ブラック・スクリーム

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (495ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163909219

作品紹介・あらすじ

シリーズの楽しさを みっちり詰めこんだ リンカーン・ライム最新刊! ニューヨークからナポリへ――〝漆黒の絶叫〟にとり憑かれた犯人を追え! ニューヨークの路上で男が拉致されるのを少女が目撃した。やがて被害者の苦痛のうめきをサンプリングした音楽とともに、監禁されて死に瀕している被害者の姿が動画サイトにアップされた。アップロードしたのは「作曲家(コンポーザー)」を自称する人物。捜査を依頼された科学捜査の天才リンカーン・ライムは現場に残された証拠物件から監禁場所を割り出し、被害者を救出したものの、〈コンポーザー〉は国外に逃亡してしまった。 そして事件の場はイタリアへ――リビアからの移民が誘拐されたのだ。〈コンポーザー〉の犯行だった。ナポリに飛んだ名探偵ライムとパートナーのアメリア・サックス、そしてライムの介護士トムは、若き森林警備隊員エルコレとともに事件に挑む。ニューヨークの白人とナポリの難民。被害者をつなぐものは何か? 〈漆黒の絶叫〉に駆りたてられる〈コンポーザー〉の目的は? アメリカ総領事館から持ち込まれた留学生の暴行事件も調査することになったライムは、想像を絶する真相を探り当てることに…… ニューヨークで起こった誘拐事件の犯人を追って、ほぼ全編がイタリアで展開する最新作。名探偵ライムが証拠とロジックで快刀乱麻の名推理を導き出せば、アメリアは凶行を阻止するために車を疾走させ、死地へと飛び込む。シリーズのファンが「こうでなくちゃ!」と快哉をあげる場面が満載、もちろん大規模ドンデン返しも待ち受けています!

感想・レビュー・書評

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  • 元ニューヨーク市警の天才科学捜査官が、警察に協力して連続殺人鬼を追う『リンカーン・ライム』シリーズ第13作。

    今巻も前巻同様、謎解きよりも人間ドラマに比重が置かれている印象。舞台はナポリなのだけれど、エルコレやダンテ、ベアトリーチェといった新しい登場人物たちは魅力的だった。

    ラストでリンカーンが諜報機関入りを検討しているところには危うさも感じる。真実を追い求めるリンカーンの思想は、非合法活動を行う組織に入っても変わらないだろうか。晩年のホームズの転身を思い出しもして、複雑な読後感になってしまった。

  • リンカーン・ライム、イタリアに行く!

    車いすで活動する必要があるので、基本的には自宅から出ない安楽椅子探偵ならぬ車椅子探偵のリンカーン・ライムですが、今回はイタリアに行きます。

    それにしても、リンカーン・ライムシリーズって、なんで猟奇事件ばっかりなんですかね??まぁ、普通の事件ならリンカーン・ライムの力を借りずしてでも、NYPDで解決できるという事なのかもしれませんが。

    リンカーン・ライムシリーズは、いつも物語終盤にどんでん返しがあるんですが、今回も話がひっくり返ります。なるほどねぇ、アメリカならあるかもね・・・

    本当に物語の最後、リンカーン・ライムはある仕事のオファーをもらうんですが、果たしてどうするんでしょうか?

  • リンカーンライムシリーズ13作目。

    あらすじ
     ニューヨークで、男性が拉致されたあと、首を何度も絞められ、それを動画サイトにアップされると言う事件が起こる。拉致現場には楽器の弦で作られた首吊り縄のミニチュアが置いてあった。
     その後犯人はイタリアへ逃亡した証拠があがり、ライムたちもミラノへ向かう。
     犯人未詳は、その後も難民キャンプなどで犯行を重ねる。被害者が苦しむ様子を録画するが殺さない。そして精神に問題を抱え、音にこだわりがあり、自分でデータベースを作る人物だ。

     ライムたちはイタリアの検事ににらまれたり、森林捜査官の若者と出会ったりしながら操作を進める。合間にはアメリカ人の留学生が女性暴行事件で捕まった事件も抱えながら。
     そして拉致犯人、通称コンポーザーはスパイ組織、アメリカの諜報活動の一つだと気づく。

     今回の作品はゆるめ。というか、ラインとサックスとトムの旅行を兼ねてイタリアで活躍してきましたー。という感じ。現地の捜査官たちに疎まれながらも有能さを見せつけるチーム。結局真相?真犯人もアメリカの組織とアメリカ人実業家だつたしな。10年以上続くシリーズならこういう作品があってもまあいいかな。

