそのメッセージがどう解釈されるかは本質的なことではありません。占いは、いまの現実のあっぷあっぷの状況において、さらなる欲望の余地を切り拓くという、ただその一点においてのみ意味があるのです。つまり、人生に空白の次のページを付け加えることこそが占いの本質なのであって、運命は、結局はどうにでも解釈可能なのです。
だから良い占い師とは、先のことを強くは規定しない占い師でしょうね。人を脅すような占いはもってのほかです。ともかく重要なのは、暫定的に、人生に対する余白を、新規ページを増やすことであり、それがカードを一枚引くということに他ならない。占いのカードを引く瞬間、それは、芸術作品がひとつの有限なものとして成立する瞬間に相当するのです。》(p.154)
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『メイキング・オブ・勉強の哲学』千葉雅也 文藝春愁・2018.1
前書『勉強の哲学』がいかにつくられたかをまとめた書。また質疑応答の内容も文章化している。
第1章 なぜ勉強を語るのか 東大駒場講演
2017年5月
博論が学術書としてだけでなく一般書的にも読まれるという出版状況は『動きすぎてはいけない』より少し前の世代から始まった。
その代表は1998年出版の東浩紀『存在論的、郵便的』
千葉が哲学の道を志す重要なきっかけ。千葉世代の大学院生にとって東は憧れのモデルだった。
千葉の2冊目の書籍『別の仕方で』を出版。過去のtweetを配列した本。書き方を実験することに興味がある。
今回の『勉強の哲学』はそんな欲望を形にしたもの。インテリはたいてい自己啓発本をバカにするもの。
でもなぜそういうものが人を惹きつけるか精神分析的に考えても深い問題です。
千葉は自己啓発とはなにかという距離をとった問題意識をもっている。
一般に世の中には勉強フォビア(恐怖症)がある。勉強とはシステムや空気を分析して、それに捕らえられない自分の生き方を開くためにやるべき。
ドゥルーズ&ガタリの言葉なら逃走線を引くこと
千葉を変身させた大学時代の授業。勉強を深めると究極の根拠を求めてアイロニー追求型に陥る。アイロニーからユーモアへ折り返すターンが大切。
勉強のテクニック1 自分なりのメタゲームを作る。教養的に物事に関わるとは社会学・物理学・哲学も勉強する
ジャンル横断的につまみ食いをする。複数性を貫く総合的な視点を持つことが必要。千葉はそれをメタゲームと名付ける。
千葉は「無意味」がどのように扱われるかに注目するメタゲームをやっている。
誰かが作ったゲームの上で競争するだけの人生は疲れる。自分なりのメタゲームを作れば誰もその分野では勝てなくなる。
勉強のテクニック2 語学をやろう
語学において重要なのは言葉の歴史です。
言葉=概念には現代語の用法からは見えないようなねじれた階層がある。
国分功一郎『中動態の世界』という本では、言語を支配する能動態と受動態、そこからアプローチできない中動態の在り方について考えている本。
いまは失われた中動態の歴史をたどることで古代ギリシャ人の考えを復元する。
現代の我々は現代語のシステムの範囲内でしか思考できない。この本は語学を学ぶことが思考の拡張であることを示す。
https://www.amazon.co.jp/中動態の世界-意志と責任の考古学-シリーズ-ケアをひらく-國分功一郎/dp/4260031570/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&crid=1JYE6JQ54VIWT&keywords=%E4%B8%AD%E5%8B%95%E4%BD%93%E3%81%AE%E4%B8%96%E7%95%8C&qid=1578562164&sprefix=%E3%81%A1%E3%82%85%E3%81%86%E3%81%A9%E3%81%86%E3%81%9F%E3%81%84%2Caps%2C266&sr=8-1
Q:メタゲームを作るうえで、とりあえずの仮固定をどこに定めればいいか
A:とりあえず既存の分野からそれを立ち上げる。ベストな選択はない。保守的なアドバイスをするなら古典的な研究をすると応用が効く。
Q:ラカンや精神分析の勉強をどういった書籍から始めるべきか
斎藤環『生き延びるためのラカン』を読めばいいでしょう。
https://www.amazon.co.jp/生き延びるためのラカン-ちくま文庫-斎藤-環/dp/4480429115/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&keywords=%E7%94%9F%E3%81%8D%E5%BB%B6%E3%81%B3%E3%82%8B%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E3%83%A9%E3%82%AB%E3%83%B3&qid=1578564337&sr=8-1
第2章 メイキングオブ勉強の哲学
千葉は3種類のノートを並行的に使っている。手書き・エバーノート・アウトライナー
千葉の哲学との出会いは高校時代。松岡正剛の雑誌『遊』や浅田彰の存在を知った。
新しいアイデアが生まれるためには環境の有限性が必要。『思考の整理学』で寝ることの大切さを説いている。
行き詰まりの解決方法としては友達としゃべること。
著者プロフィール
1978年生まれ。立命館大学大学院先端総合学術研究科准教授。
著書に『意味がない無意味』(河出書房新社、2018)、『思弁的実在論と現代について 千葉雅也対談集』(青土社、2018)他
「2019年 『談 no.115』 で使われていた紹介文から引用しています。」
千葉雅也の作品