  • リンカーン・ライム、シリーズ第十三作。今回の相手はコンポーザー(作曲家)を名乗る犯罪者。特別に繊細な聴覚を持つが、統合失調症を病んでいる。脳内で音が異常に増殖する、ブラック・スクリームという症状が現れると、自分を制御できなくなる。チェロ用のガット弦で作った首吊り縄を被害者の首に巻き、時間をかけて首を絞めてゆく仕掛けを用いて、苦しむ様子を撮影した動画をネットに曝す。そして、被害者の呻き声をサンプリングして作曲し、バックに流すというのがその手口。

    一人目の被害者がニュー・ヨークで誘拐される現場が少女によって目撃され、ライムたちが動き出す。現場に残された証拠から、ライムは監禁場所を割り出し、サックスが現場に急行し、すんでのところで被害者は辛くも助け出される。運よく逮捕を免れた犯人は、現場にパスポート用の写真を切り抜いた紙片を残していた。海外逃亡を企てたのだ。舞台は、イタリア、ナポリへと移る。

    このシリーズには珍しく、主要な事件が海外で展開される。紛い物のトリュフの売人を追っていた森林警備隊の巡査エルコレは、逮捕を目前にして自分を呼ぶ声に気づく。誘拐事件の目撃者が警官を呼んでいたのだ。現場に残された首吊り縄のミニチュアといい、目を通していたニュー・ヨークの事件に酷似していた。指揮を執る国家警察警部ロッシにより捜査の一員に抜擢されたエルコレは、早速アメリカに連絡を取る。依頼した証拠物件とともにやってきたのがライムと介護士のトム、それにライムの婚約者アメリア・サックスだった。

    シリーズ物の常として、ある程度続くと、何か新味を出す必要に迫られる。ライムとアメリアの結婚ネタや、新メンバーの投入だけでは興味をつなぎとめることが難しいと見たのか、今回は、なんと臨時チームの編成となった。国家警察ナポリ本部を捜査本部に、腕利きだが狷介な上席検事スピロや、有能な科学捜査官ベアトリーチェ、美人の遊撃隊巡査ダニエラ、と今回限りにしておくには惜しいメンバーの勢ぞろいだ。

    首から上と右腕を除き全身麻痺のライムはいうところの安楽椅子探偵。現場に向かうのはサックス刑事だ。グリッド捜索で微細証拠を集めて帰り、それを分析して一覧表にまとめる。不案内なイタリアでサックスのバディを務めるのが、三十歳のエルコレ。国家警察か国家治安警察を目指していたが諸事情で断念した経緯がある。この事件で認められ、念願を果たすという野心を抱いている。果たしてそれはなるのか。

    能力はあるがお人好しで思いつきをすぐ口に出してしまうエルコレは事あるごとにスピロの叱責を受ける。スピロは何故かライムたちを目の敵にする。ふだんならチーム・ワークを武器に事件の謎に迫るが、今回はこの難敵が立ちふさがる。かといってこのスピロ、ただの敵役ではない。ライムも認める高い捜査能力を持つ男だ。外部の者の協力を拒否するスピロの目をかいくぐり、サックスとエルコレは次々と起きる事件に立ち向かう。

    部下思いの穏健な警部ロッシの陰の協力を得、科学捜査官のベアトリーチェの力を借り、エルコレに無理を強いてライムは捜査を進める。ところが、コンポーザーを追うライムたちに別の事件が降りかかる。留学中のアメリカ人学生が強姦事件の犯人として逮捕され、その嫌疑を晴らしてほしいというナポリ領事館からの依頼である。しかも、検察側の担当検事がスピロであることから、話がややこしくなる。この窮地をどうやって乗り越えるのか。

    今回の舞台となるのが、ヨーロッパへの難民の玄関口であるイタリア南部に位置するナポリ。イタリアには有名なシチリアのコーザ・ノストラだけではなく、ナポリを拠点とするカモッラ、カラブリアのンドランゲタ、プーリア州のサクラ・コロナ・ウニタなどの犯罪組織が犇めいている。そこに今話題となっている難民問題が加わる。原題は<The Burial Hour>。本文では「生き埋めの危機」と訳されている。地滑りのように押し寄せる難民で、もともとの国民が生き埋めに会うような恐怖を味わうことを意味している。

    難民問題という政治的な話題を絡ませることで、単なる犯罪捜査に留まらず、意外な展開が待ち受けていることもあり、いつもとは一味も二味も違った風合いに仕上がっている。おなじみのどんでん返しもちゃんと用意されているので心配はいらないが、アモーレ、カンターレ、マンジャーレの国イタリアらしく、各国料理の成分や蒸留酒の製法が事件解決のカギを握るなど、思ったよりマイルドな仕上げになっている。

    ごりごりのミステリ・ファンはどうかしれないが、たまにはこういう変化球もあっていい。ライムがウィスキーではなくイタリアの蒸留酒グラッパにはまるなど、アレンジも効いている。風光明媚なヴォメロの丘や海に浮かぶ卵城、カモッラが根城にするスパッカ・ナポリなど、ナポリらしさが満喫できる。犯行現場となる地下通路の絞り込みなど見どころは多く、マッスル・カーではなく、ルノー・メガーヌを駆るサックスもまた一興だ。

    無愛想な敵役に見えたスピロの意外な正体や、エルコレの国家警察入りの成否など、人間関係の機微にも興味は尽きない。事件が終わった後、ライムとサックスの結婚についてもあらましが仄めかされており、ファンなら読むしかない。ミステリは好きだが、あまり酸鼻を極めるものは苦手、という読者にお勧めできる後口のさわやかな一篇である。

  • 音楽に関わる犯人像?ということでこころ傷む冒頭部。最後には相変わらずのどんでん返し。
    原作の題は『Burial Hour』だけど、『ブラックスクリーム』~叫びとのこと。読み進めるうちに

  • ライム、サックス、トム in ナポリ。イタリアの登場人物たちも皆魅力的。このシリーズではたくさんの人物が出てくるけれども、だいたい好感がもてるところが素晴らしいと思っている。偏愛。

  • 図書館の本 読了

    内容(「BOOK」データベースより)
    ニューヨークで起こった誘拐事件の犯人、自称“作曲家”が国外に逃亡、名探偵ライムと刑事アメリア、介護士のトムの3人はあとを追ってナポリに渡り、現地の警察と共同で捜査を開始する―ほぼ全編がイタリアで展開する最新作は、シリーズのファンが「こうでなくちゃ」と快哉をさけぶ場面が満載。名探偵ライムが証拠とロジックで快刀乱麻の名推理を導き出せば、アメリアは凶行を阻止するために車を疾走させ、死地へと飛び込む。もちろん大規模ドンデン返しも待ち受けています。

    いい犯人じゃん、と思えるコンポーザー。
    耳が良すぎるとバランス崩すこともあるかもね、って思っちゃう。
    ファティマは気の毒。そこ利用するのがテロリストね。
    ラストの結婚式はもうちょっと書いてくれても良くないか?

    The burial hour by Jeffery Deaver

  • リンカーン・ライムの13作目。前から分かってるけど、私はこのシリーズとは相性が悪い。登場人物は捜査側も犯人側も、役割振られた記号のように思えてしまう。それでも、残された証拠から推理していく過程が楽しいから読んでしまうのだろうな。今回はイタリア・ナポリが舞台。作者は読者に飽きられないようにあの手この手を考えるのだろう。でも今回の展開はあまりに無理がある気がするなあ。

  • ライムとアメリアが犯人コンポーザーを追いかけて、イタリアに出張。現地のなかなか理解の得られない警察、検察のスタッフとギクシャクしながら犯人を追いかける。イタリアは、国家警察、カラビエーリという軍の警察というか憲兵隊、農林省管轄の森林警察とかいろいろ警察のしくみが合って、これがとても馴染みにくい。読んでいくときもかなり引っかかる。

  • リンカーン・ライムシリーズ#13。

    ライムのイタリア出張である。イタリアの「ルーキー」、偏屈な検事と協力的な刑事など、ニューヨークの構図を繰り返す。いささかマンネリを感じる。

    音楽・音を偏愛するサイコパスと移民対策の結びつきもちょっと強引に感じる。

    原題は「Burial Hour」といい、本文中に説明があるが、「移民によって國民が生き埋めになる」危機を言っているそうだ。改題(邦題)によってテーマがゆがめられている。

    総じてよろしくない。

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著者プロフィール

1950年、シカゴ生まれ。ミズーリ大学でジャーナリズムを専攻。雑誌記者、弁護士を経て40歳でフルタイムの小説家となる。科学捜査の天才リンカーン・ライムのシリーズ(『ボーン・コレクター』他)や“人間嘘発見器”キャサリン・ダンスのシリーズ(『スリーピング・ドール』他)は全世界でベストセラーになっている。ノンシリーズ長編小説、短編小説など人気作品も多数刊行
『ブラック・スクリーム 下 文春文庫』より

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